NIPPON★世界一 (57)
●株式会社エフテック ●足立区青井2-14
●2009年10月設立
水性の防火・耐火・防炎剤の
開発・製造・販売
株式会社エフテック
日本にある世界トップクラスの技術・技能-。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
東日本大震災以後、都内でも地震に対する防災意識が高まりつつあるが、一方で東京は常に火災の脅威にさらされてきた場所であり、防火・防炎対策は見過ごせない問題だ。今回紹介する塗料が普及すれば、その対策が大きく前進することは間違いないだろう。
(取材/種藤 潤)
古くからある木造住宅や、歴史的建造物など、多くの木造建築が残る東京都。下町などのように密集している地帯も今だに多く、そこでもし火災が起こったら―という懸念は、予てより声高に叫ばれていたことである。
そうなると、まず耐火建物などへの建て替えが考えられるが、当然ながらコストがかさむ。次に考えられる対策が防火・防炎塗料による塗装だが、歴史的建造物などへの作業は難しく、木造住宅でも木の質感を残したいという意見もあるだろう。
外観を変えず、防火対策ができる塗料があれば―それを可能にしたのが、今回紹介する透明状の防炎薬剤「ジェリコ アルテックス エムエフ」だ。
木材を炭化させ防火・防炎効果を発揮
「紙にしみ込ませるだけでも、違いがわかると思います」
エフテックの若竹俊雄代表取締役に促され、「ジェリコアルテックス エムエフ」が染み込んだ紙と、そうでない紙に火をつけてみた。見た目はほとんど見分けがつかないが、当たり前だが、後者はぼうっと瞬く間に炎に包まれた。一方で、前者は焦げはするものの、炭化した箇所が盛り上がるだけで、火が燃え広がることはなかった。
「炭化することで、消火性能が発揮されるのです」
同ブランドでは塗料として「ジェリコ アルテックス エフピー」も販売しており、こちらは白色の塗料。これに色素を加えることで色調整が可能で、さまざまな色合いの防火塗料として使用することができるという。
今度はこちらを木に塗装し、バーナーを当てて比較したが(左上写真2枚)、左の塗らない木材は炎をあげて燃えたのに対し、右の塗装済みのものはバーナーを当てた部分が炭化するのみで、燃え広がることはなかった。
「無塗装のものは、バーナーを当て続けると穴が空いて延焼していきますが、塗装しているほうは、むしろ炭が盛り上がっていき、そこで延焼をくい止めてくれます」
防火・防炎に加え人と環境にやさしい塗料
「ジェリコ アルテックス」ブランドのような防火・防炎剤はほかにもあるが、それらと決定的に異なるのは、その安全性である。
「水性成分を主成分とし、燃焼時にも人体に有害な物質が一切発生しないことを公的実験で証明しています」
若竹氏がこの防火・防炎剤に着手しはじめた20年前は、塗料には当然のごとく有機溶剤が使用され、時を経てそれが人体に悪影響を及ぼすことが問題となっていった。
そうしたなか、現在は「ジェリコ アルテックス」ブランドのような水性剤が主流となりつつあるが、限りなく環境に問題のない成分を使用しているのは、「ジェリコ アルテックス」シリーズだけだと、若竹氏は自信を持って言い切る。
「今は環境にいい状態を維持するアフターコストも、建築を考える上で重要な要素となりつつあります。そうした点も考慮すれば、弊社製品はコスト面でもメリットが高いと自負しています」
防災都市を目指すなら耐震+防火対策が必須
こうした「ジェリコ アルテックス」ブランドの優位性は着実に評価され、「ジェリコ アルテックス エムエフ」は、東京都選定歴史的建造物「金刀比羅宮」社殿(虎ノ門)や四谷の某社員寮に使用され、「ジェリコ アルテックス エフピー」は「アクアシティお台場」や「花やしき」(浅草)のFRP造形物で活用されている。
「我々は製品を製造・販売するだけでなく、信頼できる業者とともに塗装業務請負まで対応いたします。そのなかで、客観的な防火・防炎機能を証明するために、消防庁の関係団体の評価を得ることを徹底しています」
東日本大震災をきっかけとした防災意識の機運高まる今こそ、「ジェリコ アルテックス」シリーズで都内の防火・防炎対策を強化していきたいと、若竹氏は熱く語る。
「関東大震災のときは、昼食の時間帯ということもあり、火災で甚大な被害が出ました。今の東京も、当時ほどではないにせよ木造の住宅密集地は多数あります。
防災というと耐震に目がいきがちですが、防火も合わせて対応することで、東京都は真の防災都市になりうると思います。そのために我々の商品・サービスが少しでも貢献できれば嬉しいです」