八王子市を多摩のナンバーワンとするため、日々行動しています
八王子市長
石森孝志さん
今年1月の市長選に都議会議員を辞職して出馬した際、都議会からは強い慰留もあったという。それを振り切って出馬した背景には、並々ならぬ故郷への「郷土愛」があったからだ。多摩地域の「顔」として昔から栄えてきた八王子を今後、どのように発展させていくのか、お話をうかがった。
(インタビュー/遠藤 直彦)
魅力にあふれた八王子
市民と共に施策を展開
―今年1月に市長に就任なさいましたが、都議会議員の時代と比べて仕事の内容は変わられましたか。
石森 市長に就任した時は、新年度予算編成や人事などで忙しい時期だったこともあって非常にハードでした。何事も最後は私が決断しなくてはなりませんから、責任と決断の重さを日々実感しています。
―八王子の魅力を市長からご紹介いただきたいのですが。
石森 八王子市は人口が58万人と非常に大きなまちであり、観光資源に恵まれていることが特徴です。
ミシュラン3つ星の高尾山や、日本100名城に選ばれた八王子城跡といった歴史的な観光資源がたくさんありますので、観光客を各地から呼び込むことが可能です。10月20日にはJR八王子駅北口にインフォメーションセンターを設置しましたが、観光振興には今後も力を入れていきたいですね。
大学等の教育機関は周辺地域を含め23ありますし、民間の事業所も2万社近く、そのうち製造業は1700社ほどあります。産学の人材資源も豊富です。
そして豊かな自然も魅力のひとつですね。市政世論調査では、毎回約9割の方が「八王子に住み続けたい」と答えていますが、その理由として、回答者の約6割が「緑が多く、自然に恵まれているから」と答えています。このように八王子市には多くの魅力が詰まっています。
―現在、市長の下で基本構想、基本計画が策定されています。どのような内容となるのですか。
石森 一言で言えば「八王子市の憲法」のようなものを策定します。前市長がまとめた基本構想や基本計画の年度が終わりますから、新しい基本構想や基本計画は平成25年度から10年の計画期間です。基本構想、基本計画で今後の市政の方向性を打ち出す予定です。
昨年から市民サイドで議論がはじまり、素案もまとまっているので、それを基にした議論を今後進めていこうと思っています。
―石森市長らしさを今後まとめていくことになるわけですね。
石森 私は八王子を多摩のナンバーワンにしたいと常々思っています。そのためには、本市の誇る市民力や地域力を活かした取り組みを進め、市民の皆さんとともにこの八王子をつくっていきたいと思いますので、市民の皆さんにもご理解いただきたいですね。
―どの分野での取り組みに重点をおかれるのでしょう。
石森 高齢化が進んでいる時代ですから、今後の税収の伸びにあまり期待はできません。しかし我々が市民サービスを運営するためには税収の確保が最大の課題です。
そこで市内の未利用地を活用して企業誘致を進めようと思っています。そのことによって雇用が生まれるなどの効果がありますからね。若い人が八王子に移り住みたくなる、税収の確保につながるような取り組みをしたいです。
駅前の賑わいを取り戻したい
中核市への移行も進める
―駅周辺の活性化として、そごう跡地に新商業施設が10月25日にオープンします。
石森 「セレオ八王子北館」ですね。ここは老若男女の幅広い客層を対象としているのが特徴です。200もの魅力的な店舗と、多摩地域では最大級の食品売り場が設置され、売上予想は270億円と見積もっています。これで駅前に賑わいが戻ってくると確 信しています。大いに期待したいですね。
―JR八王子駅南口の医療刑務所移転後の用地の活用では、サッカースタジアムの建設をという意見もありますが。
石森 今のところ用地利用の方策は検討中です。しかし、JR八王子駅の南口から至近距離で広大な面積を有していますから、基本的には市で買い取る方針です。買い取った後の具体的な活用についてはこれからの議論ですね。
―八王子・立川・多摩業務核都市構想に沿ったまちづくりが進められていますが、今後の計画は。
石森 業務核都市構想は、区部への一極依存型構造をバランスのとれた地域構造に改善するために指定された制度です。
今後の計画ですが、JR八王子駅周辺では、旭町・明神町地区の地区開発があります。ここに東京都の産業交流拠点を整備する計画がありますので、これを中心としたまちづくりを進めていくことになります。この地区はJR八王子駅と京王八王子駅の中間に位置しますから、両駅をつなぐことで利便性を高めたいと考えています。
また、八王子インターチェンジ付近には大手スーパーのイオンが出店計画を立てています。
―八王子市は人口が58万人で、都の事務が一部移譲される中核市となる要件を満たしています。進める上での課題は何でしょうか。
石森 中核市への移行は市長選の公約だったこともあり、4月1日に専門組織を立ち上げ議論を開始しています。
現在、都から移譲される権限をどのように活かしていくか精査しているところです。移譲される権限の活用や専門性が必要な事務での人材の育成・確保が課題ですね。
これらを解決し、平成26年度から中核市に移行したいと考えています。そのため、来年の6月の市議会、9月の都議会でそれぞれ議決をお願いし、国の指定を受けるべく動いています。
―東京都からの財源移譲はいかがでしょう。
石森 中核市に義務付けられている事務の経費については国からの普通交付税で措置されます。中核市移行に伴う権限移譲に関連して財源が課題となった場合には、都としっかりと協議していきたいと考えています。
小児医療体制は充実
市民の関心が高い「スポーツ祭東京」
―数多くの教育機関と製造業を抱える八王子の産業振興策はどのようなものがあるのでしょう。
石森 製造業の空洞化が指摘されて久しいですが、八王子もその影響が出ています。八王子だけでなく周辺を巻き込んだ支援策をしっかり構築しなくてはなりません。教育機関も多いので産学連携にも力を入れたいですね。
八王子には中小企業も多いのですが、大学生との雇用のミスマッチが社会問題となっていることから、10月に学生向け就職ウェブサイトを立ち上げました。企業の様子がわかる情報や、企業経営者のメッセージが動画で流れる等の工夫を凝らしています。
―都立病院の再編整備の影響で都立八王子小児病院が移転統合されました。移転後の影響と現在の状況は。
石森 都立八王子小児病院が府中に移転しましたが、周産期医療にしっかりと取り組むということはいいことだと思っています。
都立八王子小児病院の跡地に、市の「小児・障害メディカルセンター」が昨年4月にオープンしています。23年度で2万2600人もの患者さんが来院し、おかげさまで評判もいいようです。
また移転統合に関しては東京都と協議した結果、八王子に2つある中核病院、東海大学病院と東京医大医療センターの小児科の充実を図ることも可能となりました。これによって今まで以上に小児科医療は充実することになったと思います。さらに南多摩病院では新たに小児科が新設されました。
後はNICU(新生児集中治療室)の整備ですね。以前は八王子小児病院に整備されていましたが、現在、両大学病院に設置を要請しているところです。医師などの人材確保の難しさから設置の目途はまだ立っていませんが、NICUが整備されれば、十分な医療体制が構築されることになります。
―来年開催される「スポーツ祭東京2013」では、八王子で6競技が開催されます。スポーツ振興についてのお考えは。また2020年の五輪招致についてはいかがですか。
石森 前回、2016年の五輪招致では、当時都議だったので海外まで行って招致の協力要請を行ったり、国内でも東北地方に日帰りでお願いに行きました。2016年は残念ながら招致は実現しませんでしたが、今回、2020年の招致は是非とも勝ち取りたいですし、市内での招致気運も盛り上げたいです。
八王子のスポーツ活動は、今年の東京都市町村総合体育大会で総合7連覇を達成したことからもわかる通り、たいへん盛んです。
「スポーツ祭東京2013」は、多摩地域中心の開催ということで市民の皆さんの関心も高いですし、八王子の魅力を全国に発信する絶好の機会です。
新体育館の建設をはじめ各競技施設の改修も進めており、市内のスポーツ気運を盛り上げたいです。特に子供達にとって大きな夢を与える、いいきっかけになると思います。
―最後に市長が今、最も強く訴えたいことなどがあればお願いします。
石森 八王子に賑わいを取り戻したいと強く思っています。八王子は規模も大きく歴史もあるところなので、多摩地域において政治・経済・文化の中心地でした。しかし立川や町田などの駅周辺を見ると、今は八王子のほうが遅れているのではという感想を持つ市民もいらっしゃるので、名実ともに多摩のナンバーワンを目指したい。
これは市長選で訴えてきたことですし、市職員にも常にそのことを意識するよう指示しています。中核市への移行もそのための重要なステップですね。
<プロフィール>
いしもり たかゆき
昭和32年8月8日、東京都生まれ。55歳。明星大学人文学部経済学科卒業。東京都経済農業協同組合連合会(現全国農業協同組合連合会)勤務を経て八王子市議を3期務める。平成17年7月の都議会議員選挙に出馬し初当選、2期目の途中の今年1月、八王子市長選挙に出馬し初当選、現在に至る。首都圏中央連絡道路建設促進協議会会長、八高線八王子・高麗川間複線化促進協議会会長、東京たま広域資源循環組合理事、東京河川改修促進連盟副会長などを兼務。趣味はゴルフだが、最近は多忙によりあまりコースに出る機会もないとのこと。