局長に聞く 47
広範な分野を担う独自の局
生活文化局長 小林 清 氏
東京都の各局が行っている事業について、局長自らが紹介する「局長に聞く」。47回目の今回は生活文化局長の小林清氏。消費者行政、文化振興、東京の公教育を担う私学への支援、NPOなどとの協働など多岐にわたる分野が守備範囲だ。今回は、特に悪質事業者から消費者である都民を守るための対策の充実、文化施設の改修などについてお話を伺った。
(聞き手/平田 邦彦)
悪質事業者対策を強化
―生活文化局という名前はユニークですね。
生活文化局の基となった局は、「物価局」や「広報室」でした。時代の要請に従って組織を新設したり、他局の組織を統合するなどして、いろいろな顔を持つことになったのかなと思います。消費者行政、広報広聴、文化振興、私学振興、都民との協働など、さまざまな分野を担っており、内容が多岐にわたっています。これは他の局にはない特徴です。
「生活文化」というと言葉のイメージとして浮ついたものを感じるかもしれませんが、それぞれの業務は非常にリアリティに富んでおり、現場や業界のことを知ることが職員には必要とされます。
―他局のように法律に縛られることは多くはないと思いますが、その分、自由にやりたいことにトライできるのではないでしょうか。
それはありますね。反面、「だから何かをしなくてもいい」という考えに陥りやすいですから、局の職員は自ら問題意識を持って取り組むことが必須です。
文化振興では、今秋、「アーツカウンシル」という組織を歴史文化財団に立ち上げます。これは、独立性と専門性を有し、民間の優れた芸術文化活動を支援する機関で、企画力の高い公演や展示に助成するほか、美術館や劇場といった現場に蓄積されたノウハウをもつ財団の強みも活かして、プロデューサーや舞台技術者などの人材を育てることもしていきます。これは文化庁もやっていない制度です。
―消費者行政の取り組みはいかがですか。
期間が5年間の消費生活基本計画があるのですが、ちょうど今、改定作業に取り組んでいます。
現行の計画ではさまざまな取り組みを行いましたが、特に悪質業者の取り締まりを重点的に行いました。高齢者や若者が狙われやすいのですが、高齢者の場合は相手の押しに弱いという点がありますね。相手も言葉巧みに攻めてきます。
若者の場合は、今の社会はインターネットが普及しているのに情報不足で騙されているのが特徴です。美容関係の商品を法外な値段で売りつけられるというケースも多いですね。
我々も警視庁と連携して、「特別機動調査班」を設置するなど体制を強化しています。また、消費生活総合センターの相談員を増員するとともに処遇も改善して、相談体制の強化も図っています。
さらに、消費者が悪質事業者からの迷惑行為を心配することなく、安心して行政処分に協力することができるように、万が一、迷惑行為があった場合、都が訴訟まで含めて一貫して、処分に協力した消費者を支援する体制も整備しています。
そして、この次のステップとして、悪質事業者を都で処分しても他県での活動を制限できないので、都と周辺県で共同して処分することを手がけています。国にも法改正を迫りたいですね。
文化施設の改修を推進
―消費者教育の重要性も高まっています。
若者の場合、教育することでかなり改善されます。しかし、学校での消費者教育の充実は学習指導要領に入ったばかりでこれからという状態ですから、中学、高校、大学のそれぞれのレベルにおいてどのように消費者教育を充実させるかが今後のポイントですね。もちろん、社会人になっても消費者教育は重要です。
―東京都美術館や東京芸術劇場が相次いでリニューアルされています。文化施設の改修が進んでいますね。
東京都の文化施設は総じて大規模改修の時期を迎えているので、計画的にやっていますが、その第一弾が上野の東京都美術館です。
東京都美術館は歴史も古く、公立の美術館として先駆的な役割を果たしてきました。
しかし、老朽化が著しい状態にあったので、石原知事が自ら現場を見たうえで改修を指示しました。その結果、天井も高くなりましたし、バリアフリーも推進されました。価値のある建築は残しつつも、古い配管や設備は入れ替えたうえで、今年4月にリニューアルオープンしました。
これからは、公募展の開催はもちろんのこと、国内外の名品に出合うことのできる大型の展覧会を企画・開催するとともに、大学などと連携した体験型の多彩なプログラムの展開により、広く都民や芸術家が集う施設となります。
池袋の東京芸術劇場も改修しましたが、まずは安全性の観点から、長いエスカレーターを取り外し、二段式にしました。コンサートホールはステージを広げるとともに音響を改善、演劇を上演するプレイハウスも音響を改善し、内装を刷新しました。
改修した芸術劇場と、周辺の街づくりとの連携を期待する声もあります。改修を契機に街並みが変われば、池袋の雰囲気も変わってくるのではないでしょうか。
白金の庭園美術館は現在、改修の真っ最中です。かつては朝香宮様の邸宅でしたが、戦後の一時期、吉田茂総理が執務室を置いていたこともあります。
今後も、両国の江戸東京博物館や恵比寿の写真美術館など、ほかの施設でも改修を実施していきます。