局長に聞く 45
公会計制度改革を推進
会計管理局長 松田 芳和氏
東京都の各局が行っている事業について、局長自らが紹介する「局長に聞く」。45回目の今回は会計管理局長の松田芳和氏。都が全国に先駆け導入した新たな公会計制度の普及啓発を他導入自治体と連携して進める一方、適正な会計事務の確保という、地味だが重要な業務を担っている。
(聞き手/平田 邦彦)
町田市などでも導入開始
―会計管理局の主な事業内容をご紹介いただきたいのですが。
会計管理局の事業は都民からは見えにくいと思いますが、収入支出の事務や物品管理について知事から独立した権限を付与されています。
これとは別に、知事を補助する事務も担っており、会計に関する検査や指導、公金の管理・運用といったことがこれに当たります。
―公会計制度改革については石原知事も以前、「最大の成果」と述べていました。
公会計制度改革は石原知事を先頭にして東京都が取り組んできたものです。
従来の会計制度について石原知事はよく、「昔ながらの大福帳と同じだ」と述べていますが、従来の会計制度は収入と支出のつじつまを合わせているにすぎず、財政状況の実態を表しているものではありません。
民間企業で財政状況を見る場合、どれだけの資産があるかということと、どれだけの収入と支出があるのかという2つから判断しますが、従来の会計制度では資産の部分を含んでいません。
コスト面についても、現実に出入りする資金の流れだけを見ていて、退職金など今後必要な支出についての用意がなされていないのです。
そこで都は、民間企業で採用されている複式簿記を平成18年度から取り入れていますが、ほぼ定着した感がありますね。しかし会計制度は常に変動していますので、都も会計基準について見直しを毎年行っています。
―都が公会計制度を導入したことがきっかけとなって、各自治体でも導入の動きが広まっています。
国は現在、財務諸表作成について2つのモデルを提示し、どちらかを選択するようにしていますので、ほとんどの地方公共団体は作成していると思います。
しかし、多くの団体が選択している国のモデルでは決算の統計を加工する内容のため、財務諸表の内容が不正確なものになってしまうなどの弱点があります。
一方、東京都の方式を導入する地方公共団体が増えています。現時点では、東京都の他に大阪府、愛知県、新潟県、大阪市、町田市の計6団体が、導入または導入を準備している状況です。
―以前、町田市の石阪市長にお話を伺ったことがあります。町田市は今年度から公会計制度を導入していますが、周囲の理解を得るのが大変だったと。
町田市は市町村の中ではじめて導入した自治体で、その注目度は非常に高いと思っています。「東京都という大きな自治体だから導入できたんだろう、規模の小さな自治体には導入できないだろう」という見方もあるのですが、町田市が導入した公会計制度が日々の仕訳の中で機能していることが示されれば、他の地方公共団体の受け止め方も変ってくると思います。
理屈上では、日々仕訳を行う公会計制度が非常に優れているということには誰も異論がないのです。しかし実際のコストはどれくらいかかるのか、効率的な導入方法は何か、導入して成果はどれくらいあるのかなどの危惧があります。
今後はいかにわかりやすく都民に説明するか、いかに具体的に活用するかについて、導入した各地方公共団体が切磋琢磨して、よい事例があればさらにそれを取り入れるというスタイルで進めるべきですね。
会計事務の方向性を見直す時期
―公会計制度以外の主な取り組みは。
月並ですが、やはり適正な会計事務の確保が何よりも重要だと考えており、常に見直しを図ることでその適正化に努めています。そして人材の育成も重要な取り組みのひとつですね。検査制度ですが、会計管理局では2年に一回、東京都のすべての本庁各部・事業所を対象にして検査を行う定期検査、各局が行う自己検査があります。
自己検査は3つの種類があったのですが、内容が重複することなどからこれを2つに見直しました。
ある事業所の担当者が別の事業所に行って検査することで、その事業所ではどのような取り組みが行われているのかを知ることができます。そのような取り組みの効果も毎年見極めながら、検査の体制を見直していきます。
定期検査では、問題があると思われる事業所等があった場合、検査後しばらくしてからもう一回検査する、つまり再検査を行います。
人材育成では、さまざまな研修やOJTが中心となりますが、各局の実情に応じた研修を、各局と相談しながらメニューを作っています。
民間との交流は行っていませんが、会計制度は世の中の動きを横目で睨みながらやっていく必要がありますから、民間の動きもこれから調査していきたいと考えています。
―出納事務所を全廃して10年経過しましたが、これからの抱負は。
10年ひと区切りと言われますが、これまでの局の取り組みを総括して今後の会計事務の方向性を見直す時期に来ていると感じます。民間の動きにも注意を払いつつ、会計事務の現状を分析したいと思います。公会計制度の導入もさらに進むことが予想されますから、東京都はこれまで以上に重要な役割を果たしていかなくてはならないと思います。