NIPPON★世界一 (50)
●株式会社NTTファシリティーズ
●港区芝浦3―4―1 グランパークタワー
●1992年営業開始
●従業員数 5200名 (2012年3月31日現在
NTTファシリティーズグループ連結)
ビルのエネルギー管理支援サービス
株式会社NTTファシリティーズ
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
建築物、電力設備を中心とした環境、エネルギー、建築のコンサルティング等を手がけてきたNTTファシリティーズが、新たな一手を打ち出し始めている。その展開は昨年に続く電力不足への対応はもちろん、21世紀の新たなスマートコミュニティーの形まで視野に入れている。
(取材/種藤 潤)
昨年の東日本大震災を引き金に起こった原発事故。その余波は電力不足となり、計画停電という形で関東一円の生活を圧迫。さらに今年は関西の電力不足も問題となっており、今年の夏も仕事、家庭問わずどう電力消費を実現していくかが問題となっている。
しかしNTTグループ内のビルでは、ICTとエネルギーと建築にかかわる技術の融合により大幅な省電力に取り組み、昨夏の電力不足に対しても大きな結果を残した。
電気通信分野で培った技術で電力の『見える化』を実現
NTTファシリティーズは電気通信分野で培った技術を元に、NTTグループを中心とした電気通信ビルに対し、空調・電源設備の開発やエネルギー使用効率向上などのエネルギーに関するマネジメントを行ってきた。
それと並行して、オフィスビルを中心とした省エネ事業を展開し、2008年4月より電力の『見える化』サービスに着手した。
「電力の『見える化』で消費電力を把握することは、エネルギー制御の大前提です。このおかげでNTTグループでは、昨夏の電力使用制限令に対しても『見える化』を元に節電を実施し、電力使用量が施策実施前のピーク値に対しオフィスビルで33%の削減に成功、法令対応達成に協力できました」
実際に昨年の夏を本社ビルで過ごした横山健児さんは、自信を持って言い切る。
この『見える化』を実現するのは、『Remoni®』と呼ばれるエネルギーモニタリングASPサービスだ。消費電力がわかるだけでなく、時間、日、ビル、会社ごとに電力を細かく把握することができ、さらに基準値や目標値も設定可能で、使用率が設定値を超えるとアラームメールを自動発信し、半強制的に節電を促進させることができるという。
「『Remoni®』ではビル全体、部署単位、個人とあらゆる場面で『見える化』することが可能です。弊社でもビル全体で常に『見える化』をしており、我々の節電意識向上にもつながっています」
『見える化』をさらに進化させた『EnneVision®』
2011年7月からは特定規模電気事業者のエネットと共同で、マンション向けに『Enne Vision®』というスマートサービスを開始した。
『Enne Vision®』は大きく3つの柱で行われる。まず、これまでも手がけてきた電力の『見える化サービス』。ポータルサイトによりリアルタイムの電力消費や換算CO2排出量を閲覧できるようにしている。
次に、『新たな時間帯別の電気料金サービス』の導入。電力使用のピークとなる昼間の料金を上げ、逆に朝晩を下げ、電力使用分散を促すというもの。
最後は、『デマンドレスポンスサービス』。これは、供給側からの需要状況に応じ、電力消費抑制を依頼するメールを消費者に通知。これに応じた消費者に対し、電気料金の支払いに利用可能なポイントを提供するのである。
「『見える化』だけでは省エネには限界がありますから、『EnneVision®』ではインセンティブを提供する仕組みを組み込み、省エネに取り組むことでメリットが生まれる構造を作り上げました」
オフィスビルにも拡大
目指すはスマートな街づくり
さらに『スマート化』はオフィスビルにも拡大。これまでのビルエネルギーマネジメントシステム「BEMS」をクラウド化した『クラウド型BEMS(FIT BEMS/節電Remoni®)』を導入、オフィスビルのスマート化を進める。
並行して、天井照明を1灯ごとにオンオフできる制御システムや、電力消費の目標値に応じたオフィス機器の自動制御など、ICTを駆使した新たな制御の仕組みも構築。あわせて提案しているという。
「電力の『見える化』を先に進め『見せる化』も行うことで、エネルギー供給側と電力需要を事前に共有、供給側を巻き込んだ無駄のないエネルギー運用を可能にします。さらにBEMSのクラウド化で複数のビルの消費電力も同時に管理・運用でき、地域単位のエネルギー制御も可能になります。この形が広がれば、災害、エネルギー問題、温暖化問題に強いスマートな街づくりが実現できると考えます」
『クラウド型BEMS』普及には、追い風が吹く。経産省は2012年、2013年と「BEMS」導入に対し補助金を出すことを決定。そのアグリゲータ(認定事業者)に同社は選定された。
さらに原子力損害賠償支援機構(原賠機構)と東京電力は、ピーク時に電力抑制依頼に対応した需要家に協力金を支払うことを打ち出し、同社はそのアグリゲータにも決定。前者は導入そのもので発生、後者は『クラウド型BEMS』導入に伴う節電アクションに発生する補助金だ。
「この補助金はもちろん、『クラウド化したことで大幅にコスト削減できましたので、ビルオーナー様だけでなくビルを運用する企業、都や市区町村の皆様にも、ぜひ『クラウド型BEMS』を検討いただきたいです。何より社会のスマート化という大きなメリットを考えれば、決してコストは高くないと思います」