局長に聞く 40
各局との連絡調整役を担う
知事本局長 秋山 俊行氏
東京都の各局の取り組みを局長自らが紹介する「局長に聞く」。40回目の今回は知事本局長の秋山俊行氏。先ごろまとまった「2020年の東京」計画や、昨年国から指定されたアジアヘッドクォーター特区など、東京都の重要な施策に関して各局との連絡調整を図っている心臓部だ。
(聞き手/平田 邦彦)
長期計画の実現が五輪招致に
―「2020年の東京」計画は、東日本大震災を踏まえた新たな都の長期計画で、防災から福祉、教育まで内容は多岐にわたっています。それぞれの達成状況をチェックする必要があると思うのですが。
「2020年の東京」計画で描いた将来像の実現に向けては、実効性のある取り組みを着実に推進するため、3ヵ年の事業展開の道筋を明らかにした「実行プログラム」を策定します。
「実行プログラム」ですが、各施策の進捗状況や課題を把握するとともに、社会情勢の変化に迅速かつ的確に対応するため、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルの一環として、財務局と共同して、進捗状況調査を実施しています。
この計画で描いた将来像の実現に向けた歩みを着実に進めるため、今後も、これらの検証作業などを踏まえていきます。実行プログラムを毎年度改定して的確な対策を講じることにしています。
―この長期計画と五輪招致との関係はいかがですか? 長期計画に示された12のプロジェクトの達成状況は五輪招致に深く関わるものなのでしょうか。
東日本大震災後の日本の再生を牽引して東京の新たな発展を実現するためには、都民・国民に対して再生・発展の道筋や、将来への展望を明確に示すことが重要です。
「2020年の東京」計画では、大震災で明らかになった防災力やエネルギー政策の向上などの課題にも的確に対応するために、オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を目指す2020年の姿と、それに向けた政策展開を明らかにしています。
特に、12のプロジェクトは、計画の実現に向け、今後10年間で戦略的に取り組むべき重要課題を抽出し、それぞれの課題を解決しながら東京をさらなる発展へ導くという考えに基づいて選定しています。
この計画が描く2020年の東京は、まさにオリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市にふさわしい都市です。計画の着実かつ迅速な具体化は、招致にとって大きな力になると考えています。
特区構想で国際競争力を強化
―「2020年の東京」計画にも掲げられていますが、東京の国際競争力の向上は重要だと思います。昨年12月22日に国からの指定が得られたアジアヘッドクォーター特区の狙いは。
アジアヘッドクォーター特区の狙いは、欧米の多国籍企業やアジアの成長企業が、アジア地域の業務管理や研究開発を総括する拠点を東京に誘致することです。外国企業による直接投資は、優れた経営資源を呼び込み、高い生産性をもたらすなど、東京の経済を活性化させることにつながります。
総合特区の実施により、直接効果の約5兆5000億円、間接効果の約9兆1000億円を合わせた約14兆6000億円の経済効果を見込んでいます。また、雇用誘発効果も約93万人と見込んでいます。税収面では、都が独自に課税できる法人事業税(2・42%)を全額免除しますから、約81億円の減収になります。しかし、外国企業誘致の効果で約1000億円の増収が見込まれます。
そうしたことから、特区の対象地域において、外国企業の誘致のための進出企業の掘り起こし、誘致企業へのビジネス支援、都市インフラの整備、外国人の生活支援を重点的に実施します。また都内中小企業とのマッチングなども行い、東京の産業の活性化と国際競争力の強化につなげていきます。
―外国企業と都内中小企業が刺激しあうことで産業振興や雇用創出にも期待がかかります。
外国とのビジネス交流を通じて、東京が誇る高い技術を有する中小企業が新たな技術・新たなサービスを開発したり、販路を拡大することなどが期待できます。具体的には、東京以外に拠点を置く企業は平均で国内に3・3箇所の事業所を持っているのに対して、東京に拠点を置く企業は平均で8・6箇所の事業所があるのです。
都内中小企業は東京に進出した外国企業との業務が広がるとともに、外国企業の経営ノウハウを吸収することにもつながります。外国企業の海外販売網を活用した海外展開の可能性の拡大などの効果も期待できますね。
―特区内にカジノを設置することはどうなのでしょうか。
都はカジノについて、国に対して実現に向けた法整備を訴えてきた経緯があります。今回の総合特区制度構築にあたり、国のアイデア募集に対してカジノの設置を提案しています。現在、法整備がなされていない状況にありますから、都としては国の動向を注視していきたいと考えています。