●株式会社クリーンテックジャパン ●兵庫県尼崎市(本社) ●三鷹市上連雀(東京営業所)●2008年設立 ●従業員数6名
TOKYO★世界一 (16)
ASAN COAT アサンコート
株式会社クリーンテックジャパン
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。「三鷹不動尊」とも呼ばれる井口院がある三鷹市上連雀のクリーンテックジャパンは、昨年の3月に「環境にやさしい」特殊編成塗料の開発に成功。屋根や外壁に塗るだけで太陽光の熱を反射・遮蔽できるといった優れた特徴の多くを、開発時の苦労などと合わせてご紹介したい。
(取材/袴田宜伸)
小型風力発電や発泡スチロールの溶剤など、これまでに地球温暖化防止や環境保全に向けた製品を研究・開発してきたクリーンテックジャパンは、今から約5年前、従来の製品よりも丈夫で長持ちする塗料の開発に勤しんでいた。
試作しては屋外のスチール製の階段に塗り、効果のほどを試す。日々それを繰り返していたが、ある時、日焼け止めクリームにヒントを得て驚くべき塗料になることを発見した。取締役技術部長の勅使河原勉氏は、こう振り返る。
「試作したある塗料を塗ったところ、夏場でありながら階段が冷たかったのです。その塗料には、太陽光の熱を反射して熱を蓄えない性質があることがわかりました」
その塗料を塗れば、家屋やビルの温度を下げることができ、電気の使用量を減らせて、CO2も削減できる。つまり偶然に発見されたその塗料は、地球温暖化の防止に大きく寄与する代物だったのだ。
夏場に繰り返した何百回もの実験
それ以降、放熱などの効果をより高めるために試行錯誤を重ねた。
塗料にフィラー(添加剤)を加えるほど、太陽光の熱を反射・遮蔽できるが、量が多すぎると粉っぽくなるために塗料としては使えない。さまざまある中から適切なフィラーを探し出し、最大限の効果をもたらすフィラーの適量を見出すために、実験を何百回も繰り返した。
「実験は夏場にしかできませんから、汚れ防止効果のある酸化チタンも加えながら、7~8月になると屋根や鉄板に塗って一つひとつデータを取っていきました」
こうしておよそ1年前に、環境にやさしい特殊編成塗料「アサンコート」が完成した。
冷房効率が上がりCO2を大幅に削減
アサンコートの一番の特徴は、垂直放射率(蓄熱された熱の放出率)の驚異的な高さ。
従来の反射塗料や断熱塗料は、40%程度とも言われ、光や熱を反射しても塗料自体に熱がこもる。そのため室内の温度が下がりにくいが、対してアサンコートの垂直放射率は、およそ93%もあるため、熱を反射することはもちろん、同時に熱の放出もする。
つまり表面温度を下げると同時に、蓄熱も防げるのだ。勅使河原氏は続ける。
「鉄板は、夏場では70度にも達しますが、アサンコートを塗ると背面の温度を約47度までに抑えられます。また、蓄熱が非常に少ないために屋根や壁からの輻射熱も低いですから、夏場は冷房効率が上がり、経費とCO2の両方を大幅に削減できます」
また、有機物は紫外線によって劣化するが、アサンコートは熱だけでなく紫外線も反射する。そのため塗料が痛まず、耐候性が10年以上もある。これも大きな特徴だ。
この素晴らしい地球を未来に残したい
アサンコートの用途は工場や倉庫、住宅をはじめ、歩道、保冷車、冷凍庫、低温倉庫、ヘルメットなど実にさまざま。導入先からは「今までとエアコンの効きが違う」といった驚きの声が聞かれ、その評判は国内にとどまらず、カタールやマレーシア、ベトナム、中国、台湾などからも引き合いが来ている。
クリーンテックジャパンでは、アサンコートに続いて昨年11月に、窓ガラスに張る複合遮蔽フィルム「アサンフィルム」を発売。外壁と屋根に加えて窓ガラスも遮蔽することで、断熱率のさらなる向上を実現させた。
「この素晴らしい地球を未来に残すために、今後も環境保全やCO2を削減できる製品を低価格で開発していきます」
今後のビジョンをそう口にした勅使河原氏。この先も画期的な製品を開発し、驚かせてくれることだろう。今からその時を楽しみにしたい。