HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.48 江東区長 山﨑 孝明さん
インタビュー
2011年12月20日号

 

江東区長 山﨑  孝明さん

区民に安心感と夢を与える。
それが行政の仕事です。

江東区長

山﨑 孝明さん

 生まれも育ちも江東区。江東区議を2期、都議を5期務め、現在は江東区長の2期目に突入した。「公約で『待機児童ゼロを目指す』と言ったのは、『ゼロにする』と言ったら嘘になっちゃうからさ」。スポーツマンらしく、正直にまっすぐに区政に取り組む姿勢が印象的な山﨑孝明江東区長。べらんめぇ調でざっくばらんに区政に対する思いを語っていただいた。

(インタビュー/津久井美智江)

豊洲新市場の実現は、にぎわい創出、地下鉄8号線と一体で。

―築地市場の豊洲への移転問題はずっと懸案でしたが、ようやく区側との意見調整がつきました。一区切りついたところで、これまでの経緯と今後の新市場建設に向けての期待をお聞かせください。

山﨑 市場については自民党の都議会議員の頃から携わっていましたが、豊洲への移転については、私は推進も反対もしませんでした。ただ、市場が豊洲に移る場合には、江東区の了承を得ることが絶対条件であるということは、中央卸売市場長に何度か念押しをしています。
 たまたま私が江東区の区長になりましたので、東京都がこの計画を進めるには、区との協議を経なければなりませんよと、大きく3つの課題を掲げました。一つは土壌汚染の問題、二つ目はにぎわいの創出、三つ目は地下鉄8号線(有楽町線)の延伸を含む交通問題です。
 7月に佐藤副知事が江東区を訪れた時に、課題の実現に向けて、区と一体となって、全力を挙げて取り組む決意を示してくれましたので、市場の受け入れを了承することにしました。

―にぎわい創出として「ぜひ場外市場の機能を」と、ずいぶんおっしゃっていましたね。それはうまくいきそうですか。

山﨑 いくでしょう。ただ、どういう作り方をするかはこれからです。築地の場外市場を連れてくるという案もあるようですが、場外の人にも移転に反対の人はいますからね。
 もっとも、市場があれば、世界中の市場がそうですが、必ず場外が付属してきます。まずはスペースをきちんと確保することでしょうね。

―地下鉄もどうやらうまくいきそうですね。

山﨑 いや、そんな簡単なものじゃないですよ、地下鉄は。

―どういう状況ですか。

山﨑 平成17年にできた都市鉄道等利便増進法は、国と地方公共団体の資金確保の努力義務を定めています。その上で資金の負担は鉄道事業者も含めた先の3社で3分の1ずつとしているんです。
 また、地方公共団体は鉄道事業者等に対して速達性向上事業の実施を要請できる、ともしていますので、そういう意味では、区はやっと東京都を取り込めたかなという感じです。
 ただ、メトロと国交省と都と区で検討会をやっているところですが、メトロはやるとしても運営のみで、建設には携わらないとしているんですね。専門家も入れて調査したところ、採算性はかなりいいという結果が出ています。東陽町駅で東西線と8号線を交差させれば東西線の混雑緩和にもつながるので、ぜひやりましょうと言っているんですが、鉄道事業者であるメトロは、新線を作らないという方針を打ち出したので、今のところは難しそうですね。

 

立体地図で住んでいる土地を知る。それがいざという時に自分の命を守る。

「立体地図を実際に触って、自分の住んでいるところを知ってほしい」と話す山﨑区長

「立体地図を実際に触って、自分の住んでいるところを知ってほしい」と話す山﨑区長

―江東区ではこの10年で人口が7万5000人以上、0~6歳児が8000人以上も増え、待機児童の増加が問題になっていますね。

山﨑 公約で「待機児童ゼロを目指します」と言ったんですが、いやぁ、大変な仕事です。
 「人口は力なり」です。ですから、人口が増えることは歓迎していますが、それによって待機児童が増えるとか、区民施設が足りないとか、さまざまな課題も生まれてきます。

―やはり許認可の問題ですか。

山﨑 今の制度は、大都市行政と地方行政の差ということを考えていませんからね。この地価の高い東京が、地価の安い地方都市と同じ基準を求められたんじゃ、かなうわけない。だけど、区長就任からこの年度末までの5年間で56の保育所を作り、3274名の定員増を図りました。56カ所も作ったところは全国にもないと思いますが、それでも足りないです。
 保育所の次の小中学校も、この4月に有明に小学校と中学校が開校しましたが、豊洲にもうひとつ小学校を作る計画を立てています。

―「グランチャ東雲」という認定こども園と児童高齢者総合施設が一緒になった施設を23区で初めて作られましたよね。

山﨑 夢の島に、お風呂があってカラオケができる「憩いの家」というお年寄りのための施設があったんです。そこがガタガタになってしまったんですが、そこでは建て替えることができないので、東雲に作ることにしました。1階に認定こども園を入れて、上の階に児童と高齢者の総合施設を入れて。

―ガタガタになったというのは、施設ですか、それともシステムですか。

山﨑 システムの問題もあったでしょうね。一部の人たちの拠点のような形になってしまって、使う人が限られてしまっていた。今度はそうならないように、運営は民間に委託しました。
 こども園も同じ業者に委託したのですが、新しい感覚でやってもらっています。子供連れの若いお母さんたちにも喜ばれているようで、うれしいですね。

―民間に委託することで行政のスリム化も図れますものね。

山﨑 区の職員が働いていたら人件費がかかってしょうがない。なるべく公設民営、つまり施設やシステムは区で作って、運営は民間に任せるようにしています。

―東日本大震災では津波が大きな被害をもたらしました。防災対策について新たに取り組まれたことはございますか。

津波等の水害時安心協定の締結式

津波等の水害時安心協定の締結式

山﨑 今回の大震災における津波では、高台に逃げろということを言われましたが、江東区には高台がありません。だから、万が一の時には高層ビルを避難場所にしてもらえるよう、7月にIHIとリクシル、竹中工務店、日立システムエンジニアリングの4社と水害時安心協定を結びました。これからは、高層マンションや高層団地とも協定を結んでいく予定です。
 地震や災害が起こったら、まず学校に逃げる。学校が遠い人は、近くの企業やマンション、団地に逃げる。その数を増やしていくことが、住民に安心感を与えることだと考えています。

―近くに逃げ場があると思うと、安心できます。

山﨑 それから、江東区はゼロメートル地帯で、川と海に囲まれている地域であるということを知ってほしいと思い、実際に触って、感じて、体験できる立体地図を作って配布しました。今回の震災の例をみても、自分の住んでいる土地を知ることが命を守る基本だと思いますからね。

 

「カヌー部」や「女子サッカー部」を創設。子供たちのチャレンジ精神を応援したい。

―区長は、野球やゴルフなど玄人はだしだそうですが、スポーツにはずいぶん力を入れていらっしゃいますね。

山﨑 私は子供たちのチャレンジ精神を応援したいんですよ。この夏、公募で集まった中学生を中心とする「チーム江東」が「ソーラーカーレース鈴鹿2011」に参加したんですが、初出場にしてクラス別5位、総合10位という成績を収めました。夢の実現に向かって努力を重ねた、その素晴らしい結果を喜ぶ姿を見て、私は感激で涙があふれました。
 ソーラーカーレースもそうですが、スポーツの世界は、人間が生きていく上で大切なことをたくさん学ぶことができると信じているんです。

区内の高齢者を訪問する山﨑区長

区内の高齢者を訪問する山﨑区長

―「カヌー部」や「女子サッカー部」も作られましたよね。

山﨑 中学2年から部活でカヌーを始めた、高校1年生の女の子がいるんです。その子は学校にもあまり行かず親も困っていたんだけど、カヌーをやり出したら、なんと朝4時に起きて自分でご飯作って、学校に行くようになった。夢を持ったんですね。高校でも大学でもカヌーをやりたいと、成績も上がって見事に高校に入って、今は高校に行きながら大学のカヌー部で練習して、地元にくると子供たちを指導してくれるんですよ。
 私がカヌー部を作って一番うれしかったのは、そうやって一人でも立ち直ってくれた子がいることなんですよ。

―夢を持つことは大事です。ところで、今年7月末に堅川河川敷公園にカヌー・カヤック場がオープンしましたね。

山﨑 はい。でも、それだけじゃダメなので、来年は子供たちを集めてカヌー大会をやります。そうすれば利用者も増えるだろうし、ほかにも面白いアイデアがいろいろ出てくると思います。

―仕掛けを作るのは行政の仕事ですからね。行政が興味を持ってレールを敷いてくれないと物事は走らないです。

山﨑 それには、やっぱり民間の皆さんと一緒になってやっていかないと、運営は難しいです。行政は人が替わりますからね。やっと課長が育ってきたと思ったら、また違う人が1からやらなきゃならない。

―知識とか経験の伝承がもっとうまくいくといいと思います。

山﨑 それは行政の宿命で、一人がずっと同じ仕事ばっかりやっているようじゃしょうがないし、ある程度オールマイティさも必要です。もっとも専門職も必要は必要ですがね。

―最後に、都議時代には「都議会東京オリンピック招致議員連盟」の会長を務めていらっしゃいましたが、今度のオリンピック招致にあたってはどのような形で関わっていかれるのですか。

山﨑 もちろん前よりは希望は持てるので、応援していますよ。ただ、海外に行ってプレゼンテーションをするとか、外国と交渉してIOCの票を獲得するということはできないのでね。
 我われができるのは、都民国民の世論を高めることしかない。江東区だけじゃなく、東京、ひいては日本の世論をどうやって高めていくかに注力したいと思っています。

 

 

江東区長 山﨑 孝明さん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
山﨑 孝明(やまざき たかあき)さん
 昭和18年、東京都江東区生まれ。早稲田大学第一商学部卒業。都立両国高校野球部監督。日本そば店「やま孝」を経営。出前、調理をする。都議会議員選挙に25歳、29歳で出馬、落選。石井桂衆議院議員秘書を経て57年、江東区議会議員トップ当選。平成2年、東京都議会議員当選。都議会自民党総務会長、政調会長、幹事長を歴任。都議会財務主税委員会委員長、議会運営委員会委員長、百条委員会委員長、都議会東京オリンピック招致議員連盟会長を歴任。19年4月、江東区長就任。

 

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