社会に貢献するために 第3回
ホテルだからこそできる エコロジー&バリアフリー
株式会社京王プラザホテル
エコロジー&バリアフリーと二本柱の社会貢献活動を展開し続ける京王プラザホテル。今でこそ他のホテルやサービス業も取り組み始めているが、その幅広く、かつ細やかな展開は追随を許さない。「バーズアイ」という有志社員による横断型組織があることも、同ホテルならではの特徴だ。
(取材/種藤 潤)
ハード・ソフト両方からバリアフリーを進める
エコロジー。バリアフリー。近年はこの言葉が浸透し、多くの企業がその名を冠した社会貢献活動を展開しているが、京王プラザホテルは、そうした言葉が定着するずっと以前から取り組んでいた。
まず着手したのは、1988年に設置した、車椅子でも利用が可能な客室「ユニバーサルルーム」だ。
「ユニバーサルルームは当初計15室、その後2002年に進歩したスタイルで計10室を設置しました。これほどの数を持つのは珍しく、またほとんどの機器が着脱式で、健常者の方もご利用いただけるのが当ホテルの特徴です」(企画広報 斎藤潤子さん)
液晶ドアスコープを設置したり、ベッドルームに補助アームチェアを取り付けるなど、より利用しやすいバリアフリー化を進めてきた。また、視覚障害や聴覚障害を持つ人のための設備もホテル内に導入している。
「手話教室やバリアフリーの勉強会を実施したりと、ハード面だけでなくソフト面も強化しております」
廃棄物処理、水の再利用、節電全従業員のエコロジー活動
バリアフリーと平行し、エコロジー活動も他に先駆けて進めてきた。1991年に廃棄物指導委員会を発足し、それまでほとんど分別されていなかった廃棄物の分別を実施。以後、生ごみのリサイクルや排水の再利用、節電・節水装置を設置したりと、環境保全につながるさまざまな活動を展開してきた。
「こちらもバリアフリー同様、ハード面だけでなく、社内で繰り返しごみ分別を呼びかけたり、多摩川ごみ拾い運動参加を促すなど、ソフト面でも全社員的なエコロジー活動を推進してきました」
2001年には、都内に事業所を持つ組織を対象に環境保全に関する自主目標を都へ宣言・報告する「エコアップ事業所東京宣言」に登録。以後もトイレットペーパーや事務用紙の100%再生紙利用など、エコロジー活動を推進していく。
同ホテルの社会貢献活動の特徴は、徹底して本業の事業活動の一環として行っている点にある。
「私たちが行うのはボランティアではありません。あくまで本業であるホテルのサービスのなかで社会貢献活動を実現したいと考えています。特にバリアフリーに関しては、どんなお客様も楽しんでいただける場所を提供するのがホテルの基本姿勢。その延長に、社会貢献活動があると認識しています」
社員参加型・社内横断型推進組織「バーズアイ」を設置
こうした社会貢献活動は、それまで会社主導の委員会や部門ごとの検討会でおこなわれていたが、より社員が参加しやすいインフラを構築すべく、2002年に社員参加型プロジェクト「バーズアイ」を発足させた。
「バーズアイとは、その名の通り“鳥の目”という意味です。鳥のように俯瞰して、横断的に社会貢献活動を考えていくことを目指します」
「バーズアイ」が発足したことで、今まで以上に社会貢献活動が活性化したが、その象徴といえるのが宴会場やロビーを利用したチャリティーイベント「ボランティア・プラザ」だ。
「我々が取り組んできたエコロジー&バリアフリーの活動を、皆様に楽しんでいただきながら、チャリティーとして参加いただく。おかげさまで今年2月も400人もの方に来場いただきました」
現在は東日本大震災の影響から、義援金を集めるチャリティーコンサートの開催や、目標数値以上の節電達成と、エコロジー・バリアフリーにとらわれない社会貢献活動にも注力。これからの活動にも注目してほしい、と斎藤さんは語気を強める。
「社会貢献活動は、新たな要素を見つけて取り組むことはもちろん大切ですが、継続することも意義があります。バーズアイを中心に、我々の活動は終わることはありません」