●ニチレイマグネット株式会社 ●江東区亀戸(東京支店) ●1969年創業 ●従業員数105名
TOKYO★世界一 (14)
LINIE SYSTEM リニーシステム
ニチレイマグネット株式会社
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。亀戸天神社ほか多くの寺社がある江東区亀戸のニチレイマグネットは、創業以来マグネット業界をリードし続け、画期的な製品を多数開発・発売してきた。その一つが、マグネットシートの対向吸着システム。今後の展望などと合わせて、その優れた特徴などをご紹介したい。
(取材/袴田宜伸)
「どこのご家庭の冷蔵庫にもメモ留めとして貼られているマグネットシートが、当社の最初のヒット商品です」
そう話すのは、ニチレイマグネット・専務取締役の前橋義幸氏。創業当時の40年前、「磁石は黒くて硬い」が常識だったが、それを覆してフレキシブルなシート状の磁石「マグネシート」を開発。自動車の若葉マークを手がけたことを皮切りに、教材や文具、POPなど、さまざまな形で使用されるようになった。
その後もニチレイマグネットは、300件を超える特許を取得。1万点以上の新製品を世に送り出してきたが、そうしたノウハウを結集させて生み出されたのが、マグネットシートの対向吸着システム「LINIE SYSTEM」である。
誰でもいつでも間単に掲示内容を変えられる
「21世紀のマグネットシートの文化を創造する」との思いで開発がスタートしたLINIE SYSTEMは、名前などを記す「リニーシート」とそれを貼る「リニーベース」が対になったもので、それぞれにNとSの磁極線が2.5㎜幅で水平に交互に配列。
そのためベースにシートを近づけるとN極とS極が引き寄せ合い、その結果ガイドやラインがなくてもワンタッチで定位置に吸着されるのだ。前橋氏はLINIE SYSTEMのメリットを続ける。
「ベースを作れば、誰でもいつでも間単に掲示内容を変えられます。また、磁力という目に見えないガイドにそってシートがつきますから、掲示するボードの整理整頓にも手間がかかりません」
主な導入先は、勤務表など日々刻々と掲示する情報が変わる病院やスポーツジム。
また、関西国際空港でもチェックインカウンター上部にある航空会社のエンブレムの掲示をはじめ、多くのシーンで採用。好評を博している。
「シールなどの固定式では、交換時に壊すという行為が入りますし、再利用も難しくゴミも出る。でも磁石なら壊さずに交換でき、再利用も容易。ですから環境にもやさしい商品と言えます」
ただの壁が機能する壁に早変わり
ニチレイマグネットではこれまで、磁石だけでなく磁石を貼る側の素材も開発。国内初となる、はさみで自在に切れる「スチールペーパー」がその一つだが、新たに約2年前からは「マグペイント」を発売している。
これは錆びない鉄の微粒子が混ぜ込まれた特殊な塗料で、壁に塗るとそこが鉄板に早変わり。マグネット製の玩具を使って子どもが壁で遊ぶことができ、壁に画びょうを打たずしてカレンダーなどを貼ることもできる。
「マグペイントを塗れば、ただの壁が機能する壁に変わります。色も約600色からお選びいただけ、シックハウスの心配もありません」
マグペイントは大手ハウスメーカーで採用されているほか、幼稚園や保育園でも導入が進んでいる。
多くの人に夢や感動を与え続けたい
このほか磁石と同じ「着脱」という観点からシートベルトカバー「Ving(ヴィング)」を発掘。(株)Vingと共に交通安全運動にも力を注いでいる。
さらにニチレイマグネットは、購入金額の一部がチャリティ活動にあてられる新しい社会貢献活動「リボンマグネット」にも関わり、リボンマグネットそのものを生産。社会貢献を果たしている。
今後の目標を問うと前橋氏は、次のように口にした。
「これまでの経験や実績をもとに、より新しい価値をもつ製品作りを進めていきます。そして多くの人々に夢や感動を与え続ける、“マグネットワールド”を実現していきたいです」
磁石を変えて、社会貢献したい―創業時の思いを今尚、受け継ぎ、ニチレイマグネットは新たな未来の創造に向けて歩み続けていく。