社会に貢献するために 第2回
小学校で自動車に親しみ、学ぶプログラムを展開
東京トヨペット株式会社
サステナブル(持続可能)なクルマ社会を目指し、東京トヨペットではこれまでさまざまな環境への取り組みや社会貢献活動を実施してきた。なかでも注目を浴びるのが、2009年よりスタートした「トヨタ原体験プログラム」。学校現場と連携し、子どもが自動車と触れ合いながら学習できる場を提供している。
(取材/種藤 潤)
地域に根ざした企業だからこそできる社会貢献
東京トヨペットは、1953年創業以来半世紀にわたって、東京における自動車の販売、整備を担ってきた。その一方で、より安全、かつ環境に優しいサステナブル(持続可能)な自動車社会の構築も責務と捉え、さまざまな環境に対する活動、社会貢献活動も平行して行ってきた。
環境に対しては、トヨタ自動車の販売店として、ハイブリッドカーや低燃費車・低公害車の販売を推進。また、環境負荷低減や事故防止を行う国際規格ISO14001を69店舗(2011年4月現在)で取得、廃棄物の適性処理や廃タイヤ、廃オイル、使用済自動車の適切なリサイクル処理等、環境に対する質の高いサービス推進に努めている。
社会貢献活動としては、団体献血、コミュニティーコンサートの実施などのほかに、自動車会社としての取り組みにも注力。1993年から福祉車両を福祉施設に寄贈、累計38台(2010年度末時点)に達した。飲酒運転の危険性や運転席からの死角を体験できる「交通安全体験イベント」も積極的に実施している。
そして近年、新たな社会貢献の形をスタートさせた。その名も「トヨタ原体験プログラム」。
2009年よりスタート「トヨタ原体験プログラム」
このプログラムの対象は小学生。トヨタ自動車が開発したオリジナルプログラムを元に、学校で学ぶ理科や社会科の内容を、自動車とのふれあいを通して、実際に学習していくというものだ。
「小さい頃から自動車に触れ、自動車の理解を深めてもらう場を増やしていこうと、弊社からは4名の講師を派遣し、このプログラムを実施しています」(東京トヨペット広報グループリーダーの内藤博之さん)
まずは2009年から、小学4年生を対象とした「クルマ原体験教室」を本格始動。理科の授業の一環として、約90分、自動車のさまざまな構造を体感しながら、空気の性質について学んでいく。
授業の前半は、小型の空気エンジンカーを用いた、自動車のパワーとコントロールについての実験。空気の圧縮によるパワーがどれほどの力を出すのかを実感した後、エンジンカーがスムーズに進むためにはどうしたらいいのかを開発担当者の立場になって考える。そして、まとめとして、エンジンカーと実車を比較しながらエンジンの仕組み、自動車のコントロールについて学ぶ。
「コントロールについて考える場面では、子どもが自分で考えることの楽しさ、面白さも実感してもらえます。我々自動車のプロから見ても、コントロールについて斬新な意見が出るときもあります」(内藤さん)
後半は、校庭に出て実車を使った体験学習。まず自動車をロープで引っぱり、どれほどの重さがあるかを体感し、その重い自動車が動くパワーの強さを体験する。次に自動車に乗車し、その重い車体がハンドル、ブレーキなどでコントロールされていることを体験、観察する。
未来を担う子どもたちに自動車と触れ合う機会を
「クルマ原体験教室」は月1回のペースで行われ、2011年3月まで、14校で実施されてきた。
現在は小学5年生向けの「クルマまるわかり教室」も行っている。自動車産業を学ぶ社会科の授業の一環として、前半はクイズ形式で環境や温暖化について理解を深める。後半はボードゲームで自動車工場の経営をバーチャル体験。生産、開発、販売がどのように環境と連動し、どう計画を立てていけば環境に負荷がかからず企業経営を進められていくのかを、グループごとに検証しながらゲーム形式で競い合う。
これら「トヨタ原体験プログラム」とは別に、現在小学5年生を対象とした「職場見学」、中学2年生を対象にした「職場体験」に対しても、東京トヨペットは積極的に場を提供。ここでも子どもたちに自動車と触れ合う機会を増やすよう努めている。
「将来を担う子どもたちがもっと自動車と親しみ、正しい知識を持てば、日本のクルマ社会はもっと豊かで安全になると思います」(内藤さん)
昨今、若者の自動車離れが進んでいると言われるが、乗る乗らないにかかわらず、現代において自動車と触れ合わずに生きることは不可能。エコカー推進など、未来型のサステナブルなクルマ社会の構築は誰もが考えなければならない課題である。そうしたなかで自動車を正しく理解し、きちんと向き合える若い世代が増えることは、これからの社会において大きな財産となるだろう。同社の取り組みがより広がることを、心から願いたい。