HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.39 東京都商工会連合会 会長 桂敎夫さん
インタビュー
2011年3月20日号

 

東京都商工会連合会 会長 桂敎夫さん

多摩の発展が東京の未来を支える。

東京都商工会連合会 会長

桂 敎夫さん

 日本の経済を支えているといっても過言ではない中小企業。地域の商工業全般の改善発達を図るために設立された商工会は、そんな中小企業の身近な相談相手であり、強い味方だ。多摩・島しょ地域の小規模企業等の支援を行っている東京都商工会連合会会長の桂敎夫さんに、これからの多摩地域、そして東京のあり方についてうかがった。

(インタビュー/津久井美智江)

中小企業が元気になるユニークな取り組みが次々登場

―中小企業の経営力強化と技術の向上をサポートする「産業サポートスクエア・TAMA」がオープンして1年経ちましたが、効果は表れていますか。

 東京都の工業製品の出荷額は、東京23区、三多摩26市3町1村の30市町村別にみますと、1番が府中市、2番が大田区、3番が板橋区、4番が日野市、5番が八王子市、6番が羽村市、7番が瑞穂町です。23区と多摩地区を割合で見ると、44~45%対55~56%。その差は今後もっと広がると思います。
 しかし、三多摩で工業都市としてのインフラが整備できているのは日野市と羽村市だけなんですね。多摩の産業は基本的に電子電気機械部品、輸送機械、情報通信機械が3本柱なんですが、リーマンショックで経済がこんな状況になってしまいましたから、これからはますます中小企業、大学、金融機関などの多様な人材が活発に交流・提携できる場を提供し、「計測・分析器」「半導体・電子デバイス」「ロボット」といった多摩地域を代表する産業の事業化を推進していく必要があると思います。

―多摩地域にはたくさん大学がありますから、心強いですね。

 70になんなんとする大学があり、そのうちの40近くが理工系の学部を設けています。東京農工大学とか電気通信大学、首都大学東京もそうですね。そういうところが中小企業のいろんな相談を受けるようになってきましたので、面白いことができるのではないかと期待しています。
 それから、多摩の大学の先生方には、地元の小中学校に行って科学の面白さとかものづくりの楽しさを講義してほしいとお願いしているんですよ。日本を支えているのは技術です。まず、その底辺を広げることが大事ですからね。

「産業サポートスクエア・TAMA」開所式にてあいさつ

「産業サポートスクエア・TAMA」開所式にてあいさつ

―日本の産業を支えているのは中小企業ですが、素晴らしい技術を開発してもそれを生かすチャンスはほとんどありません。そういう技術や発明を吸い上げる方法はないのでしょうか。

 日野市では、企業OBが自らの経験や人脈、スキルなどを生かして、地元の中小企業を支援する「ものづくりお助け隊」というボランティア組織が発足しまして、成果を上げています。中小企業では自分のもっている技術が、ほかに転用できるかどうか分からないんですね。それを教えてくれるんですよ。これで、日野市はものすごく生き生きしだしました。
 それから、つい1カ月ほど前には、瑞穂町で「瑞穂ファントム工場」事業がスタートしました。瑞穂町の製造事業者は、一芸に秀でた匠の製造企業の集まりで、1社1社はその道のプロフェッショナル。守備範囲は狭いかもしれませんが、技術・サービスにはこだわりをもった職人たちです。
 そんな一芸に秀でた中小企業が連合を組んで、マザー企業群とファミリー企業群を構成し、共同開発、共同プロモーションするんです。これも面白い取り組みだと思いますね。

多摩を中心とする「多摩シリコンバレー」構想とは?

―多摩地区には横田基地があり、石原知事は軍民共同使用を目指していますね。

 世界的に需要が急激に拡大しているビジネスジェットやコミューター機等について、首都圏空港への強い乗り入れ要望が出されています。昨年の12月中旬、旧ブッシュ政権時の国務省、国防省の人たちが10人くらいやってきまして、改めて申し入れがあったんですね。空港容量を増大させる横田基地の軍民共用化は、多様な航空サービスの提供に寄与すると、石原知事は大変歓迎されました。

―弊紙でもビジネスジェットを普及させるべく特集を組みましたが、日本ではまだまだですね。

 ビジネスジェットは小さいもので20人乗り、大きいもので100人乗りくらいですが、アメリカにはだいたい1万1000機あります。アメリカでは企業の社長や俳優など、みんな個人で持っていますからね。ところが日本には30機くらいしかない。離発着数も、ニューヨークの3つの飛行場で年間1500機のところが、日本では一昨年は成田と羽田を合わせて15機です。
 これはどういうことを意味しているかというと、ビジネスチャンスの差なんですね。もちろん安全保障が最優先ですが、日米共同でどこにも負けない技術開発をしていく時代がきています。
 そのために多摩を中心にして、西は神奈川の相模原・厚木まで、東は千葉の筑波までを結んで、石原流に言うところの「多摩シリコンバレー」をつくり、そのちょうど真ん中にある横田の飛行場を活用して、シリコンバレーと多摩シリコンバレーをつなごうじゃないかと。これは大事なことだと思いましたね。

―もしもこれが具現化すると、日本の産業のあり方も変わってくるでしょうね。

 チュニジアに始まった民主化運動が、エジプト、北アフリカ全体、それから中近東まで広がっています。政治もそうですが、社会構造そのものが転換の時期に入ってきているという捉え方をしないと先を読み間違えるでしょうね。
 これまではコストの問題から海外に進出し、特に中国に出て行ったわけですが、そろそろ脱中国の時がきていると思います。
 私はコンピューター関係の会社をやっていますので、その業界で言いますと、インドのバンガロールなどがアジアで一番注目されていますが、製造業では中国の次はどこかというとベトナムという気がします。そしてタイ、インド、インドネシアと続く。ベトナムの人は知能指数が高いというか、日本の緻密な難しいものについては非常に適していると思いますね。

国民体育大会を機に多摩の観光開発を推進する

―日本のGDPが上がったといっても、それは大企業の、しかも6割、7割は海外の収益です。国内の中小企業はまだまだ厳しい状況です。

 資源立国、金融立国、あるいはものづくり立国と、国の生きる道はいろいろありますが、日本はやはり科学技術立国だと思います。
 中小企業はいろんな技術をもって、さまざまな研究をしているんですから、まず役所は中小企業の技術を認めて金融応援することが重要ですね。
 ところが、役所は前例依存症ですから、その価値を認めることができない。それが大問題なんですよ。
 中小企業が融資を受けようとして、どこからどう入ってもぶつかる壁は一つ、無形担保の審査をしてもらえないということなんですね。無担保審査なくして企業の発展はないんですよ。

―中小企業は、人材も足りない、金も足りない、ないないづくしだから中小企業にとどまっているわけですからね。それをサポートするような支援をしてくれなければ意味がありません。

 私が大事にしている西武信用金庫では、中小企業診断士の資格のない者は支店長にしないんですね。そうすると、中小企業が融資を受けるために持ってきたレポートを審査する目が違いますし、審査のスピードもアップします。都市銀行でそんなところありますか。

―商工会連合会会長として、知恵はございませんか。

 現在、東京の中小企業は70万前後ありますが、その中で商工会議所と商工会の会員は14万前後、2割くらいです。残りの8割はどこにも属していない。この人たちをどこが面倒を見ているかというと、区市町村と都の外郭団体である中小企業振興公社です。
 これからの日本を立て直すために、私は大企業、中企業、小企業と区別すべきだと考えています。そうなると、商工会も規模別会費に切り替えなければならないんですが、なかなか難しいんですよ。

―平成25年、多摩、島しょ地域を中心に都内全域で「第68回国民体育大会」と「第13回全国障害者スポーツ大会」が開催されます。多摩地域のPRにつながるのでは。

 そのために、多摩の7つの商工会議所と21の商工会のトップ、都の幹部が集まる今度の「多摩経済サミット」で、最終的な多摩の観光開発について決める予定です。
 一方で、多摩地域を見たときに非常に特徴的なのは、沿線によってカラーがはっきりしていることです。
 府中から日野、八王子にかけての京王線沿線、青梅線の延長線にある羽村から瑞穂はものづくりのエリア。中央線沿線には役所とか大きなショッピングセンターが集まっている。西武線沿線はインフラの遅れている地域ですが、農業が強いですからそれを推し進める。これらを組み合わせ、多摩全体として農工商連携を強めていくのが、これからの発展につながるのではないかと思っています。
 民間でも行政でも、トップに立つ人間は大事です。そういう大きなグランドデザインを描ける行政官が登場してほしいですね。

―そこで一つ提案があります。日本の電車ってみんな上り下りですよね。英語のようにウエストバウンド、イーストバウンド、つまり西行、東行とか南行、北行とすれば、住民の意識が変わると思います。中央に上っていくのではない、東に向かっているのだと。

 確かに、世界の都市を見てもだいたいイーストエンド、西に向かって発展していますね。東京も東から西に延びてきた感じですね。そういう点でも多摩地域は非常に可能性が残されている地域だと思います。

 


東京都商工会連合会会長 桂敎夫さん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
桂 敎夫(かつら のりお)さん
1931年、北海道北見市生まれ。亜細亜大学卒業。1971年、漢字情報処理サービスを目的として株式会社カンテックを東京都文京区春日にて設立。日本語入力のパイオニアとして高品質データの作成、各種情報処理サービスにおいて高い評価を得る。IT社会における高品質なサービスを提供する一方で、経済活動にも力を注ぐ。現在、同社取締役会長。東京都商工政治連盟会長、国立市商工会名誉会長、東京都商工会連合会会長。

 

 

東京都自治体リンク
LIXIL
プロバンス
光学技術で世界に貢献するKIMMON BRAND
ビデオセキュリティ
レストラン アルゴ
株式会社キズナジャパン
ナカ工業株式会社
東京スカイツリー
東日本環境アクセス
株式会社野村不動産 PROUD
三井不動産 三井のすまい
株式会社 E.I.エンジニアリング
株式会社イーアクティブグループ
株式会社ウィザード・アール・ディ・アイ
 
都政新聞株式会社
編集室
東京都新宿区早稲田鶴巻町308-3-101
TEL 03-5155-9215
FAX 03-5155-9217