NIPPON★世界一 (36)
●株式会社ピック ●岡山県岡山市
●2002年設立 ●従業員数4名
Shine Slim WS80、WS40
株式会社ピック
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
LEDの長寿命、省エネルギー、水密安定性の高さで脚光を浴びているShine Slim。ソーラー発電式全方位型LED街路灯に続く商品として開発されたのが、プレジャー・ボート用のスプレッダー・ライト「WS80」と「WS40」。マリン・ライフをより安全に快適にしてくれるツールとして期待されている。
(取材/平田 邦彦)
完全防水のLED
その使い道を模索
外洋に出る者にとってデッキを照らすライトほど心強い存在はない。しかし限られた電源しか持たない船上にあって、大容量の電気を使うということは、それだけ余計な燃料を消費することとなる。
さらに充分な水密構造で作られていても、信頼性は必ずしも高くなく、肝心なときに役立たずとなる危険性を持っている。
そんな悩みを一気に解決してくれるスプレッダー・ライト(作業灯)が「Shine Slim WS80」と「Shine Slim WS40」だ。スプレッダーとは、ヨットやボートのマストの中央から横に張り出したアームのことで、多くはその部分に下向きにライトを付けて、甲板上での夜間作業をし易くするために用いられる。
「街路灯に続く製品を考えていた時、LEDの寿命の長さ、消費電力の少なさ、そして水密安定性の高さを活かす分野として船舶があるのではないかと思い至りました」
と話すのは、株式会社ピック代表取締役の竹原秀彦氏。
真夜中でもデッキで新聞が読める
当初、目を付けたのはイカ釣り船の照明だった。しかし、イカは明るさによって海面に集まるのではなく、光が持つ紫外線に集まるプランクトンを求めて寄ってくる。そのため、紫外線を出さない白色LEDでは効果が得らないことが判明した。
漁港でのテストが失敗に終わった後、何気なく立ち寄ったヨットハーバー。そこでは、夜間航海を終えて帰港したヨットのクルーたちが、小さな光を頼りにかいがいしく後片付けをしていた。スプレッダー・ライトとして使えないだろうか―。
「世界中からプレジャー・ボート用品のカタログを取り寄せ、調べた結果、まだ完全密閉された防水型のライトは存在しないことが判明しました」
さっそく知己を頼ってヨット用のスプレッダー・ライトの開発に取り掛かった。静岡県伊東のマリーナにあるヨットに、試作品を取り付けたところ、明るさ、防水性、耐衝撃性、低電力のすべてにおいて圧倒的な威力を発揮した。そして、3月に予定されるジャパン・インターナショナル・ボートショー2011での出展が決まった。
「両舷のスプレッダーそれぞれにWS80型を取り付けると、真夜中でもデッキの上で新聞も読めると好評で、ハーバーのお仲間には製品を待っていただいている状態です」
波風に負けない進化した照明
波が打ち付ける衝撃に耐えるため、取り付け部のコード口と、取り付け治具に工夫が求められた。そこで、コード口を変更。さらにアタッチメントにはステンレスを使用することで、問題は解決した。従来の電球は波による衝撃のため、破損や治具の割れなどがあったが、それらの問題も解消され、安全性も保証されたわけだ。
「このライトは水中での使用も可能です。モーター・クルーザーの船尾に取り付け、停泊時に海中を照らす『スターン・ライト』としての利用も期待されています。今後は白色だけではなく、三原色を組み合わせたカラーライトの開発も視野に入れたいと思います」
スターン・ライトは、船尾が平面ではない場合が多いため、取り付け治具はアールに合わせて特注しなければならないが、ピックではカーブ用の取り付け治具も作成した。
今のところはプレジャー・ボートを対象としているためマーケットは限られているが、今後は漁船向けの製品開発も進めていくとのこと。竹原氏の挑戦は、これからも続く。