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技術日本一
2010年10月20日号

 

NIPPON★世界一 (34)

オーテック有限会社 高出力自転車SDV

●オーテック有限会社
●千葉市花見川区 ●1998年設立

高出力自転車SDV

オーテック有限会社

 日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 千葉市花見川区にあるオーテックは、自転車のペダル構造に着目し、電動アシスト車並みのエネルギー効率の高出力自転車(SDV)を作り出した。現在は国内屈指の研究所と共に、新たな自転車の可能性を模索している。

(取材/種藤 潤)

 


 実際に踏み込んでみて、驚いた。ペダルを直線的に踏み込むことに慣れないため、当初はぎこちない動作になったが、しばらくするとその踏み込む力が無駄なく動力に反映されることが実感できた。

 「人間が自然に足を伸ばしやすい構造を考えた結果、このSDVが完成しました」

 従来の自転車には、フロントギアがひとつあり、その中央にペダルが取り付けられている構造。だがこのSDVは、左上の写真を見ていただければわかるが、2つのフロントギアが一対となり、そこにチェーンがつながれ、ペダルはそのチェーンにくっついている。

 「実はこれまでの円運動では、足の力が効率よく伝わっていませんでした。ですが長円軌道に沿ってペダルを回転させれば、足を伸ばす力を無駄なく伝えることができるんです」

 

電動自転車並みの効率
従来自転車の1.8倍

オーテック社長の織田氏

 現在オーテックへの開発支援を行っている独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の報告によると、従来の自転車と比較すると、低速時においては約1.8倍のパワーが得られる。これは電動アシスト自転車並みの省体力を実現することになるという。

 「少ないペダル回転数で必要なパワーを確保できます。つまり同じ距離を走る上で少ないパワーで済むということ。長距離走行における疲労軽減に大きく貢献します」

 現在SDVは4タイプ展開。販売はホームページ(http://www.bike-sdv.com/)中心だが、長距離サイクリングを楽しむ人、特に中高年層を中心に支持を得て、累計販売台数100台を達成している。

 

息子の自転車通学が契機
効率的な駆動構造を考案

 SDV開発の原点は、起業前のガラスメーカーの技術職時代。当時高校生だった次男に自転車競争で負けたことがきっかけで、自転車の駆動構造について考えるようになった。

 「その段階では趣味の範囲でしたが、もともと退職してから起業しようと考えていたので、本格的に自転車の開発に取り組むことにしました」

 国内、アメリカの特許を調べたところ問題ないと判断、1998年に会社設立。そして4度の試作を経て、5世代機よりSDVとして商品化し、販売をスタートさせた。

 

SDVにより健康で持続可能な社会実現

仰向けに座るようなスタイルのリカンベントタイプのSDV。リカンベントはシートが広く、視界が開け、空気抵抗も少ないので、長距離走行には適したモデルだ

仰向けに座るようなスタイルのリカンベントタイプのSDV。リカンベントはシートが広く、視界が開け、空気抵抗も少ないので、長距離走行には適したモデルだ

 前出の産総研とは、2000年より共同研究契約を開始。SDVの特徴を生かし、リハビリ向けの自転車や、女性や老人など力がない人でも時速30㎞で走行できる高性能HPV(ヒューマンパワードビークル)などの開発を行っている。特にHPVは、これからの社会において重要な存在になると、織田氏は強調する。

 「HPVが一般的に広がり、より自転車の普及が進めば、二酸化炭素排出削減ができ、エコロジー社会に貢献できます。さらに運転する人も健康になり、老化防止、医療費削減も実現できます」

 自転車のさらなる安全性向上はもちろん、自転車が安全に移動できるインフラ整備など、クリアしなければならない問題はある。

 だが織田氏は、SDVユーザーを見て、HPVの可能性に確信を持つ。

 「お客様のなかには、SDVで1日100㎞~200㎞走る方もいらっしゃいます。みなさん健康的で楽しそう。こういう人が増えることが、これからの社会に一番必要なんだと思います」

織田氏は御年70歳ながら、日々リカンベントSDVを愛用。アマチュアレースへも参加しており、「筑波12時間耐久レース」「ツール・ド・千葉」にも参加

織田氏は御年70歳ながら、日々リカンベントSDVを愛用。アマチュアレースへも参加しており、「筑波12時間耐久レース」「ツール・ド・千葉」にも参加

 

 

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