局長に聞く 23
景気回復見据え施策を推進
産業労働局長 前田信弘氏
東京都の各局が取り組んでいる事業のポイントを局長自ら紹介してもらう「局長に聞く」。23回目の今回は産業労働局の前田信弘氏。リーマンショック以後の世界的な景気動向に回復の兆しが見える中、新たな施策の芽を育てようとする意気込みなどを語ってもらった。
(聞き手/平田 邦彦)
海外への販路開拓を支援
―景気は持ち直しつつありますが、産業労働局が今、力を入れている事業は何でしょう。
産業労働局は、幅広い事業分野をカバーしていますが、柱は中小企業対策と雇用対策です。世界経済も回復し、景気の見通しも全体とすれば明るさが出ているといわれていますが、中小企業や雇用の情勢は未だ厳しいので、緊急対策も手を緩めることなく対応します。
同時に中長期的な東京の経済の成長の芽を伸ばすことも考えなくてはなりません。実は平成19年に局内でこうした方針を決めたところですが、リーマンショックを受け、緊急対策が優先された経緯があります。今後の柱として取り組んでいこうと思います。
中小企業対策ですが、第一点として技術面の支援では、来年、臨海副都心に北区から都立産業技術研究センターが移ってきます。今年2月には多摩地域にも同センターを配置していますので、多摩地域と区部の2つの拠点を軸に技術支援を強化していきます。
第二点は、中小企業の海外販路開拓の積極的な支援です。これは都議会の関心も高く、今までのベトナムに加え、東南アジア、さらにはインドもにらみながら、東京の中小企業に海外市場の情報を提供し、製品を現地の流通システムに乗せることで、販路開拓を応援していきます。
―中小企業の航空機産業への参入支援も行っていますね。
完成機体は新規参入の余地がありませんが、機体を構成する部品についてはかなり参入の余地があると踏んでいます。一から勉強を始めましたが、既に中小企業ではグループを作って、製品の試作を開発したり、航空ショーなどに出展し商談を行っています。
航空機の部品の裾野の広さは自動車以上といわれていますし、安全性などの製品管理も自動車とは比較になりません。そこにチャレンジするということは、東京のものづくりを担う中小企業にとってもさらなる飛躍につながります。
育児休暇取得の取り組みも
―景気回復にあわせ雇用は改善するでしょうか。
残念ながら、雇用は今年度中は見通しが立ちそうにないのが現状です。
来春の新卒者の就職状況は今年よりも更に悪くなるのではないかと懸念しています。これまで就職状況の良かった高卒者が悪くなっていますね。緊急雇用対策はこれまでも力を入れて取り組んでいますが、新規学卒者への対策をさらに強化したいです。
また、子育て中の仕事と家庭の両立を図るための支援は産業労働局の仕事です。先駆的な取り組みを紹介することが大切なので、今年度から、かなり手厚い助成金を先進的な企業に出しています。こうした取り組みを行う企業には良い人材も集まると思いますね。
8月6日には「ファミリーデイ」を実施します。各企業の社員の家族を職場に連れてくることで社員同士の相互理解を深め、育児休暇などを取得しやすくする狙いがあります。この狙いが社員やその家族の尊重につながることを期待しています。
東京産野菜の認知度アップを
―農業や漁業振興についての取り組みは。
私も驚いたのですが、たとえば東京産の野菜は、プロの料理人からの評価が極めて高いのです。
東京の土地で作るということは品質も良く、また住宅に近いところで栽培されるので減農薬だと。つまりおいしくて安全だということで高い評価を得ているのですが、生産量が少ないので都民の認知が少ないというのが現状です。
そこで今、都内産の農水産物を使って料理を出しているレストランなどを登録し、紹介する取り組みに着手したところです。今は募集の段階ですが、有名なレストランも応募してきていますよ。9月には発表できると思います。
今年度は東京の農林水産業の新たな展開に向けた芽だしとしては、かなりエポックメイキングな取り組みを行っています。区部の都民は「東京で農業ができるのか!」と驚きますから、まずそこから打破しないと。
―最後に局の事業に対する局長の思いを聞かせてください。
日本経済の回復に向けて、国がしっかりとした成長戦略を立てるべきだと思いますね。景気状況もようやく光が見え出してきたところですので、我々は緊急対策を維持しつつも、これまでお話しした取り組みにもチャレンジしていきます。
そして平成23年度はその取り組みをさらに強化していきたいと考えています。