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技術日本一
2010年6月20日号

 

NIPPON★世界一 (30)

コデラカプロン株式会社 銅布フィルター付きマスク

●コデラカプロン株式会社 ●新潟県三条市
●2000年設立 ●従業員数3名

銅布フィルター付きマスク

コデラカプロン株式会社

 日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 新潟県三条市のコデラカプロンは設立以来、特殊な技術で生成した極細の銅繊維を活用し、携帯型の浄水器などを開発してきたが、昨年11月には、新たに銅布フィルター付きマスクを完成させた。その驚くべき効果を、開発時の苦労などと合わせてご紹介する。

(取材/袴田 宜伸)

 


 加工しやすく、高い導電率・熱伝導率を持ち、抗菌性・耐食性にも優れている銅。古くは青銅器に始まり、装飾品、食器、鍋、銅管、屋根など、さまざまに活用されてきた。

 その銅を30μmという超極細な繊維に加工する特殊な技術をもつコデラカプロンは、銅の抗菌性の高さを活かして、生成した銅繊維で携帯型の浄水器を開発。

 「カッパー君」と名付けられたそれは、水道水に含まれる塩素を瞬時に取り除き、さらに抗菌・除菌もして水を長持ちさせる優れもの。ユーザーの好評を博し、新潟中越沖地震では、避難所での給水に使用された。さらに、新潟県認定品にも選ばれている。

銅布フィルター

銅イオンと銅の電位差で除菌・抗菌し、口臭も防ぐ銅布フィルター。

 その後、同社ではカッパー君を応用してシャワーや蛇口なども開発したが、代表取締役社長の古寺保治氏は「抗菌性の高い銅繊維をほかにも活かせないだろうか」と模索。

 新潟大学と共同で自然科学系の研究開発中に、ふとひらめいた。

 「マスクの内側に長方形のポケットを作り、そこにフィルターの要領で銅繊維を入れることを思いつきました」

 

銅繊維を巻き付け抗菌力をアップ

 まずは銅繊維だけでフィルターを製作。しかしこれは銅の使用量が多く、コストがかかりすぎるために断念した。

ポリエステルに銅繊維がコイル状に巻き付けられている

ポリエステルに銅繊維がコイル状に巻き付けられている

 次にトライしたのが、ポリエステルに銅繊維をコイル状に巻き付けて、それを織り込んで布にするというもの。

 「コストが大幅に抑えられますし、コイル状に巻けば、同じ銅繊維を直線で使うよりも銅の表面積が大きくなりますから、抗菌力が高まります」

 地元の渋芳撚糸と港屋の協力が得られて開発が加速。およそ1年半の試行錯誤の末に、「超抗菌・銅布フィルター付きマスク」が完成した。

 

MRSAの殺菌基準を大幅にクリア

 超抗菌・銅布フィルター付きマスクの最大の特徴は、何と言っても除菌力・抗菌力の高さ。新型インフルエンザウイルス(A型H1N1)の試験では、ウイルス数が8時間で7.6×10の6乗個から63個にまで減少したほか、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などでもその効果のほどが実証されている(別表参照)。

銅布フィルターの試験結果

各試験片の生菌数。銅布フィルターが驚異的な殺菌力を持つことがわかる
※クリックすると拡大されます。

 「空気中のカビにも高い効果があるほか、花粉やハウスダストにお困りの方にもオススメです」

 銅布フィルターは、約6カ月間、洗いながら繰り返し使用可能。フィルターを入れるマスクも、銅によって除菌・抗菌されるために毎日交換する必要がないので経済的だ。

 古寺氏は続けて話す。

 「銅布フィルターを通すと空気が細かくなり、圧力損失が防げられますから、マスクをしていても呼吸が楽です」

 

白衣や作業着などさまざまに応用可能

代表取締役社長の古寺氏

 超抗菌・銅布フィルター付きマスクは、既に消防署や警察署に導入され、反響も上々。リピーターも多く、病院や小中学校でも導入が検討されているという。

 「医療用向けの白衣、精密機器関連の作業着、空調のフィルター、車のシートなど、銅布はさまざまな形で応用できますので、今後も開発を進めていきたいです」

 今後の目標をそう口にした古寺氏。

 多くの可能性を秘めた、世界に類を見ない高抗菌性銅布。マスクに続く画期的な製品の誕生を心待ちにしたい。

 

 

 

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