安全・安心・快適な都営地下鉄を目指して
都営地下鉄は昭和35年12月に浅草線の一部区間が開業して以来、三田線、新宿線の営業を開始、平成12年12月には大江戸線が全線開業し、これら4路線で合計109キロ、駅数106駅、一日平均234万人(平成20年度)が利用している。また、平成20年3月には新交通システムである「日暮里・舎人ライナー」が開業したほか、都電荒川線、上野公園内のモノレールと合わせ、全長130キロに及ぶ交通ネットワークを形成している。
交通局建設工務部では、都営地下鉄の「安全・安心・快適」を目指し、線路(軌道)や駅施設の日々の保守・点検を行うとともに、地下鉄施設の改良工事を推進している。近年は、バリアフリー施設の整備をはじめ、火災対策、耐震対策の強化が重要な課題となっている。そこで今回は、日々の改良工事や保守作業等について紹介する。
駅施設のバリアフリー化
交通局では現在、「バリアフリー新法」や「東京都福祉のまちづくり条例」等を踏まえ、誰もが利用しやすい駅となるように、バリアフリー化を進めている。
都営地下鉄4路線のうち大江戸線(38駅)は、新しい路線のためバリアフリー化が実現しているが、残りの3線についてはまだ100%のバリアフリー化が図られていないため、今後、平成24年度末までに、全ての駅でホームから地上までエレベーター等により移動できるよう、いわゆる「1(ワン)ルート」の確保を図る計画である。
平成21年度末時点で、1ルート確保駅は、106駅中89駅(約84%)である。なお、乗換駅や利用者の多い駅については、エスカレーターの整備も進めていく。
今年度の工事は新たに着工する箇所を含め、エレベーターが14駅22基、エスカレーターが1駅2基を予定している。
環状第2号線の建設
交通局では、他の事業者による工事のうち都営地下鉄の施設に影響のある箇所については、交通局自身が受託し工事を実施している。
<浅草線新橋・大門間環状第2号線他交差部建設工事>
本工事は、国道15号線(第一京浜)の下を走る都営浅草線との交差部の道路下を掘削し、環状第2号線道路構造物等を築造するものである。工事は、3分割で施工され、1期工事及び2期工事の構造物を完了している。また、付帯施設である関連施設の構造物も完了し、現在、3期工事の浅草線直上の構築の築造を行っている。
<三田線御成門・内幸町間環状第2号線他交差部建設工事>
本工事は、日比谷通りの下を走る都営三田線との交差部の道路下を掘削し、環状第2号線地下トンネルを築造及びこのトンネルに支障する芝共同溝を改修するものである。現在、都道日比谷通り下において環状第2号線地下トンネル本体の構築を築造中である。
両工事は、都内の主要幹線道路下の開削工事であり、地下鉄の直上に環状第2号線地下トンネルを築造するという厳しい施工条件のもと、既存施設に影響を及ぼさないよう留意しながら慎重に施工を進めている。
防災改良工事、耐震補強工事
防災改良工事
防災改良工事は、平成16年12月国土交通省通達「地下鉄道の火災対策の基準について」(新基準)に基づき整備を進めている。
この工事は、地下鉄構内の火災に対して、お客様が安全に避難できるように排煙設備、二方向避難通路の確保、防火シャッター、屋内消火栓やスプリンクラー等の設備を設置するものである。
現在、浅草線の4駅(馬込、東銀座、宝町、日本橋)及び三田線の2駅(板橋本町、板橋区役所前)で安全・安心の地下鉄を目指して工事を実施している。
鉄道構造物の耐震補強
平成7年の兵庫県南部地震を契機に、交通局では鉄道構造物の柱を中心とした耐震補強を実施してきた。平成18年度からは更なる耐震強化対策として、新宿線荒川・中川、旧中川橋梁橋脚並びに三田線及び新宿線高架駅の耐震補強を実施している。
このうち、高架駅の耐震補強については、従来の鋼板巻立て工法に加え、新たに一面耐震補強工法を採用している。これは、柱の一面のみに鉄筋を挿入して補強鋼板を取り付ける工法で、高架下の駅施設や店舗等への影響を最小限に抑えることが可能であり、現在は、三田線新高島平駅、新宿線東大島駅、船堀駅で施工中である。
また、橋脚の耐震補強に関しては、現在、旧中川の耐震補強を施工中であり、いずれも平成22年度末までに全ての耐震補強を完了させる計画である。
地下鉄構造物・駅施設の保守管理
都営地下鉄、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーの保守管理
建設工務部は、都営地下鉄、都電荒川線、日暮里・舎人ライナーを安全かつ安定的に運行するため、日々、線路(軌道)の保守管理を行っている。
これらの路線は1年を通じて1日も休むことなく営業運転が行われているため、線路(軌道)の保守・点検の作業時間は、列車の終車後から始発までに制約され、その中で、レール、分岐器、砕石、リアクションプレート等の交換作業や河川交差部のトンネル構築補修工事を実施している。
駅構内昇降機の保守管理
駅構内には、昇降機設備(エレベーター、エスカレーター)が約950基設置されている。これらの昇降機設備は、一般建物と異なり一日の稼働時間が長く特定の時間帯に利用が集中するなど厳しい状況下で運転している。
このような中で、故障発生時の24時間対応、定期点検により安全運行の保守管理体制をとっている。