NIPPON★世界一 (27)
●新栄技研株式会社 ●新宿区高田馬場
●1981年設立 ●従業員数11名
パノラマカメラQ24
新栄技研株式会社
日本にある世界トップクラスの技術・技能-。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
2002年に「ネットワーク・テクノロジー部門」を新設し、監視カメラの設置やセキュリティシステムの開発などを手がけてきた新栄技研は、2008年に全天候型IPドームカメラを導入して新しいシステムを開発。その優れた特徴を、開発時の苦労などと合わせてご紹介したい。
(取材/袴田 宜伸)
旧来からある全方位式監視カメラは、360度の撮影が可能とされている。だが実際は、固定カメラをモーターで回転させて撮影しているにすぎない。従って死角ができ、また、カメラを常にモーターで回しているため、駆動部分が摩耗して故障しやすいのだ
「トラブルなく、安心・安全をより良く提供したい」
その思いから新栄技研の代表取締役社長・市川利夫氏は、死角もトラブルもない新しいカメラを見出そうと、数年前から展示会や相談会に何度も足を運んだ。その末におよそ2年半前、全天候型IPドームカメラ「パノラマカメラQ24」に出会ったのだった。
全方向360度を1台でそのまま撮影可能
パノラマカメラQ24は、レンズに魚眼レンズを使用。そのため、全方向360度を1台でそのまま撮影できる。
「従来の固定式カメラで室内を死角なく撮影するには、部屋の4隅に1台ずつ必要です。でもパノラマカメラQ24であれば、1台でまかなうことができますから、設置コストを大幅に削減できます」
魚眼レンズなため、撮影した画像はゆがんで見えるが、画像は自動で補正される。
そのため、ライブでも録画でもゆがみなく表示することができ、撮影画像をズームできるほか、水平に動かしたり傾けたりすることも可能だ。
「画素数は300万画素で、旧来のおよそ8倍ですから、撮った画像をズームしてもはっきり見ることができます」
また、駆動部分がないことも大きな特徴。市川氏は話す。
「カメラはずっと固定で動かしませんから、駆動部分が故障するということが一切ありません。堅牢で故障しにくく、メンテナンスフリーです」
毎回、ソフトをオリジナルで作り出す
こうした優れた特徴を持つパノラマカメラQ24だが、導入するうえでの苦労は多い。
「パノラマカメラQ24と旧来からある望遠カメラを併用するケースが多いですが、パノラマカメラQ24はデジタルで、旧来の望遠カメラはアナログ。そのため、操作に使うソフトが全く違うのです」
導入先によって要望が異なるだけに、ほかで使ったものをそのまま流用することはできない。
従って新栄技研では、新旧のカメラが1つのソフトで同時に簡単に使えるように、積み重ねてきたノウハウを活かしながら、毎回オリジナルでソフトを開発しているのだ。
「お客さまにご満足いただくことが第一ですから、ご要望を知るために、話をよく聞くことを大切にしています」
「人と企業の安心・安全」をテーマに開発
これまでパノラマカメラQ24を使ったセキュリティシステムは、空港のラウンジ、ケータリング工場、浄水場、空港の給油所などに導入され、ほかにも産廃処理場では、携帯電話の写メールを組み合わせた新しいシステムを構築。ゴミの出荷から受け取り、処理までの流れを、すべて管理できるようになっている。
「導入先からは一様に、『高画質で死角なく見られる』と喜んでいただいています」
今現在、新栄技研では、撮影した画像をいつでもどこからでも携帯電話などで見られる、画期的なセキュリティシステムの開発に努めている。
「河川の増水や津波の発生などを、その場にいながらリアルタイムで見ることができますから、多くのシーンでご活用いただけると思います」
今後も「人と企業の安心・安全」をテーマに、ニーズに合ったセキュリティシステムを開発していきたい―そう続けた市川氏。
新栄技研は、これからも多くの目で社会を見つめ、安心・安全を担い続けていく。