第53回 イタリアの朝食の定番は甘い誘惑
先月イタリアを訪れて、久々に朝食に美味しいコルネットを食べました。コルネットとは、クロワッサンの中に、ジャムあるいは、カスタードクリーム、ヌテッラ(ヘーゼルナッツペーストの入ったチョコレートクリーム)などの詰まった、イタリアの朝食の定番です。コルネットの歴史は古く17世紀後半にウィーンから、当時のヴェネツィア共和国に伝わったのがその起源。もちろん庶民が朝食にコルネットを食べるようになったのは、それからかなりの年月が経ってからです。実はクロワッサンよりもコルネットの方が歴史は古く、お隣フランスにはマリー・アントワネットが結婚した1770年に、その文化を持ち込んだと言われています。
イタリアでは、朝からしっかりと食事をする人は割と少なく、小さな子供のいる家庭の多くは、家でミルクとクッキーを食べる程度が普通です。そして、多くの大人たちは、朝食のために、近所や職場の近くにあるバール(喫茶店、カフェテリア)に立ち寄ります。
朝のバールでは、男性も女性もみなコルネットを頬張っています。早朝に焼き上げた、まだ温かいコルネットが提供される店も多くあり、カップチーノとの組み合わせは最高。そして、なによりも忙しい朝に手軽で、腹持ちが良い。炭水化物と充分な脂質、そしてジャムやクリームの糖分で、寝起きの身体にエネルギー注入して、朝から元気にアクティブにという訳です。しかし、その平均的なカロリーは、日本のメロンパン1個とほぼ同じ400〜450kcal。多くのみなさんが感じた様に、それって身体にいいの? 太るんじゃない?と考えてしまいます。
世界的に健康志向が強まる昨今、イタリア人の多くも健康やプロポーションを気にしており「毎朝のコルネットの習慣を止めた」なんて話もよく耳にします。しかし、周りが美味しそうにコルネットを頬張るなか、ひとり我慢するのは辛い様で「美味しいんだけどねー」と嘆く声もしばしば。
そんな話を耳にするようになって、私もイタリア滞在中の、コルネットの回数を若干制限。ただ美味しそうなコルネットに出会った時は特別で、その時ばかりは存分に楽しみます。