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社会に貢献するために 第19回 帝人フロンティア株式会社2018年08月20日号
帝人フロンティア株式会社
これまで同社はさまざまな防災商品を開発するなど防災への取り組みを行ってきた。近年各地で甚大な被害をもたらしている、豪雨による河川増水の危機状況を照明により通報する、新たな防災機器を生み出したという。懐中電灯などの防災商品にも用いられる三嶋電子株式会社製の「水電池」を活用し、より多くの河川の危機の可視化を目指す。
(取材/種藤 潤)
水に反応し点灯。増水状況が遠方からでも確認できる
今回、同社が三嶋電子と開発した「河川増水危険警告灯」の構造は、極めてシンプルだ。河川の増水リスクが高まる位置に、水に反応して発電する「水電池」をポールなどで固定し、さらにその上部付近など、遠方からでも見える場所に、点滅ライトを設置するだけ。豪雨などで河川の水位が上昇し、「水電池」の場所まで水が達すると、反応して発電。ライトが点滅して、増水の危険を知らせるのである。
他社製の水位警告灯は、使用する電力は太陽光発電がほとんど。しかも水位の検知は画像処理や水圧などが主で、設置する場所も特定され、防水性も高めなければならず、結果としてコストがかかる。
一方、同社の警告灯は、水により発電するため、防水のリスクは基本的に存在せず、また、水に浸からなければ放電することはないので、メンテナンスも長期間不要だ。まさに増水警告灯のためにあるような様々なメリットがあり、何より低価格である。
すでに国土交通省がこの警告灯を採用し、山形県を流れる河川敷に設置(下写真)した。この河川は豪雨や台風などで増水するリスクが高く、水位上昇の際の住民避難の警告灯として、すでに実戦的に活用されているのである。
「まるごと防災」でも採用
水で発電する「水電池」
この警告灯で採用している「水電池」は、三嶋電子製の『柏葉(はくよう)水電池』である。
『柏葉水電池』は、水に浸すと数秒で発電。発電場所を選ばない、長期保存が可能といった特徴があり、特に災害時には最適だという。
帝人フロンティア株式会社のあらゆる防災製品とサービスに関わる岸本隆久さんは、この電池の価値を高く評価している。
「他の水電池より性能が良く、お茶、コーヒー、醤油、海の水など、H2Oを含んでいる液体であれば発電が可能で、持続力もあるので、とても使いやすいです」
「河川増水危険警告灯」のメリットは、『柏葉水電池』のメリットでもあり、軽量であることも他の電池にはない大きな特徴だ。そのため防災商品に活用しやすく、懐中電灯、ランタン、照明機、スマホ用充電器などにも使用されている。
ちなみにそれらの製品は、昨年10月にこの紙面で紹介した、同社の室内空間の安全対策パッケージ『まるごと防災』にも採用されており、その特徴を活かすことで今回の河川増水警告灯の開発へとつながったと、岸本さんはいう。
将来は通信機も常備。特に中小河川等に設置してほしい
同社がこの警告灯を製品化しようとした背景には、昨年12月に国土交通省が出した、ある検討会の報告書の存在がある。
同省は気候変動の影響による水害の頻発化・激甚化を懸念し、その対策として中小河川の水防災に着目。中小河川への危機管理型水位計の普及を目指し、低コスト、メンテナンスフリー、設置場所を選ばない、などの特徴を持つ機器を推奨すると記している。
「すでにこの推奨機器として、大手メーカー数社のシステムが採用されていますが、『柏葉水電池』の力を用いたシステムであれば、国土交通省の要望に十分応えられると感じています。そこへの参入も視野に入れながら、本格的な製品化をスタートしました」
そう語る岸本さんも、昨今の豪雨等による河川増水被害の対策のポイントは、中小河川や農業用水路にあるとみている。
「容量の少ない中小河川のほうが早く氾濫し、直接的被害をもたらすと推測されます。東京も大河川とともに、多くの中小河川や用水路、アンダーパスが存在します。ぜひその対策に、我々のシステムを活用して欲しいと思います」
現在は照明による通報のみだが、今後はIoT(Internet of Things=モノがインターネットとつながること)によるモバイル端末等への警報発信も計画中だ。着実に進化している、唯一の「水」による「水」の危機通報システム。気がつけば、あなたの街の河川敷に当たり前に設置されているようになるかもしれない。
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