●ナカ工業株式会社 ●品川区大崎
●1932年創業 ●従業員数600名
NIPPON★世界一 (25)
Vege-Garden ベジ・ガーデン
ナカ工業株式会社
日本にある世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。品川区大崎のナカ工業は創業以来、手すりや階段すべり止めなど「安全」をキーワードとした製品を開発・発売し、社会貢献してきたが、近年ではエコをテーマとした製品作りも推進。昨年10月からは、屋上緑化システムの営業をスタートした。その優れた特徴などをご紹介したい。
(取材/袴田 宜伸)
ヒートアイランド化の抑制を目的として、東京都が屋上緑化の条例を制定したのは2001年。当初は、条例をクリアするために芝やコケ類を植えただけの「義務緑化」ばかりだったが、エコへの関心と「緑豊かな都市景観を作る」との気運が高まるにつれて、義務緑化から「景観・鑑賞用緑化」へと移行。
庭園が造られるなど、屋上緑化が建造物のデザインアイテムとして積極的に採用されるようになった。
そして、そこからさらに発展した屋上緑化システムが、ナカ工業の「Vege-Garden」。
屋上緑化を鑑賞だけにとどめず、花や野菜、ハーブなどを植えてガーデニングや菜園としても活用できる「高付加価値緑化」である。
代表取締役社長の樋口忠喜氏はこう話す。
「『見て、触って、育てて、食べる』を楽しめますから、四季の移ろいや収穫の喜びも味わえます。憩いの場となるのはもちろん、医療福祉施設で園芸療法に利用したり、学校の情操教育の場として活用したりすることも可能です」
特殊な化学処理を施した高品質泥炭を採用
単に緑を生やすだけでなく、こうした多様な屋上緑化を実現するためにナカ工業は、Vege-Gardenの開発に際して土壌を重視した。
水田や土、砂などの一般的な土壌の粒子構造は、さまざまな大きさの土粒子がバラバラの状態にある「単粒構造」で、保水しにくく、排水が悪い。そのため屋上緑化の土壌としては、問題点も多く指摘されている。
そこでナカ工業では、さまざまなデータや協力企業の意見を参考にして、いくつもの土壌を比較し、検討。その結果、特殊な化学処理を施した高品質泥炭「Jソイル」に行き着いた。
植物や作物の生育に最適な土壌
Jソイルの粒子構造は、土壌の粒子が小さなかたまりを形成している「団粒構造」。保水性に富みながら排水性にも優れていて、酸素を多量に供給することもでき、さらには、有用微生物にとっても住みやすい環境にある。
つまりJソイルは、植物の生育に最適な土壌なのだ。
「一般的な土壌に比べて、重さは約半分で、保水力や保肥力は約10倍。わずか10cmの土厚で植栽が可能ですから、屋上の強度面でも安心です」
安心・安全・やさしさが創業以来の理念
Vege-Gardenは、学校やビル、医療福祉施設など、さまざまなシーンでの活躍が期待されているが、さらにナカ工業では、本紙13号で紹介したLED照明「Shine Slim」内蔵の手すりのほか、階段すべり止めや新製品の植栽用人工岩山「創景岩」などを組み合わせて、屋上緑化のトータル・プロデュースも行っている。
「創景岩は、形や大きさを自由に作ることができ、水辺や滝を設けたり、コケを生やしたりすることもできます。ですから、殺風景な空間に自然の彩りをもたせることができますし、医療福祉施設では、Vege-Gardenの中に創景岩で手すり付きの起伏を作り、そこを歩いてリハビリしていただくことも可能です」
樋口氏は続ける。
「安心・安全・やさしさが創業以来の理念です。今後も大切にして、人と環境にやさしいモノ作りをしていきます」
ナカ工業が屋上に生み出す癒しの空間は、多くの可能性を秘めている。さまざまなシーンで見られることを、心待ちにしたい。