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社会に貢献するために 第17回 東急不動産株式会社2018年06月20日号
若者の地域定着のきっかけとしても期待
東急不動産株式会社
東急不動産がはじめた学生レジデンスが注目されている。それは、学生寮やワンルームマンションとは趣を異にする、今どきのシェア感覚を取り入れた居住空間。若者たちが暮らす新たな場の創出は、地域活性にもつながると期待されている。
(取材/種藤 潤)
学生寮とワンルーム
マンションの長所を融合
東急不動産株式会社が新たに立ち上げた学生向け賃貸住宅ブランド第一弾「キャンパスヴィレッジ椎名町」(以下ヴィレッジ)が、2018年1月に竣工、3月より入居がはじまった。西武池袋線「東長崎駅」から徒歩7分、「椎名町駅」から徒歩9分、都営大江戸線「落合南長崎駅」から徒歩10分とアクセスは抜群で、6階建てヴィレッジの167室はほぼ満室だ。
同社住宅事業ユニット首都圏住宅事業本部住宅ソリューション部運営型賃貸住宅グループの齋藤健一グループリーダーは、次のように語る。
「新しいコンセプトの学生向け住宅なので、申し込みがあるかどうか不安でした。でも、私たちが考えた現在の若者が求める“シェアライフ”は、間違っていなかったようです」
ヴィレッジ周辺には大学や専門学校が多く、通学の利便性も評価されたと推測できる。しかし、このヴィレッジの特徴を詳しく見ていくと、理由はそれだけではないことに気づく。
まず、1階は、入居者が自由に利用できる広々としたカフェテリアがある。そして2階から6階の各フロアには、ベッドや机、椅子、照明などの家具が備え付けられた居室と、各階でデザインコンセプトの異なるリビングキッチンが配されている。最大の特徴は、従来の学生寮のようにトイレや風呂が共用でなく、各居室にあることだ。その上、バス・トイレも別で、洗面所も独立。よくあるワンルーム住宅以上の快適性が確保されている。
また、セキュリティに力を入れているのも、このヴィレッジの特徴だ。エントランス、各フロア、各居室それぞれにセキュリティを完備。24時間対応の警備員駆けつけシステムもあり、女性向けには専用フロアも用意されている。さらに、別料金を払えば、栄養士が監修した健康的な食事が提供されることも、人気の秘密だ。
同グループの玉置康介課長補佐は、このレジデンスを「ワンルームマンションと学生寮のいいとこ取り」と表現した。
「プライベート空間はちゃんと確保したい、でもキッチンやリビングなどは共有し、適度な距離を保ちながら交流もしたい。そんな今どきの若者たちの感覚を捉え、ふたつの長所をうまく融合しました」
今の若者ならではの程よい距離感のシェアライフ
玉置さんは、「キャンパスヴィレッジ椎名町」のコンセプトを考える際、今の若者たち特有の“シェア感覚”を意識したという。
「近ごろ、日本でもシェアリングエコノミー(物、サービス、場所などを多くの人と共有して利用する社会的仕組み)が浸透し、カーシェアリングやエアービーアンドビーなどを多くの人が利用するようになりました。そして、その感覚が当然のこととして育ってきた世代は、シェアすることに抵抗がないだけでなく、むしろその価値を知っています。とはいえ、今までの学生寮のように、風呂やトイレまで共有するようなシェアはしたくない。程よい距離感が重要だと感じました」
齋藤さんは、この“シェア感覚”は学生の保護者たちからも歓迎されていると語る。
「子どもの一人暮らしを心配する親御さんからすれば、子どもの安全を守るセキュリティ、美味しさにこだわった安心の食生活が約束されている点はもちろんですが、程よくシェアすることで結果として入居費用を抑えることができた点も、高評価につながったと思います」
若者が街に愛着を持ち地域に定着するきっかけに
少子化と言われるこの時代に、なぜ学生に特化した新ブランドを立ち上げたのか。実は大学生の数は減らず、むしろ増加傾向にあるというデータがある。
文部科学省のデータによると、大学進学率は増加傾向にあり、学生数自体はここ5年ほどは約370万人で推移。加えて、国は留学生の受け入れに力を入れる方針を打ち出しており、大学生数全体としては増加すると予想されるのだ。
玉置さんは、学生が集う場が新たにできることが、その周辺地域の活性化にもつながると考えている。
「特に東京都以外から進学した学生にとって、学生時代に一人暮らしをしたエリアは、“第二の故郷”になります。その後、社会人になっても、愛着ある地域に暮らしたいと思う人は少なくありません。若い世代が新たに暮らすということは、その地域にとって大きな財産になると考えられます」
第一弾の出足は好調に見えるが、課題もあるという。そのひとつが、この学生レジデンスは「集合住宅」ではなく「寄宿舎」に分類されるため、自治体によっては建設許可が下りないことがあるのだ。そしてそれが今後の展開の障壁になる可能性があると、齋藤さんは話す。
「学生のニーズがありそうな土地が確保できたとしても、規制により形にできないのは、学生にとっても、地域にとっても損失だと我々は考えます。ぜひ自治体や関係者には、規制緩和をするなど、柔軟な対応をお願いしたいです」
同社は第二弾として、来年2月、下宿率の高い京都に「キャンパスヴィレッジ京都西京極」を竣工する。また、関東では南北線「志茂駅」に新たな学生レジデンスを建築する予定だ。若者たちの集う新たなシェアライフ拠点が、地域をどのように変えていくか。今後に注目したい。
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