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東京都の監理団体 第5回 アーツカウンシル東京2018年02月20日号
アーツカウンシル東京(公益財団法人 東京都歴史文化財団)
東京の暮らしを公的に支えるのは、都庁や区市町村だけではない。ビジネス、環境、医療、福祉、スポーツなど、東京都監理団体を中心とする公共団体も都のくらしを支えている。今回は、公益財団法人東京都歴史文化財団に所属する、芸術文化の創造を支援する専門機構「アーツカウンシル東京」にスポットを当てる。
(取材/種藤 潤)
東京の芸術文化振興を三本の柱で支援
「アーツカウンシル東京」の機構名にある「アーツカウンシル」とは、「高い専門性を持ったスタッフが、芸術文化の振興を目的に、各種芸術文化事業への助成を中心とした支援を行う独立機関」のことだ。行政とも、支援される文化・芸術側とも一定の距離をとった第三者機関であり、同機構が東京におけるその役割を担っている。
活動は、大きく三本の柱で構成される。第一の柱は、芸術をつくる人、さらにその人達を支援する人や組織への支援事業。要するに東京のまちに文化芸術活動をしやすい環境を整えることだ。
第二の柱は、東京芸術文化振興につながるプログラムを提供する事業。特に、芸術文化に触れる機会が少ないとされる子どもや外国人などに対して、古典芸能や音楽、アートなど、都内でさまざまな芸術文化に触れることができるフェスティバルや、参加・体験できるプログラムを企画、実施している。
第三の柱は、2020年に向け、より多くの人々が文化プログラムに参加でき、かつ2020年以降の東京の芸術創造環境の向上を目的とした各種事業だ。その象徴といえるのが、2018年2月に募集している「Tokyo Tokyo FESTIVAL企画公募」。2019年秋から2020年9月の期間に実施する文化・芸術にかかわる企画を広く公募し、実現につなげていくというものだ。
施設を持たずに東京の文化・芸術を支援
この機構が所属する公益財団法人東京都歴史文化財団は、「東京都庭園美術館」「東京都江戸東京博物館」「江戸東京たてもの園」「東京都写真美術館」「東京都現代美術館」「トーキョーアーツアンドスペース」「東京都美術館」「東京文化会館」「東京芸術劇場」など、都所有の施設の運営管理を通し、東京の芸術文化振興を支えている監理団体だ。その財団のなかにあって、アーツカウンシル東京は、施設を持たずに芸術文化振興を行う組織である。
三好勝則機構長は、この組織が東京に誕生した背景を、次のように語る。
「公立で最も古い美術館として、東京都美術館(当時は東京府美術館)ができたのは1926年。以後、さまざまな芸術文化に関する都の施設が生まれ、本格的に芸術文化を振興する土壌が整ってきました。一方で、最近の10年ほどで全国的な芸術文化による地域振興の動きも活性化してきました。そのような流れのなかで、施設の有無にとらわれず、東京ならではの芸術文化振興を考え、実行する専門組織が必要だということになり、この機構が生まれました」
10年の歳月を経て二つの芸術振興組織が合体
アーツカウンシル東京の成り立ちを振り返ると、大きく二つの動きがあったことがわかる。まず2008年、東京からの文化創造発信を強化する取り組みとして、東京都と東京都歴史文化財団が、芸術文化団体やアートNPOと協力して実施する「東京文化発信プロジェクト」を発足。前述の第二の柱に当たる「フェスティバル事業」や、芸術文化を通して子どもの育成を図る「キッズ事業」、東京における多様な地域の文化拠点形成を目指す「東京アートポイント計画」などを手がけてきた。
一方で、同財団とは別組織で2006年に都知事の付属組織として設置された「東京芸術文化評議会」の提言を踏まえ、2012年11月にアーツカウンシル東京を設立。前述の第一の柱に当たる支援事業を主軸に、人材育成、調査研究、芸術文化環境の整備、シンクタンク機能の強化などを行ってきた。
そして2015年4月、東京の芸術文化施策の中核的組織の体制と機能強化を目指し、二つの事業を再編し、現在の機構へと生まれ変わったのである。
人口が集まる東京だからこそ都民主役の芸術振興が可能に
実際、ここ10年間で、東京のまちには「六本木アートナイト」や「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり」など、同機構が手がけたフェスティバル関係のイベントが定着したように感じられる。他にも、芸術文化関係のイベントや企画が増加した背景には、同機構の存在は少なからず影響していると考えられる。
だが、森隆一郎広報調整担当課長は、自分たちは枠組みを与える存在だと強調する。
「主役はあくまでも芸術家であり、それを支え、ともに楽しむ都民の皆様です。私たちはそのサポート役に徹しています」
支援事業も、直接支援するだけでなく、状況を見極め、支援したい人や組織が活動しやすいよう環境づくりに注力。フェスティバルも、主催はNPOなどに委ね、後方支援に徹している。そしてそれは、東京という多くの人口を持つエリアだからこそ、芸術家やそれを支える人々が集まり、結果として主役を任せられる土壌が育まれているからだと、森担当課長はいう。
「都民が主役で芸術文化が活性化できるということは、それだけ成熟した都市である証拠であり、暮らす人たちにとってのさらなる魅力向上にもつながります。我々はそうしたまちづくりを支える存在として、未来の芸術文化振興につながる『人づくり』を中心に、取り組んでいきたいと思います」
2020年に向け、東京が芸術文化のまちとして、さらに活性化することは、間違いなさそうだ。
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