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大庭麗のイタリア食材紀行 第43回2017年12月20日号

 
大庭麗のイタリア食材紀行

 

第43回 イタリアの伝統的な保存食は冬場の最高のもてなし

 古くは冷蔵庫もなく、食材の物流も充分でなかった時代。乾燥、塩蔵、そして煙の殺菌効果による燻製技術など、日本各地に食糧を確保する知恵が存在したように、イタリアの人々もまた、食糧を保存する知恵と技術を持っていました。

 単純に言うと、食材を砂糖や塩漬けにして、浸透圧の効果を利用して水分を抜き、有害になりうる微生物の増殖を防ぐ方法。食材をオイルで覆うことで、空気との接触を防いだり、酢漬けにして、ビネガーの酸で菌の増殖を防ぐ方法などがあります。滅菌した瓶内でそれらを保存するソット・ヴェートロ(瓶詰め)は、比較的に家庭で準備しやすく、イタリアでは最もポピュラーな保存方法です。

きちんと加熱殺菌処理をすることでソット・ヴェートロ(瓶詰め)は1~2年の保存が可能

 私の個人的な見解で言うと、イタリアでは多くのマンマ(お母さん)が、今でも夏場にこれらの方法で旬の野菜や果物をソット・ヴェートロにするのが好きなようです。そして、子供たちもまた既製品とは異なるその手作りの美味しさを理解しているように思います。

 冬の時期に、友人のお宅へお邪魔すると、シンプルなトマトソースのパスタであっても「今日は、あなたが来るからトマト缶じゃなくて、マンマが夏に仕込んだトマトの水煮の瓶詰のソースよ」とか、前菜や料理の付け合わせにも「これは夏のアーティチョークの自家製オイル漬け。このピクルスは夏野菜を酢漬けにしておいたものよ」などと旬の素材を用いた手作りの瓶詰めを使った料理をテーブルに並べてくれることがよくあります。それらが素朴な料理であったとしても、その食卓は最高のもてなしに感じます。

 味の濃さや、美味しさはもちろんなのですが、そこに詰まった気持ちがなによりも嬉しいのです。そんなイタリアのソット・ヴェートロの伝統が好きで、東京に居ながら私も、毎夏瓶詰めの保存食を準備します。

 冬の時期、友人などを招いた際に、それらを出すのですが……。その価値はそこまで理解してもらえないようです。

 


大庭麗

<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>

 東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

 

 

 

 

タグ:大庭麗 ソット・ヴェートロ(瓶詰め)

 

 

 

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