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大庭麗のイタリア食材紀行 第39回2017年08月20日号
第39回 約2000年前からイタリアに根付く果実 “フィーキ”(前編)
南イタリアの赤土の大地に、樹齢1000年近い大樹のオリーブ畑が広がる景色。そこには必ずと言っていいほど、イチジクの木があります。大きな太い幹を持ち、高さ6〜8mにまで成長する大木もあり、オリーブ畑での作業の合間に、日差しを逃れてイチジクの木の下でひと休みする伝統的な光景が見られます。
地中海地方でオリーブの木と同様に、神から授かった神秘的な木として大切にされてきたイチジク。古代ローマ時代には肥沃、復活のシンボル、永遠を意味し、不老不死の果物と呼ばれていました。
5月の終わりに出回る緑色のフィーキ(イチジク)は、フィオローニと呼ばれます。その後7〜9月になると、大小さまざま、赤や紫、黒っぽい皮のものなど、イタリア国内だけでも数えきれない品種のフィーキがその旬を迎えます。
南イタリアは、広大なオリーブ畑を持つ人々が多い土地柄、イチジクの木を持っている人もたくさんいます。
しかし、彼らの多くはシーズン中に次から次へと鈴生りになるフィーキの木に、若干うんざり。持て余している人が多いようで「美味しいフィーキが食べたいなぁ」なぁんて口にしようものなら、翌日にはバケツ山盛りのフィーキが届いてしまいます。その後も、“せっかくだからうちの庭に採りにおいで”“うちのもどうぞ”と、次から次へとお誘いが続きます。
“一度収穫された実は、追熟しても糖度が上がらないから、しっかり木の上で完熟させたフィーキこそが美味しいんだ”と、コンタディーノ(農夫)のおじさんが言っていた通り、木で熟した甘い実が弾けると、まるでシロップのようなイチジクの蜜が実からポタポタ。夏の日差しで、もうジャムが出来上がってしまったのかしら?と思うほどに、熟したイタリアのフィーキは本当に甘くて美味しいのです。
次回は、収穫されたフィーキの伝統的な活用方法をご紹介したいと思います。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
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