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局長に聞く105 中央卸売市場長2017年08月20日号

 
市場は効率的な物流拠点

中央卸売市場長 村松 明典氏氏

中央卸売市場長 村松 明典氏

 東京都の各局が行う事業について、局長自らが説明する「局長に聞く」。今回は中央卸売市場長の村松明典氏。市場移転問題の今後や豊洲市場への思い、物流における市場の意義などについてお話を伺った。

(聞き手/平田 邦彦)

築地の資産を活用し会計を保つ

—市場長に就任されてこれまでを振り返っていかがでしょう。

 昨年10月に着任しましたが、市場行政は初めての経験でもあり、いきなり嵐の中に飛び込んだというのが実感でした。

 小池知事が移転延期を表明した後、盛り土の問題、9回目の地下水のモニタリング調査で有害物質の数値が異常に高かったこと等、移転延期後に様々なことが起こりました。

 昨年11月に小池知事はロードマップを発表しましたので、それに沿って進めていく予定でしたが、9回目の地下水モニタリング調査の結果を受けてさらなる課題も生じました。

—都議選の前に築地と豊洲の両方を生かす内容の基本方針がまとまりました。築地の土地を売って得られる予定だった4000億円の収益はどうなるのでしょう。

 市場のあり方戦略本部の3回目の会議で、事業の継続性について突っ込んだ議論が交されました。

 売却するよりも築地の資産を保有したまま貸した方が、年間の賃料が160億円上がるので、それを市場会計に充当すれば、売却よりもメリットがあるということでした。会計の事業継続性があるということですね。

 一方で、これから築地を再開発するという話もあり、市場会計の継続性にも配慮しながらやっていかなくてはなりません。今後どういうコンセプトになるのかが問題です。先日の関係局長会議でも、経済合理性を確保しつつ民間主導で再開発を行うということになっています。

 豊洲市場への移転のネックとなってきたのは、築地から移転すると年間約92億もの赤字が豊洲単体で発生してしまうということです。そうなると市場会計の持続性はどうなるのかという指摘がありました。これは先ほども申し上げたように、築地の資産を貸し付けることで、市場会計のバランスが取れるということなのです。

—東京都は11の市場を有しています。築地や豊洲の問題だけが注目を浴びていますが、他の市場がおざなりになるのではないかと思いますが。

 各市場は様々な工夫を凝らしています。大田市場では花きの輸出パイロット事業を行いました。また、大田市場の青果はダントツの集荷力がありますので、輸出にもチャレンジしようとしています。

 足立市場では2か月に一度、一般の方々に開放し、地域に密着した市場として親しまれるように努力をしています。

 

市場外流通との共存が重要

—以前、大田市場に移転する際も反対の声が大きかったですが、今は業者の方々が使い勝手の良い市場へと育てていますね。

 豊洲市場もそうしたいと思っています。いや、そうしなければいけませんね。財政的にも大きな投資をし、施設も閉鎖型でコールドチェーンであったりと、可能性のある施設になっています。これを日本の中核的な市場としなくてはなりません。

 近年、漁獲高は減少しています。これは第一次産業の担い手が少なくなっていることが背景にあるのですが、当然、市場を経由する絶対量も減っています。さらに取引の形も変わってきていて、市場を経由しない、市場外取引が増えています。今後、卸売市場法が改正されるのではとの見方があり、そうなれば卸売市場の規制は緩和されることとなります。逆にそれを市場の魅力の向上に結び付けることが求められます。

 事業者の皆さんと東京都が一緒になって考えなくてはならないと思っています。

—物流の姿も今後、大きく変わりそうですね。

 生産基盤があって市場があって小売店があり、品物が消費者に届くという、これまでの一連の流れがどうなるかでしょうね。取引の形態も変わるでしょうが、中央卸売市場は公共的な役割を担っていますので今後も残るでしょう。中央卸売市場には「受託拒否の禁止」という規定があり、産地から市場に出荷されたものは拒むことはできません。

 取引はインターネットでも可能でしょうが、実際の物は運ばないとなりません。トラックドライバーの数も減少しており、物流の担い手が減る中でどのような物流網をつくるべきか。量販店ごとに物流センターを設けて産地から直接買い入れるのもいいですが、ドライバーが限られている中、一旦は市場に運び、そこから各地域に運んだ方が物流網としての大きな線がひとつで済みます。こうした面からも市場というのは、非常に効率的な物流のしくみだと考えています。

 築地市場には、「築地便」と言われるルートを通じ、全国から多品種の食材が集まりますから、買い付けに来る人たちにとっては大きなメリットがあります。多くの食材が集まることで、目利きの力も欠かせません。品質に価格を付ける役割は大切にしたいですね。

 市場外流通をしている業者の方とも「市場のあり方戦略本部」で意見交換をしました。業者の方は「中央卸売市場にはその役割があり、多品種のものを集める力にはかなわない」と言ってました。市場と市場外流通の業者が互いに共存する道を考えるべきですね。

 

 

 

 

タグ:中央卸売市場長 市場のあり方戦略本部 築地再開発 豊洲移転

 

 

 

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