HOME » サイトマップ » 加藤麗のイタリア食材紀行 記事一覧 » 大庭麗のイタリア食材紀行 第38回
大庭麗のイタリア食材紀行 第38回2017年07月20日号
第38回 シチリア島に伝わる夏に人気のフローズンドリンク“グラニータ”
6月下旬にイタリアへ行ってきました。さわやかな初夏を期待していたのですが、今年は早々と猛暑が訪れており、連日37〜38℃という暑さ。ついつい冷たい物を欲してしまい、久々にシチリア島由来のフローズンドリンク“グラニータ”をいただきました。
レモンやフルーツ、コーヒー味など、さまざまなバリエーションがあるグラニータですが、その王道は何といってもアーモンド味。生のアーモンドとシロップを攪拌した甘いアーモンドミルクで作られるグラニータは、さっぱりとした植物性のミルクの味わいを楽しめます。シチリア島でのアーモンドの栽培量が増えるきっかけの一つにグラニータがあるとも言われています。
グラニータの起源は古く、9世紀頃に遡ります。シチリア島がアラブ人によって征服された際に、多くの文化が持ち込まれました。中世のアラブやトルコなどの人々が、シャルバートと呼んでいた、雪や氷に果汁やローズウォーターを加えた冷たい飲み物の文化もその一つ。冷蔵庫も冷凍庫もない中世の時代に、シャルバートがシチリアに根付いていった理由には、雪室や氷室の伝統がありました。
アペニン山脈から連なるネブロディ山脈をはじめ、ヨーロッパ最大の活火山エトナ山(3323m)などの山々において、天然の洞窟内を石壁で囲んだ雪室。さらに、雪塊の表面を火山灰で覆うことで、雪の長期保存を可能にしました。その雪の塊は、夏が訪れるとシダの葉や藁で包まれ、馬車などで山から運び出されました。凍った雪をかき氷状にし、シロップや果汁をかけたシチリア版のシャルバートは、当時の貴族たちに大人気の夏の贅沢品となりました。
その後、16世紀に入り、氷に塩をかけることで温度が下がる寒剤の原理が普及するとともに、“ポツェット”という冷却器が誕生。果汁やシロップを外側から冷却する現在のグラニータが作られるようになりました。
<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>
東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。
タグ:大庭麗 グラニータ ポツェット シチリア島 シャルバート