都庁の挑戦 医師不足解消に本腰
「医師アカデミー」を開講
自前で優秀人材を育成・確保
医師不足は全国的に深刻な課題だ。その中でも特に産科・小児科など特定の診療科ではその傾向がより顕著になっている。都民の健康を守る都立病院でも医師不足は深刻だが、一月にまとまった「都立病院改革実行プログラム」では、医療を担う人材の育成と資質の向上を今後の大きな施策の柱に位置づけている。来年度から実施する「東京医師アカデミー」をはじめ、質の高い医師や看護士などを確保するため、勤務体制や院内保育室の整備などにも着手する。特に「東京医師アカデミー」は、これまで大学病院などからの医師の派遣に頼ってきた現状を改め、いわば自前で優秀な医師を育成・確保しようという試みといえる。都立病院の新たな試みに注目したい。
「東京医師アカデミー」の大系図
勤務条件の厳しさなどによる勤務医の減少、臨床研修医制度による大学病院の人材不足に起因する医師の引き上げなどから、都立病院でも医師不足が深刻化している。
特に産科医の不足による影響は大きく、一部の病院では分娩の受け入れの休止に至っているところもあり、「都立病院改革実行プログラム」では「他の診療科でも予断を許さない状況」と危機感を募らせている。
東京都が来年度から実施する「東京医師アカデミー」は、臨床を重視し、患者本位の医療を提供する質の高い医師を育成することを目的に実施される。これまで各病院で実施してきた臨床研修を、都立病院及び公社病院全体で実施する。都では「総病床数七千二百床のスケールを生かした豊富な症例やER研修(救急研修)等をフルに活用できる」と、そのメリットを説明する。
内科、外科をはじめ産科、小児科などの、医師不足が顕著な診療科で三年から四年の専門臨床研修を実施、総合診療能力の向上などを図る「シニアレジデント」、その修了者を対象に、先端医療技術の習得などさらに二年から三年の研修を実施する「クリニカル・フェロー」を開講する。都では毎年度百名程度の「シニアレジデント」を採用、全体で三百名程度の医師を育成する考えだ。
「東京医師アカデミー」修了者は都立病院や公社病院での優先的な採用が図られるほか、そのほかの公的病院、民間病院への紹介も行うことにしている。なお、研修生の研修環境を整備するため、所属する病院の近隣に借上型の住宅を確保し、研修生をバックアップする。
また、医師や看護士の労働環境の整備も重要な要素となっているため、常勤医の勤務体制の見直しや手当の新設を行う。
特に子育て期間中の女性医師や看護師の就労を支援する必要から、二十四時間利用可能な院内保育室の充実、短時間勤務制度の活用といった制度を導入する。