薬物乱用対策を推進するため協議を続けてきた「東京都薬事審議会」(会長・石館敬三財団法人東京都結核予防会理事)はこのほど、答申をまとめ東京都に提出した。小学生から高校生に対する普及啓発をさらに充実させる啓発活動の一層の推進、規制対象外の薬物の迅速な規制化など新たな薬物への対策の充実などを行うよう都に求めている。さらに薬物依存者の社会復帰を促すため、薬物依存症に対する医療とリハビリテーションの連携を確保するなど対策の充実も求めている。東京都はこの答申を受け、今後、具体的な施策の検討を行うことにしている。
薬物乱用の現状を見ると、覚せい剤、大麻、LSD、コカイン等の乱用、不正売買が問題となっている。
薬物乱用を防止するため、覚せい剤取締法など各法令では不正売買や使用に対して罰則を設けているが、検挙総件数は近年二万件以上で推移しており、薬物に関する問題は後を絶たないのが現状だ。
このため東京都は薬事審議会に対し、今後の薬物乱用対策をより効果的に推進するため基本的な考え方について諮問を行っていた。薬事審議会では、薬物乱用の未然防止を基本的な考えとして検討を行うとともに、薬物の乱用者の社会復帰支援も視野に入れた答申をまとめている。
答申は、「普及啓発の取り組みの充実」「乱用される新たな薬物への対策の充実」「社会復帰支援策の充実」を推進することとしている。
「普及啓発の取り組みの充実」では、小学生、中学生、高校生に対して早い時期から段階的に普及啓発を実施するよう求めている。また青少年だけでなく保護者や地域の人々も普及啓発の対象とするよう求めている。またネット上で薬物乱用を助長する情報に対しては、フィルタリングの促進を求めている。
「乱用される新たな薬物への対策の充実」では、薬物の流通や使用実態についての効率的調査方法の構築や、未規制薬物の特定や生体への影響を評価するための調査手法の構築を求めた。
「社会復帰支援策の充実」では、早期発見、早期対応に向けた相談機関へのアクセス改善、家族に対する相談や支援の充実、薬物問題に関する地域社会の理解促進を求めている。