2008年11月20日号
SL-3050

●日本捜索光研株式会社 ●江戸川区北小岩 ●2007年設立 ●従業員数4名

TOKYO★世界一 (11)

SL-3050

日本捜索光研

 東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。江戸川に接する江戸川区北小岩の日本捜索光研は、自動車のヘッドライトを応用してHIDランプ仕様の携帯型サーチライトを開発。手軽に持ち運べて瞬時に強力な光を発することができることのほか、さまざまにある優れた特徴を、完成までの苦難の道のりとともにご紹介したい。

(取材/袴田宜伸)

 日本捜索光研の前身は、自動車のアフターパーツなどを製作・発売していたAZプロジェクト。HIDランプ仕様で消費電力が50Wのヘッドライトを世界で初めて開発したが、「光で困っている方のために役立てたい」と考え、その技術を自動車業界外にも応用。HIDランプを使ったプロ仕様の懐中電灯なども手がけるようになった。

 「作業現場で使われるものですから条件や要望がさまざまで、それをお客さまから直接お聞きして解決していく内に、面白さを感じるようになりました。また、お客さまが喜んでいる姿を間近で見られたことも嬉しかったです」

 日本捜索光研・代表取締役社長の東賢氏は、こうして事業の主軸を現在のサーチライト開発にシフトチェンジ。2004年からは、消費電力が50Wの携帯型サーチライト「SL-3050」の開発を始めた。

ガラス管が破裂するなど 立ちはだかった困難

 HIDランプを安定して点灯させるには安定器が必要。だが消費電力が50Wともなると高熱を発するため、安定器には耐久性が求められる。

 また、HIDランプ自体が衝撃に弱い。従って使用時のトラブルを極力少なくするためには、機器そのものの耐久性も上げる必要があった。

 さらに、従来品が35W製だったことから、50Wに対応するランプがない。そのためメーカーと共同で新たにランプを製作したが、開発途中にガラス管が破裂するなど、いろいろな問題が出てきた。

 立ちはだかるさまざまな困難。だが東氏は屈しなかった。

 「ランプの開発はメーカーと一緒に試行錯誤をし、また、安定器や機器の耐久性を上げるためには、一つずつ故障の原因をデータに取り、解消していきました」

レンズを変えることで、さまざまな照射が可能。上からワイド照射時、拡散レンズ照射時、スポット照射時(いずれも50W)


環境に優しく メンテナンスも不要

 昨年10月に完成したSL―3050は、警視庁や防衛省、消防、電力会社、JRなどで採用され、警察鑑識での足跡調査や遺留品散策、鉄道での跡見点検、レスキューによる救助活動、夜間警備、警察特殊部隊でのタクティカル用途、放送業界での照明、電力会社の送電線点検などに使われているが、そのほか工事現場などで投光器としても使用できる。

 現行のハロゲンランプ仕様の投光器(500W)は光束1万lm(ルーメン)の光を発するが、ガソリン発電機を使用するために重量が約23kgもあり、CO2や騒音を発生させる。キャブレターがつまらないように、メンテナンスも必要だ。

 対してSL-3050は光束5,200lmの光を1時間半発することができ、重さは2.5kg。リチウムイオン電池仕様でCO2や騒音も出ないため環境に優しく、メンテナンスも不要である。

 東氏は、SL-3050のさらなる特徴をこう続ける。

 「50Wから30Wにスイッチ1つで切り替えられ、その分、点灯時間を長くすることができます。また、自動車などから電源を供給すれば、一昼夜点灯させることも可能です」

 また、レンズを変更すれば赤外線ライトにもなるなど、危機管理を想定した災害対策ライトの一面もあり、テロ対策やコインパーキングにおける放置駐車の車内透過調査でも使われている。

導入先から一様に 上がる驚きの声

代表取締役社長の東(あずま)氏

代表取締役社長の東(あずま)氏

 導入先からは一様に「こんなに軽くて明るいライトがあったのか」との驚きの声が上がっているSL-3050。今月末にはより小型化・軽量化した「SL-2030」が発売され、来年1月にも新製品を発表予定と、日本捜索光研は製品開発に余念がない。東氏に今後の目標を聞いた。

 「現場の方と直接触れ合う機会が多いのですが、これからもそこで出された話を集約して改良したり、新しいライトを作ったりしていき、さまざまなシーンで貢献していきたいと思います」

 闇夜を明るく照らし出すSL-3050―それと同じようにこれからも日本捜索光研は、「故障がなく安全」なことをモットーに製品開発をし、光で困っている人の手元を照らし続けていく。

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