TOKYO★世界一 (6)
コンストラクション マネジメント
アクア
コンストラクション マネジメント ●株式会社アクア ●大阪市中央区(大阪本社)、港区東新橋(東京支店)、名古屋市東区(名古屋支店) ●1998年設立 ●従業員数48名
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。浜離宮恩賜庭園にほど近い港区東新橋にあるアクアは、欧米で生まれたVE(バリュー・エンジニアリング)提案を核とする建築・建設のマネジメント・システムを、日本の環境風土に馴染むようにアレンジ。品質の維持・向上や大幅なコストダウンを実現した、その独自性に迫る。
(取材/袴田宜伸)
建物の新築やリフォームをする時に、見積書を見ても素人目にはそれが高いか安いかがわからない。設計書通りに材料を使って工事が行われているかどうかも不透明。そのためどうしても「品質・コストに問題はないか」と穿った見方をしてしまうものである。
バブル崩壊以降、建築・建設業界は受注量の減少や技術力の低下、プロジェクトの複雑化・多様化などから、一部では実際にそうしたモラルハザードを起こし、品質が低下したりコストバランスが悪かったりする工事が行われ、問題視された。
そうした状況を憂い、立ち上がったのがアクア。代表取締役社長の山原浩氏は言う。
「建築・建設のコストや品質、スケジュールを査定・マネジメントして、発注者が金額にも品質にも満足・納得して投資できるように、崩れた建築生産を再生して安心・安全を取り戻そうと思い、スタートしました」
3万件のデータベースでコストダウンをはかる
CM方式が求められる背景
アクアが行うのは建築・建設の設計・監理業務と、それらに関するCM(コンストラクション・マネジメント)。簡単に言うと旧来、設計事務所やゼネコンが行ってきた設計から竣工までのコストマネジメントを、第三者視点で公平に行うというもの。また、CMよりも幅広い、土地の購入や維持管理もまかなうPM(プロジェクト・マネジメント)も行う。
アクアは設計図面へのVEを主体に8〜30%ものコストダウン実績を上げているが、それを支えているのは、独自に収集・蓄積した施工単価などの3万件ものデータベース。
「たとえば設計者は自分で設計しているだけに、気づかない内にコストを見失ってしまっているものです。当社の見積りと開きがある工種について、確かな根拠に基づいて指摘することで、設計者やゼネコンも納得ずくでコストダウンをはかれます」
顧客利益の最大化と満足度を追求
技術的な中立を保ちつつ、発注者のニーズに対応した方式である点もアクアのマネジメントシステムの特徴。
「発注者が何を求め、どこで困っているのかを聞き、土地購入段階など概算見積の作成から始まり、その後も工程ごとにコストマネジメントを進めて参ります。それにより工程が進んだ段階でもコストのぶれが起きにくくなるのです」
あくまで追求するのは、顧客利益の最大化と顧客満足度の向上。求められれば、見積査定のみをすることもある。
品質管理・査定の一つの基準でありたい
アクアは見積書や設計図、工法、構造の査定からスタートしたが「知恵はタダ」と見られ、なかなか利益につながらなかった時があった。世に言う姉歯事件の時には同業者と見なされ、仕事が1年間やりづらくなった。
だが、技術や理論だけにとらわれることなく、発注者に成り代わって実直に誠実にマネジメントしてきたことが花を咲かせる。
「当社のマネジメントが、どこからつつかれても何もないことをわかってもらえた時の反響は大きかった。『アクアしかない』とたくさんの応援団に支えられて参りました」
アウトソーシングや第三者機関のチェックが重要視され、より高い品質管理や物価上昇に伴うコスト削減が求められるようになったことも追い風になり、今では流通企業やデベロッパーを始めとする、20もの大手企業を顧客にもつ。その多くがリピーターである点もアクアの特徴だ。
今後の目標を山原氏は、真っ直ぐな目でこう口にした。
「建築・建設関係だけでなく、一般にも知られる存在になりたい。マンションの購入時に『アクアが品質管理・査定をした物件なら大丈夫』と言ってもらえるような、一つの基準になれればと思います」
アクアとはラテン語で水の意。これまで建築・建設業界で不透明だった業務を、水のように透明にしたいとの思いで名づけられた。
今尚、日本は「偽」の時代。アクアの活躍の場は、大いに残っている。
沿革 ※一部抜粋
1998年 |
株式会社アクアを大阪市中央区本町に設立 |
2000年 |
本社を大阪市中央区南久宝寺に移転 |
2002年 |
東京支店を千代田区神田駿河台に開設(12月に港区東新橋に移転)。名古屋支店を名古屋市東区葵に開設 |
2003年 |
本社を大阪市中央区南船場に移転 |