EASY WELDER ●合資会社ブラウニー ●埼玉県北本市 ●1977年設立
TOKYO★世界一 (5)
EASY WELDER (イージー ウエルダー)
ブラウニー
世界トップクラスの技術・技能−。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。30年以上にわたって建築・不動産などのコンサルタントを行い、400以上もの特許を出願してきたブラウニーは、培ったノウハウを活かして新たな建築用機器を製作。その機器はこれまでの常識を覆し、素材をリサイクルするために、建造物を解体することを想定して開発されたのだった。
(取材/袴田宜伸)
建築・土木業界では、さまざまな工法・技術を用いて建造物の強度を高めているが、いくら丈夫に作ってもいつかは朽ちていく。また、強度が高いことにより解体時の労力や時間は以前にも増し、素材同士の分別もしづらいためにリサイクルも難しい。そこでブラウニーの代表取締役社長・鈴木邦彦氏は考えた。
「最初から壊すことを想定して物作りをしてはどうか」
こうして1994年、解体を想定した接着工法とそれに不可欠な専用のIH機の開発がスタートした。
さまざまな用途に見合ったコイルを製作
大手接着剤メーカーらの協力を得て構想を練り、実現の目処が立った3年後からは本格的に推進。東京電機大学理工学部教授・富田英雄氏の研究室に開発を委託した。
製品化に辿り着いたのは早かったが、しかし鈴木氏はユーザーのことを思い、さらに使いやすさを追求する。
「さまざまな場面・用途に使用できるように、電源は同じで素材に当てるアプリケーター(コイル)の形状を円や楕円、T型、U型、E型などに変えるようにしたのです」
電源は大量生産で、アプリケーターは他品種少量生産。これまでの常識を覆すことに対して最初は、共同開発者たちから賛同を得られなかったが、「そうしなければ顧客満足度は得られないし、他のメーカーと仕様が同じで意味がない」と説き伏せ、ようやく2004年に専用のIH機「EASY WELDER」が完成した。
再加熱によって瞬時に簡単に剥がせる
EASY WELDERの原理はIH調理器と同じ。コイルに磁力線を発生させ、それに対向する加熱材(アルミ箔など)に渦電流を起こし200℃以上もの熱を数秒で発生させる。
それによって加熱材が接着テープを溶かし、石膏ボードや木材などを自在に張りつけられるというもので、使い方も実に簡単。アイロンをかけるようにコイルを押し当てるだけだが、EASY WELDERを用いることによってもたらされるメリットは多い。
騒音・振動が少ないことが一つ。さらに溶剤を使わないためにシックハウス症候群などの問題が起きず、釘を使わないことから表面に傷がつきにくい点も挙げられる。
そして特筆すべきは再加熱することで容易に素材を剥がせる点。鈴木氏は言う。
「一般に使われている接着剤は非常に強固で、一度張りつけると簡単には剥がせません。でもEASY WELDERで再加熱すると、接着剤がすぐに溶けます。そのためタイルでもコルクでも、簡単にすぐにきれいに解体できて、素材を再利用することも可能です。補修やリフォームなども短期間で行えますから、コストを下げることもできます」
建築・土木以外の分野にも技術を応用
EASY WELDERは大手建築メーカーでの採用が決まり、反響も上々。また、高熱を発することから水気のある場所での作業にも強く、トンネル工事を始めとする土木工事にも使われ始めている。
ブラウニーとは夢をかなえる妖精の名前。「皆様のお役に立つ黒子でありたい」との思いも込めて名づけられた。
「建築・土木用のものはある程度、完成したと言えます。今後はEASY WELDERの技術を応用し、屋根の雪を溶かしたり、瞬時に温水が出せるシステムなど、新しいものを開発していきたいです。また、次の世代に環境負荷を残さないための開発も続けていきますので、ご賛同いただける方は一緒にやりましょう」
尽きることがない鈴木氏の夢。さらなる挑戦・活躍を期待したい。
沿革 ※一部抜粋
1977年 |
株式会社ブラウニーを設立(現在は合資会社) |
1988年 |
建築・不動産のコンサル業務を行う |
1989年 |
双葉製作所と家具・建具・建築の研究開発を受託 |
1993年 |
婦人靴の製造機械の研究開発を受託 |
1994年 |
IH(高周波電磁誘導加熱)機の研究開発を開始 |
1996年 |
IH機の開発プロジェクトを結成 |
1997年 |
IH機の商品化を東京電機大学に委託 |
2004年 |
量産試作品としてIH機30台を製作。PRと市場の創出活動を開始 |
2006年 |
韓国でIHシステムの国際特許を取得 |
2007年 |
リフォーム専用のIH機が完成 |