TOKYO★世界一 (4)
Enepro21 (エネプロ)
E.I. エンジニアリング
Enepro21 ●株式会社E.I.エンジニアリング ●港区高輪(東京支社) ●2005年設立 ●従業員数12名
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。世界的にCO2の削減が叫ばれている昨今、泉岳寺など由緒ある寺社が点在する港区高輪のE.I.エンジニアリングは、エネルギー・システムのCO2排出量や消費エネルギー量をシミュレートできる、画期的なソフトウエアを開発。その優れた特徴を、苦難の道のりと共にご紹介したい。
(取材/袴田宜伸)
「今のペースのままエネルギーを使い続ければ、いつか破綻する」
―E.I.エンジニアリング・代表取締役社長の小川彰彦氏は国内外で石油化学、エネルギー・プラントのエンジニアとして活躍していた頃から、そう危惧していた。
一方でエアコンや給湯など多くの省エネ機器が各メーカーから発売されているが、それらを組み合わせて一つのエネルギー設備とした時に、どれだけのCO2削減、省エネができるかは判然としない。
そこで小川氏は「CO2削減や省エネをより効果的に進めるためにエネルギー設備全体を正しく評価できるソフトウエアを作ろう。自分の技術を活かして少しでも世の中に変革を起こしたい」と発起。長年にわたる石油化学、エネルギー・プラントの設計経験などから得た知見や技術をもとに、実現に向けて歩み始めた。
プラント全体の正確な実態把握のための再現
だが、その道のりは平坦ではなく、特に頭を悩ませたのが「エネルギー設備全体のバランスの取り方」だ。
たとえばプラント内の電力量が増えると発電用の蒸気使用量が増え、その分の蒸気を作るためにボイラーが稼働。それによって電力量がさらに増加し、蒸気量もまた変わる。
つまり各機器には関連性があり、そのバランスを取らないことにはプラント全体を正しく再現できず、従って正確なエネルギー消費量やCO2の排出量も算出できないのだ。
「正しくバランスを取るには、シミュレーションを繰り返し行うことが必要で、そのためにもいかに早く計算処理させるかに苦労しました。システムエンジニアとの緊密な連携により、なんとか作りあげることができました」
コツコツと地道に、しかし着実に進んでおよそ5年後。他に類を見ない画期的なエネルギーシミュレーション・ソフト「Enepro21」が完成した。
さまざまな条件での検討、検証が可能
Enepro21は多様なエネルギー設備において、限られたデータのもとでも新たに計器を設置しなくても、現状や実態を正確に把握できる。そしてそれにもとづき運転方法や機器構成などの設定条件をさまざまに見直すことで、利用者のニーズに合った多様なケーススタディを素早く行える。
また、シミュレーションに必要な機器性能データや環境評価データ、電力料金データも整備。特に機器性能データは各メーカーの協力のもと、通常は入手しづらい部分負荷や冷却水・外気温度などによる性能変化も取り込み、2000台近い機器の性能をデータベース化している。
「操作のしやすさに加え、見やすいグラフと詳細な帳票が素早く出力されますので、継続、反復してお使いになるとCO2削減や省エネ、省コストの検討、検証に大変役立ちます」
さらなる使いやすさと高い効果を求めて
E.I.エンジニアリングでは、本年4月にガス主体方式と電気主体方式のEnepro21 Liteを発売。8月には、より幅広いシミュレーションが可能となるEnepro21 Regularがお目見えし、近い将来、海外版も発売予定だ。
当面の導入先は設計事務所やエネルギー・コンサルタント、設備会社、工場などを想定しているが、大学でのエネルギー設備の教材としても検討中。今CO2削減と省エネの促進が世界的な至上命題であるだけに「広がりは未知数」だ。
今後は、「より多くの方々がご自分でEnepro21を活用することによって、CO2削減や省エネ・省コストの成果を着実に上げていただけるよう、バージョンアップにも努めてまいります。また、Enepro21をベースにしたPPS事業としての電力需給バランスや料金請求のソフトなども提供していきます」と小川氏。
ひいては、“省エネおこし”の舵取り役として、活躍を大いに期待したい。