Dicapplet(ディカプレット) ●アイティーコーディネート株式会社 ●港区新橋 ●2000年設立 ●従業員数20名
TOKYO★世界一 (3)
Dicapplet
(ディカプレット)
アイティーコーディネート
東京にある、世界トップクラスの技術・技能―。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。サラリーマンの街・港区新橋にあるアイティーコーディネート社は、医用用語のIME変換機能と医療情報の辞書・検索機能を融合。その大変さを知るあまり誰も手をつけなかった領域に踏み込み、誰もがほしいと願っていた医療業界の言語を統制するソフトウエアを開発したのだった。
(取材/袴田宜伸)
同じ病気でも「閉塞性血栓性血管炎」「バージャー病」「ビュルガー病」というように日英独語の病名があり、これに「D」を「ディー」「デー」と発音するような表記の「ゆれ」や、「四十肩」「糖尿病」などの通称も含めると、病名の表記は実にさまざまだ。
そして医療現場では、カルテなどに病名をどのように表記するかは、医師個人や病院ごとで異なるという。
それは医薬品名もしかり。昨今は電子カルテが普及し始めたが、これでは宝の持ち腐れである。
「コンピューターは表記が違うと、それを別の病気や薬と判断しますので、データの二次利用や保険請求ができなかったり、医療ミスも起こり得ます」と、アイティーコーディネート社、代表取締役社長の木下雅善氏は言う。
こうした状況を危惧し「安心・安全の面から、入力時に表記を統一させよう」と開発されたのが「Dicapplet(ディカプレット)」である。
ひもづけされた100万もの医用用語
Dicappletには、国で定められた標準病名や正式な医薬品名が収録されていて、ユーザーは該当するものを選ぶだけ。従って病名などは、誰が使っても同じに記載できる。
また、医用用語は一般のソフトでは正しく変換されにくいが、Dicappletでは入力や変換のミスも起こらない。
さらに特筆すべきは、収録語全てがひもづけされた多次元のデータベースである点。
「適応病名や告示名など15種類の項目が一つのキーワードから表示されます。一番大事な禁忌名も含まれていますので、副作用が起きないように正しい薬を検索し、処方をチェックすることもできるのです」
収録語数は100万にも及ぶが、それを製品化の段階で全て「最終的には目でチェックした」というのだから、その苦労は察するに余りある。
薬価差の計算システムにも導入
Dicappletがお披露目されたのは開発開始から約1年を経た2004年10月。導入先は病院や大学の医学部が主だが、医療に特化した老舗の出版社や健康保険組合にDicappletのデータやシステムがOEM供給されるなど、活躍の場を広げている。
「健康保険組合では、寄せられた医療データをチェックするほかに、今まで服用してきた薬を後発品に変えた場合の薬価差が計算できるシステムにも導入されています」
慢性的に病気を抱える人や健康保険組合にとって、少しでも負担が減ることは喜ばしいに違いない。
Dicappletは医療現場を陰から支えるだけでなく、社会貢献をも果たしているのだ。
他分野にも転用されるDicappletの技術
アイティーコーディネート社では、Dicappletの辞書機能だけを搭載した「医用辞書」を昨年3月に発売。某医療メーカーで全面採用されることがすでに決定している。
今後は「質をより高めてニーズに素早く対応し、ユーザーの満足度を高めていく」一方で、「Dicappletの技術をさまざまな分野に転用していきたい」と木下氏。
「百貨店にあらずブティックをめざす」という、ニッチ性を追求することによって生まれたDicapplet。この先、アイティーコーディネートという名のブティックには、どんな驚きの商品が居並ぶのか。今から楽しみである。
沿革 ※一部抜粋
2000年 |
医療分野に特化した研究開発(R&D)型企業として設立 |
2001年 |
WEB版電子カルテシステム「Medical doc」を製品化し、TFTペンタブレットを活用した電子カルテシステムを発表 |
2004年 |
Dicappletを製品化。モニタリングを開始 |
2005年 |
国際モダンホスピタルショーのマイクロソフト社ブースにて、Dicappletの展示およびデモンストレーションを実施 |
2007年 |
医用辞書 for MS Office IME 2007 を商品化。販売開始 |