局長に聞く
都市整備局長
只腰 憲久氏
東京都の各局が行っている事業のポイントを紹介してもらう「局長に聞く」。第4回は都市整備局長の只腰憲久氏。都市整備局の仕事は安全・快適なまちを実現するための都市基盤の整備。そのため所管する業務は土地利用、住環境整備、市街地開発、防災対策と多岐にわたる。その中から今回は、「環境軸」による都心緑化、渋谷駅周辺開発を中心に聞いた。
(聞き手/平田 邦彦)
「環境軸」による都心緑化に着手
――都心の緑化では、緑の倍増を目指すとしていますが、現在の取組状況は。
東京都の長期計画「10年後の東京」では、目標の一つに「水と緑の回廊で包まれた、美しいまち東京の復活」を掲げています。現在、その実現に向け「緑の東京10年プロジェクト」基本方針(平成19年6月策定)に沿って、さまざまな取組みを進めているところです。
緑の創出といえば、土地を買って公園にするというのが昔からの手法ですが、地価の高い都心では限界があります。そこで、これからは民間の力も借りましょうということで、例えばビルやマンションを建てる際に、容積率を割り増す代わりに、足元を緑化してもらう。これが一つ。
それから、道路と沿道開発が一体となって、「幅のあるみどり」を連続して創出しようというのが「環境軸」の推進です。これまでは、開発が行われても、道路の緑との連携がほとんどありませんでした。「環境軸」とは、それらを連動させて、緑を軸として広げていこうという取組みです。
このほど「環境軸推進計画書(案)」を公表しましたが、臨海部から皇居にかけて、環状第二号線と晴海通りを中心軸に、街路樹の充実や「広がり」「つながり」のある緑の整備を進めていく計画です。
こうした取組みを通じて、今後新たに日比谷公園6個分、約100ヘクタールの緑を創出することを目指しています。
――いつ起きてもおかしくない震災対策も重要な課題です。
地震への備えは、都政の最重要課題の一つです。関東大震災の火災旋風のイメージが強いことから、これまではどちらかといえば、燃えることへの対策、つまり不燃化の促進が重視されてきました。東京は建物の更新が早いこともあり、不燃化はかなり進んできました。そうなると次に怖いのは、地震による建物の倒壊です。東京の建物の約4分の1は震災時に倒壊する恐れがあります。地震による被害を最小限に食い止めるためには、一刻も早い建物の耐震化が必要です。
そのため、今年度から、緊急輸送道路の通行を確保できるように、全路線を対象にして、沿道建築物の耐震化助成を実施しています。また、都内マンションの耐震改修を助成するなど、建物の耐震化に取り組んでいます。
渋谷駅周辺開発が事業化
――都市再生の推進では、副都心の整備が着々と進んでいます。
これからのメインは渋谷ですね。本年6月に渋谷から新宿、池袋の3副都心をつなぐ東京メトロ副都心線が開通しました。平成24年には東急東横線との相互直通が実現し、東急東横線が地下にはいります。そうなれば、線路跡地にJR埼京線のホームを移して、山手線ホームと並列することが可能になります。
さらに、国道246側にビルを建てて既存の駅ビルを集約し、駅前スペースを拡大します。バスターミナルの再編や歩行者広場の拡充、駅施設や公共施設、駅ビルを一体的に再編整備することを目指しています。
現在、最終的な詰めを行っており、1〜2年後には都市計画を決定して、事業に着手する予定です。
――「春の小川」のモデルと言われる渋谷川の復活も計画されているようですね。
渋谷川は、東急東横線の脇を流れていますが、同線の地下化により地上が空くので、そこを活用して渋谷川を再整備します。「春の小川」の復活がイメージできるような親水空間の創出を検討しています。これを川の再生モデルとしていきたい。この大プロジェクトが、周辺にインパクトを与えて、もう一段の渋谷の進化を促すものと期待しています。
――最後に職員に求めたいことは。
役人の仕事は前例踏襲が一番楽なのですが、それでは世の中の流れについていけない。制度や規則に沿って仕事を進めるのは基本ですが、それだけでなく、頭をやわらかくして、現実に目の前にある課題をどう解決していくかが重要です。それができないのなら、役所なんていらないということになります。
計画は一旦決まると、変えることはなかなか難しいものです。しかし、その後に生じた問題をうまくコントロールしていくことも必要です。将来を見据えて、自らの仕事が世の中となじむように知恵を使うこと、また、いつまでも考えているのではなく、「いつまでに」という時間軸を念頭に置いて仕事に取り組むよう求めています。