多摩地区の水道は、市や町が整備し経営を行ってきた水道を統合してきたという特徴を持つ。
このため、施設が小規模で老朽化している、相互融通・バックアップ機能が不十分である等の課題を抱えている。
また、近年飲料水の安全性やおいしさに対するお客さまニーズや地震等自然災害への危機管理といった社会的要求が高まっている。
多摩水道改革推進本部では、こうした課題の解決と効率的で信頼性の高い水道システムの構築を目指し水道施設整備を推進している。
◆小規模浄水所の整備
多摩地区に多数ある小規模浄水所は、河川の表・伏流水や地下水など多様な水源を基に、それぞれの水質の特性を踏まえた運用を行っている。
しかし、近年では豪雨による急激な濁度上昇や、クリプトスポリジウムの指標菌が検出されるなど、水源を取り巻く環境は著しく変化してきている。
このようなことから、安全で確実な浄水処理方法を導入するとともに、自動化や遠隔制御を可能にし、運転管理が容易な施設への整備・改造を推進している。
これまでに、日向和田浄水所(青梅市)など6箇所の浄水所で膜ろ過浄水処理施設を整備し、現在、成木浄水所(青梅市)でも同様の整備を行なっている。
◆送配水施設整備
多摩地区では、約200箇所以上の浄水所や給水所等の施設により送配水を行っている。
これらは高度成長時代に設置された小規模施設が多く、施設ごとに配水区域が設定され、維持管理の効率性や区域間の相互融通が課題となっている。
そこで、配水区域を再編して施設の統合や、区域数の削減を図るとともに、管路網を整備し、合理的な広域管理体制の確立を目指している。
現在、再編に向けた拠点給水所の整備とともに、送水管の2系統化や配水本管網の強化を進めている。
◆多摩丘陵幹線の整備
管路網整備の中でも送水幹線のネットワーク化は急務であり、現在、多摩西南部を連絡する多摩丘陵幹線事業を当本部の最重要施策として取り組んでいる。
多摩丘陵幹線は、拝島ポンプ所(昭島市)から聖ヶ丘給水所(多摩市)間を結び、多摩西部から南部地域への送水能力の強化と広域的なバックアップ機能を確保する大規模送水幹線である。
全線のうち、鑓水小山給水所(八王子市)から聖ヶ丘給水所までの約12kmは第一次整備区間として、平成17年8月に通水している。
現在、拝島ポンプ所から鑓水小山給水所までの約19kmの第2次整備区間について事業を鋭意進めている。
◆運転管理の集中化
多摩地区の水道施設数は浄水所、給水所や井戸施設まで含めると500箇所以上となる。
都営統合開始時点では50箇所以上の有人施設による運転管理であったが、効率化、広域管理化(集中化)を目的として、管理場所の統合を行ってきた。
平成20年4月までに多摩水道統合管理室(立川)を含め、4集中管理室を開設した。
現在、運転管理体制をこれら4管理室に集中化するための最終段階の整備を行っている。
《おわりに》
多摩地区は都市化の進展により大きく変貌し発展しているが、多摩水道改革推進本部では、この発展を支えるため、施設整備をはじめとして各種の施策を着実に実施し、安定給水の確保に努めてきた。
また、都営一元化開始から既に35年以上が経過した現在、いよいよ委託解消が終盤にさしかかっている。
今後とも当本部は、効率的で信頼性の高い広域水道システムの構築を目標に施設整備を進め、多摩地区にふさわしい水道の実現に向け取り組んでいく。