局長に聞く
湾岸局長
斉藤 一美氏
東京都の各局が行っている事業のポイントを紹介してもらう「局長に聞く」。第2回は港湾局長の斉藤一美氏。港湾局の仕事の中心は東京港の整備と維持・管理。首都圏4千万人の生活と産業を支える東京港だが、近年は厳しい国際競争にさらされ、機能強化や港湾コストの削減が課題となっている。東京港のおかれた現状や広域連携の動き、親しみやすい水辺空間の創出などについて聞いた。
(聞き手/平田邦彦)
横浜・川崎港との広域連携がスタート
――一般都民が物流拠点としての東京港に接する機会は少ないと思います。まず、東京港の果たしている役割についてお聞かせください。
現在、国際物流の99%が海上貨物ですが、東京港の貿易高は年間約12兆円、全国シェアの約15%を占めています。多くのものが海外から入って来て都民生活を支え、また輸出によって東京の産業が支えられています。
東京港にはこうした非常にダイナミックな活動があり、誰もがどこかで東京港につながっている。このことをまず知っていただきたいですね。
港湾局としては、こうした物流機能をしっかり確保すること、これが第一の仕事だと考えています。
――アジア諸港が躍進する中、日本の国際競争力が低下しているとの指摘もあります。
日本では、かつて公共事業で全国各地にコンテナポートをつくってきましたが、いわばばら撒きで、すべてが有効に機能しているとは言えないのが現状です。一方、上海、釜山、香港などでは、投資を一つの港に集中して大きなバースをつくり、「ハブ&ポート」機能を持たせるということを、国家戦略で進めています。
日本でも、やっと3年前くらいから、アジアに負けるなと、「スーパー中枢港湾」を言い出してきましたが、投資規模自体は昔とあまり変わっていないのが実情です。私は、日本全体の物流体系を国際的な流れの中で考え直し、3大湾(東京、名古屋、阪神)にさらに投資を集中することがいま必要だと思っています。
――横浜港、川崎港との広域連携も始まっているそうですね。
横浜港は長年のライバルで、それこそ10年前はお互いに貨物や航路を奪い合っていました。しかし、アジア諸港との競争を考えると、とても対抗している場合ではないということで、本年3月、東京都、川崎市、横浜市が包括的な広域連携で基本合意しました。こうした動きを議会サイドから支えていこうと、9月18日には都議会、神奈川県議会、横浜・川崎市議会が超党派で議員連盟も立ち上げました。
今後、業界の方とも協議しながら、入港料の一元化をはじめ、具体的な改革を進め、世界にその存在感をしっかり示していきたいと考えています。
豊かな水辺空間や環境にも配慮
――東京港のもう一つの側面として、豊かな水辺空間の形成があると思います。
東京港には、現在、運河が約60kmあります。江戸時代には荷物を運んだり、水辺で涼んだりと住民生活と密接に結びついていました。しかし陸上輸送が主流となり運河の利用が減ったほか、開発により、運河に背を向けたビルが建てられるなど、魅力ある空間とは言えなくなってきたのが実態です。そこで、東京都では運河を親水性のある都市空間として再生する「運河ルネッサンス」事業を進めているところです。
具体的には切り立った堤防を緩傾斜型の堤防にして遊歩道を設置したり、水域占用許可を規制緩和して水面に建築物を作れるようにしたりと、さまざまな取組みを展開しているところです。
規制緩和によって建設された天王洲の「水上レストラン」では結婚式をあげたあと、そのままクルーズに出られるため、人気があるようですよ。
――防災、環境面での取組みはいかがですか。
震災が発生すると、陸上交通がマヒする可能性が高く、海上を利用した輸送路の確保が重要となります。
耐震強化岸壁を整備することで、貨物の輸送をしっかり支える、これが基本となります。そうすることで、帰宅困難者が海上交通を使って帰ることも可能となりますので、安心を培うという意味でもしっかりやっていきたい。
また、環境面では、お台場海浜公園でカキを利用した浄化実験を進めています。現在、足をつけられるレベルにはなりましたが、泳ぐまでにはなっておらず、今後も続けていきます。
さらにオリンピック・パラリンピック招致に向け、港の環境対策として、陸上からの電源供給による船舶のアイドリングストップや、広い空間を生かした太陽光発電など自然エネルギーの活用にも取組んでいく考えです。