2008年8月20日号
民族絶滅の危機をもはらむ
「鳥インフルエンザ」の脅威1
猛スピードで変異するインフルエンザ・ウィルスとは

 鳥インフルエンザの脅威が伝えられて久しいが、その対策とか、国民的関心となると、心もとない。

 今号から3回にわたって、この問題の深刻さと、そのために個人レベルで出来る対応策を考えて行きたい。

(取材/平田 邦彦)


鳥インフルエンザは人から人へ感染するのか

 H5N1型鳥インフルエンザが進化して、やがて人間にも感染する新種のウィルスとなるだろうと言われている。それが一体どんなことなのか、まずその辺りからご紹介しよう。

 これまで発生したH5N1型鳥インフルエンザは極めて毒性が高く、発症したらほぼ60%が死亡する恐ろしい病気だが、幸いまだ人から人への感染が爆発的に起きる(その現象を「パンデミック」、大流行と呼ぶ)状態にはなっていない。

 しかし、インドネシアでは既に100人を超える死者が出ているし、人から人への感染が確認された例も少なくは無い。

 H5N1型鳥インフルエンザにかかった鶏を食べたトラ数頭が、80頭に及ぶトラを死亡させたタイの事例に見るように、既に哺乳動物間の伝染は確認されてもいる。

 パンデミックの事例は、1918年から20年にかけて、世界で恐らく1億人が死んだとされる、スペイン風邪(日本でも45万人が死んでいる)に見ることが出来る。

 ここで注意すべきは、インフルエンザとは、普通の風邪とはまったく異なるものだと言うことだ。

 インフルエンザ・ウィルスは、日々猛烈なスピードで変質する中で、変異を繰り返している。これまでの薬剤がまったく効かない新種が続々と生まれているし、今後もそれは続くことが明らかだ。

 スペイン風邪の折には、埋葬が間に合わず、氷河に埋めたアラスカの例を見るように、仮にこれが日本で発生したなら、葬式を出して焼き場で骨にするなどという悠長なことはとても出来ない。

 強烈な伝播力を持つこのウィルスは、り患後発症まで3〜4日の潜伏期間を持つが、その間に排菌する厄介な性格が明らかにされている。本人は軽い咳をする程度で、高熱を発することもなく、重篤な病気を抱えているとの自覚症状はない。

 しかしこの期間に振りまかれたウィルスは、恐ろしい伝播力で広がり続ける。周囲の人間に耐性はないから、容易に感染する。

 発症して救急車を呼んでも、その運転手がり患している場合があるし、タクシーだって、電車だって同じことが予測される。病院の医師、看護士も例外ではないから、運良く病院にたどり着いても、放置される危険を否定できない。

 仮に違う理由で病院に行っても、鳥インフルエンザの患者だらけとなれば、病院がり患の発生源ともなるのだ。


新型ウィルスに対応するワクチンの製造は可能か

 厚生労働省は、新種の鳥インフルエンザ発生時の感染者は、最大人口の25%、3200万人。死亡率は2%、最大64万人が死亡すると予測しているが、オーストラリアのロウィー研究所は、全世界での死亡者総数を1億4200万人、その内、日本は210万人としている。スペイン風邪の例から見ても、厚生労働省の予測は甘すぎるとの批判も一部にはあるようだ。

 鳥インフルエンザが、これまで発生してきた多くのウィルス性病原菌と一番異なることは、前述したように、発症以前に排菌することと、年齢が高い人よりも、身体の活性が高い若年層の死亡者が多いと予測されていることだ。

 そして高齢者の場合は、命は助かっても、脳に重篤な影響が残り、おそらくは認知症となると見られている。

 しかし、現在のような高速大量の人口移動が行われている社会にあっては、どんな結果になるかがまるで予測が出来ない。

 いたずらに恐怖心を煽る意図は全く無いが、交雑を繰り返すこのウィルスは、時間の経過とともに、耐性を強めて、誰にもコントロール出来ない、モンスターのような存在となる可能性に満ちている。

 そんなウィルスが爆発的に増えたら、耐性を持たない人々がどうなるかは説明を要するまでもない。

 人に感染した鳥インフルエンザは既に385件を数えるが、その内243人が死亡している。しかもその感染者の内には、鳥との接触履歴が無いにもかかわらず、発症している事例が現れている。

 明らかに人から人への感染が始まっていることの証左に他ならないのだ。

 それではこれに対応するワクチンはとなると、残念ながら発症しないと作れないから、新たに発生する新型ウィルスを的確にやっつけることは出来ない。

 せめてインフルエンザ・ウィルスの増殖を遅くすることが期待されているタミフルの備蓄を進める一方で、過去の感染者の血液から作られた、プレ・パンデミック・ワクチンの備蓄を進める程度しか備える術がない。

 しかも新型ウィルスに対応するパンデミック・ワクチンの製造には最低でも6カ月かかるとされているから、パンデミックが起きた段階で投与することはほとんど不可能と理解すべきだろう。

 要するに我々は丸腰で、機関銃の連射の前に身を晒すこととなることをご理解いただきたいのだ。

 次号以降で、現状進められている対策、そして家庭で出来る備えについて明らかにして行きたい。

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