局長に聞く
建設局長
道家 孝行氏
東京都の各局が行っている事業のポイントを紹介してもらうシリーズ「局長に聞く」。初回は建設局長の道家孝行氏。建設局の仕事は道路、河川、公園の整備と維持管理だが、いずれも災害に強く、快適で住みやすい都市の形成にとって欠かすことのできない事業だ。街路樹の整備、都市型水害対策、環状道路整備について、その目的と現状について聞いた。
(聞き手/平田 邦彦)
都民の参加も得て街路樹を倍増
――街路樹は都民にとって最も身近な緑です。もっと増やしてほしいという要望も大きいと思いますが。
東京都はいま、「十年後の東京」(オリンピック招致を目指している2016年を達成年次とした東京都の長期計画)で都内の街路樹を10年間で48万本から100万本に倍増しようと、さまざまな事業を推進しているところです。
そして、この取組みに都民のみなさんにも直接参加してもらおうと考えたのが、「マイ・ツリー〜わたしの木〜」事業です。これは都民に街路樹を寄附していただこうというもので、そのお返しとして、木の種類を示す樹名プレートに寄附者のお名前とともに思い出などのメッセージを書き込んで設置します。
今年は5月から中木(1本1万円)を1000本、高木(同5万円)を100本募集していますが、非常に好評で、高木はすでに募集本数を超える200本余りの申込みが来ています。中木も500本を超えており、こちらは目標を達成するため懸命に取り組んでいます。
都民の気持ちをいただこうという事業にこれだけ関心が集まるのは、たいへんありがたい話で、来年以降も続けていきたいと考えています。
――さる8月5日の集中豪雨で、下水道工事の作業員が亡くなるなど、各地で豪雨による痛ましい事故が発生しており、豪雨の怖さを改めて認識しています。こうした事故を無くすとともに、水害を解消する治水対策を着実に進めていかなくてはなりません。
東京都では、それぞれの役割分担のもとに、建設局が河川の整備を、下水道局が雨水対策としての下水道を整備し、水害の解消に努めています。
このうち河川の整備としては、これまで川幅の拡大や道路下に分水路(バイパス)を設置し、洪水を安全に下流に流すという取組みを進めてきました。さらに、こうした河川の整備にはさまざまな困難があり長期間を要するため、河川の洪水を取込んで一時貯留し、下流の負荷を軽減する調節池を各地に建設してきたところです。
調節池の一番大きなものは、環七通りの地下を利用して設置した神田川環七地下調節池で、ここには神田川、善福寺川、妙正寺川の洪水54万m³、小学校の25mプール1800杯分を貯留することができます。
また、古川では、道路下ではなく河川の下にトンネルを掘り、調節池を建設する取組みを進めているところです。なぜ、地下に調節池を設置するかというと、古川の両岸には連続してビルが建っているほか、首都高の橋脚などが支障となり、河川を拡げることが困難だからです。
今年度中に着工し、平成27年度の完成を目指しています。小学校プール450杯分を貯めることができ、これにより、治水安全度が大幅に高まるものと考えています。
待ったなしの渋滞解消
――道路整備では、環状線の整備に力を入れているようですが。
先日のタンクローリーによる火災事故では、首都高中央環状線が通行止めになり、大渋滞を引き起こしました。裏を返せば、大都市における環状道路の果たしている機能がいかに大きいかが分かると思います。
都心の首都高中央環状、15キロ圏の外環道、50キロ圏の圏央道、これらがいわゆる「首都圏3環状」ですが、全体の整備率は43%にとどまっています。これに対して、ロンドンは100%、パリ、北京、ソウルなども90%を超えています。それだけ、首都といいながら、東京の環状道路の整備は遅れているのです。環状線がないと、用がなくても都心を通らざるを得ません。
現在、都心を通る約4割が通過交通といわれ、それが渋滞の原因となっています。そのため東京都では、3環状道路建設を最重要課題として取り組んでいるところです。
首都高中央環状については、昨年暮れに新宿までが開通し、渋谷までは平成21年度に完成する予定です。ここまでは首都高の単独事業として建設が進められてきましたが、その先の品川線については、ネットワーク効果をできるだけ早期に発揮させることが必要との判断から、現在、首都高速道路(株)と東京都の合併施行(約2千億円ずつの負担)により、建設を進めているところです。
品川線の完成は25年度予定ですが、これができると、新宿〜羽田空港間が現行の40分から20分に短縮されるほか、環境への負荷も低減され、整備効果は非常に大きいと考えています。
事業の詳細図面等