連続立体交差事業を推進し
東京の活力と魅力の向上を
建設局道路建設部
鉄道関連事業課長
荒井 俊之
【社会問題化する踏切】
現在、都内には約千百六十ヵ所の踏切があり、そのうち約四分の一がピーク時に四十分/時以上閉まっている、いわゆる「開かずの踏切」である。
この「開かずの踏切」は、全国の約四七%が東京に集中しており、東京の慢性的な交通渋滞の原因となり、都民の日常生活や企業活動に時間的・経済的損失を与えるばかりでなく、排出ガスの増加などによる環境悪化を招いている。
東京都は、平成十八年十二月に「十年後の東京」を発表し、三環状道路の整備等により、東京の最大の弱点である渋滞を解消し、国際競争力を高めるとともに、交通インフラのゆとりを活かし、快適で利便性の高い都市を実現するとした。これを受け、鉄道の連続立体交差事業についても、積極的に推進することとしている。
【効果の高い連続立体交差事業】
東京都では、このような都市活動を阻害している踏切を除却するため、道路と鉄道との立体化を進めている。なかでも、道路と交差している鉄道を一定区間連続して高架化または地下化する連続立体交差事業は、都市の再生や活性化を図るうえで極めて効果の高い事業である。
事業効果としては、第一に、数多くの踏切を同時に除却するため、交通渋滞や踏切事故が一挙に解消できる。第二に、鉄道により分断されている市街地の一体化を図ることができ、市街地再開発事業や土地区画整理事業などと組み合わせることにより、総合的な街づくりが推進される。第三に、立体化により新たに生み出される鉄道空間を、周辺土地利用計画にあわせて駐輸場や公園にするなど多目的に利用できる、などがあげられる。
このように、連続立体交差事業は、交通問題の解消だけでなく、沿線自治体が進める街づくりと連携し、事業効果をより高めることができる。さらに、鉄道事業者が行う複々線化などの線増事業を同時に行うことによって、輸送力の大幅な増強が図られるなど、その事業効果は極めて大きく、広範囲にわたる。
【事業の課題と取組】
連続立体交差事業は、地元の期待も大きく、効果の高い事業である反面、実施にあたって大きな課題もある。
第一に、事業費の確保である。事業には多大な費用を要することから、沿線自治体をはじめ近年の厳しい財政状況のなかでの財政負担が大きく、財源の確保が課題となっている。これに対しては、国庫補助金の必要額の確保を図るとともに、鉄道事業者の協力を得て、施工におけるプレキャスト化など新技術の導入や仮線工事でのレールや枕木等の再利用などによるコスト縮減に努めている。
第二に、事業効果の早期発現である。在来線を切り替える仮線方式では、あらかじめ一定区間連続した用地の確保が必要となる。また、電車を運行しながらの工事のため、工種によっては作業時間帯が夜間に制約されるなど、事業の完成までに長期間を要することが多い。これに対しては、京浜急行線における直接高架工法の採用や土地収用制度の積極的な活用による用地取得の促進など、可能な限り事業期間の短縮に努めている。
【着実な事業の推進】
連続立体交差事業は、交通渋滞の解消や街づくりの推進などの面で非常に効果が高いものの、多くの費用と期間を要することから、今後とも計画的かつ効果的に事業を実施していく必要がある。
このため、東京都では、平成十六年六月に、踏切対策の基本的な考え方を示した「踏切対策基本方針」を策定し、鉄道立体化をより計画的・効果的に実施するとともに、鉄道立体化以外の対策も併せて総合的に踏切対策を実施することとした。
これに基づき、連続立体交差事業については、現在実施中の八路線十ヵ所の連続立体交差事業を着実に推進するとともに、平成二十年度には、新たに二ヵ所で新規着工準備採択を要望しているところである。
連続立体交差事業は、東京都が事業主体となり、道路整備の一環として「ガソリン税・自動車重量税」の財源をもとに、国土交通省の国庫補助により実施する都市計画事業である。
東京都は、今後とも財源の確保に努めるとともに、地元自治体や鉄道事業者など関係機関との連携を密にし、地元住民の理解と協力を得て、東京の活力と魅力を高めることに寄与する連続立体交差事業を着実に推進していく。