東京都は平成十八年十二月、東京の近未来像として目指すべき姿を示す「十年後の東京」を策定した。この中で、最先端の省エネルギー技術などを駆使して、世界で最も環境負荷の少ない都市の実現を目指し、東京全体で「カーボンマイナス東京十年プロジェクト」を推進することとした。これは、2020年までに2000年比で二五%の温室効果ガス削減を目標としている。今回は、このプロジェクトの内容に沿って、民間と連携し、温室効果ガスの削減に向け、さまざまな事業を推進している下水道局の取り組みについて紹介したい。
下水道局では、下水処理、雨水排除などの過程で、約九五万二千トン・CO2(平成十七年度実績)の温室効果ガスを排出している。排出要因は、下水処理過程などでの電力消費、汚泥焼却に伴う一酸化二窒素(二酸化炭素の三百十倍の温室効果をもつガス)が約七五%を占めている。そこで、これらの対策を中心に取り組むことにより、効果的な温室効果ガスの排出削減を図る。
【汚泥焼却での温室効果ガス削減】
従来は、汚泥焼却温度の高温化(八百五十℃)施策を推進してきたが、今後は、一層の削減を目指し、汚泥炭化施設の稼動、汚泥ガス化施設の事業化に着手する。
炭化施設は、汚泥から炭化物を製造する過程で、温室効果ガスを大幅に削減できるとともに、炭化物を火力発電所の代替燃料に活用することで汚泥の資源化率の向上にも寄与する。
ガス化施設は、汚泥中の可燃分を低酸素状態で燃料ガスに改質し、発電に使用(自己消費電力に充当)することで炭化以上に温室効果ガスの削減が可能となる。
【下水道システム全体の省エネルギーシステムへの転換】
下水道局での電力消費量の約四〇%は、水処理過程のばっ気システム、汚泥処理過程の濃縮・脱水設備に起因している。そこで下水道局では、これらの省エネルギー化に向けた取り組みをいっそう強化する方針だ。
ばっ気システムでは、従来の機器単体のみではなく、送風機・送風管・散気装置などシステム全体での省エネルギー化を民間と連携し積極的に推進する。こうした取り組みにより約三〇%の温室効果ガスの削減を目指す。
濃縮・脱水設備は、電力消費量の大きい遠心型から、民間と共同開発した電力消費量が小さくLCCの縮減が可能な低動力型(ハニカム濃縮機など)への転換を図る。これによる温室効果ガスの削減目標は約五〇%だ。