2008年7月20日号
鳥瞰 「路面電車の復活を考えよう」
東京を狭くて、使い勝手の良い都市に

 東京の街から都電の大半が消えてから久しい。遅いし、道路混雑の元凶とされ、折から台頭したモータリゼーションの波に打ち勝てず、邪魔者は消えろとばかりに、僅かひとつの路線を残して消えてしまったのはご存知の通りだ。

 昭和42年から47年に掛けて35系統181kmの都電が廃止されたそうだが、その後の地下鉄の発展によって、確かに利便性は向上したし、首都圏そのものを拡大させる効果が生まれた。

 しかし永年東京に住まう者としては、必要以上に東京を大きくしたことに何の意味があったのかを改めて考えさせられる。

 東京の拡大は益々東京一極集中を促進し、国防上でも災害対策でも、極めて脆弱な都市作りを推進したことに他ならないのではなかろうか。

 年々進む足萎えの身としては、あの地下鉄の果てしない階段は、出掛けるのを躊躇わせるのに十分だし、足腰の鍛錬になると言われても、限度を超えている。

 昨年欧州に行く機会を得て、久々に路面電車が走る姿に接した。

 チューリッヒの道路では、タクシー以外の車の乗り入れが規制され、その分広々とした歩道にはベンチが横向きに置かれ、見上げるような大木の街路樹が陰を作っている。

 買い物をする人々が行き交う姿をベンチに座って見入るだけで、限りないくつろぎを与えてくれた。そこに暮らす人々にとっても、路面電車で立派に利便性が確保されている。

 東京だってやれば出来る。それも従来のように道路の中央に走らせるのではなく、むしろ路肩に寄せて線路を敷設すれば、乗客の安全性、利便性はもっと向上するし、不法駐車対策ともなる。

 路面電車を失ってほぼ40年。ぼちぼちCO2問題も含めて見直しても良い時代に入っていることに、目覚めようではないか。

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