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おじゃりやれ八丈島へ
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東京都八丈支庁
土木課長 直井恒雄
少し前になりますが、八丈島の方言が消滅の危機にあるとのユネスコの調査結果が公表されました。確かに若い人たちの間からは、八丈言葉が消えつつあるようなことを耳にします。しかし、いろいろなところで八丈島の方々とお話しをしていると、八丈言葉はまだまだ健在のようにも思えます。
さて、表題の「おじゃりやれ」は、その八丈言葉で「いらっしゃい」とか「おいでなさい」という意味です。遠くて近い南の島「八丈島」へ、皆様にぜひ一度おいでいただきたいという思いを込めて「おじゃりやれ八丈島へ」。
遠くて近い南の島の基盤整備
羽田空港からジェット機で45分、南へ約300㎞の太平洋上に亜熱帯の島「八丈島」がある。八丈支庁は、この八丈島と、日本一小さな自治体として有名な青ヶ島、そして八丈小島や鳥島等の無人島の計7島を所管している。
八丈島や青ヶ島は、南の島の豊かな自然に恵まれているが、人々の暮らしは、厳しい気象・海象条件や、本土から隔絶している地理的条件などにより、さまざさな不便さを余儀なくされている。このため、島に暮らす人々の生活の安定、観光等の地域産業の振興等を図る上で、道路、河川、公園などの基盤施設の整備とその維持・保全は、欠かすことのできないものとなっている。
【道路の整備】
八丈島では、離島には珍しい都市計画道路(計画総延長7350m)の整備が行われている。
本路線は、八丈島の空の玄関口である「八丈島空港」と、物流を支える海の玄関口である東の「底土港」・西の「八重根港」を結ぶ街路として昭和54年に都市計画決定され、空港道路と接続して暫定形ではあるが平成18年5月に全線開通した。現在、この空港道路部分について、拡幅整備を進めている。この道路の特徴は、幅9mの車道の両側に4・5mずつの広い歩道を持ち、ビロウヤシやハイビスカスなどの植裁や島内産の石を利用した歩道舗装等、南国情緒を演出する工夫が随所になされている点である。
また、町の公共施設や人口が集中している坂下地域(三根、大賀郷)を横断する都道第216号線の車道拡幅と歩道設置を目的とした道路整備事業、島を周回する都道第215号線の馬路、抜船、樫立、八丈高校前などで線形改良、歩道設置等の事業などを進めている。
なお、今春、八丈町の長年の要望を踏まえ町道八重根護神線を都道に編入したところであり、今後、本路線の整備が重要な課題となっている。
青ヶ島では、都道循環線において、外輪山の内側に位置する金土ヶ平地区の道路改良が平成20年度に完成した。今後は、同循環線の中原地区について道路の改良を行っていく。
【河川・海岸の整備】
八丈島は、急峻な地形や年間3000㎜にも達する国内有数の降雨量などにより、これまで多くの土石流や斜面崩壊等による被害を受けてきた。
このため、8河川を砂防指定して流路や砂防ダムの整備を進めており、現在は、小骨ヶ洞と三原川において砂防ダムや流路整備等の対策工事を実施しているところである。
一方、台風や季節風などに伴う波浪等からの危険を回避するため、5カ所の海岸保全区域を定め、護岸等の海岸保全施設の整備を進めてきた。現在、垂戸海岸の津波や高潮対策に向けた整備の検討を進めており、今年度から工事に着手することとしている。
八丈島を彩る自然公園施設
【自然公園の整備】
青ヶ島を除く伊豆諸島は、自然公園法に基づき昭和30年4月に伊豆七島国定公園に指定され、さらに昭和39年4月に富士箱根伊豆国立公園へ編入された。自然公園法に基づく特別保護地区、特別地域の指定は支庁管内面積の75%、約5500に及び、雄大な自然を保護するのに役立っている。
また、八丈支庁では、島民や来訪者の方々に八丈島の自然に親しんでいただけるよう園地等の整備も行っており、これまでに底土、南原、大潟浦、登龍の各園地を整備してきた。現在は、芝生の多目的広場をメインとする大賀郷園地の整備に力を入れているところである。
夏場、多くの海水浴客で賑わう底土園地や、八丈の雄大な風景が前面に広がる南原、大潟園地等々、八丈島を訪れた際には、それぞれの魅力を秘めた園地をぜひ散策していただきたい。
そして、大賀郷園地の隣には、あの懐かしい「八丈島のキョン」が飼育されている都立八丈植物公園がある。そしてこの4月、この公園の一部に、八丈島で初めての大型遊具が整備され、ローラー滑り台やロープウェイ等で連日子供たちの賑やかな声が聞かれる。
【施設の維持管理と災害防除】
八丈島にとって、施設の整備とともに、離島特有の厳しい気象条件や塩害等に対し、施設を良好な状態に保ち長期に活用していくための維持管理や保全も重要である。
坂下地域と坂上地域(樫立、中之郷、末吉)を結ぶ横間道路は、連続した橋梁とトンネル・洞門から構成されており、工事着手から20年以上経過し、構造物の劣化が危惧される時期に来ている。このため、これまでにトンネル部分の補修・補強を終えたほか、現在、橋梁の耐久性を向上させる工事を行っているところである。
また、急峻な地形の多い八丈島や青ヶ島では、がけ崩れや落石等により都道が遮断されると、集落が孤立化し人命にも危険が及ぶ状況に陥りかねない。
このため支庁では、こうした災害を未然に防止するための道路災害防除事業にも力を入れており、現在、八丈島の末吉地区や青ヶ島の都道循環線上手回りにおいて法面の安定を図るための工事を実施している。