ウェルビーイングな社会を、
品川から築いていきたい。

品川区長 森澤 恭子さん
長女出産後、企業の正社員を辞めて夫の海外赴任先に帯同。帰国後、再就職を望むも0歳と2歳の子どもを抱えての就活は困難を極めた。自身の子育てを通して問題意識を持ち、東京都議会議員に。現在は区長として品川区を牽引する森澤恭子品川区長にお話を伺った。
女性や子育て世代の声を 政策決定の場に届けたい。
—品川区の特徴と魅力、またお気に入りのスポットを教えていただけますか。
森澤 新旧が融合した街というのが品川区の特徴を表していると思います。
例えば、戸越銀座など人情味あふれる100近い商店街や、旧東海道など歴史ある街並み、日本考古学発祥の地ともいわれる「大森貝塚」、若かりし頃の坂本龍馬が黒船・ペリー来航時に江戸警固のために守備についたといわれる立会川周辺、そして明治の元勲・伊藤博文の墓地など、多くの歴史的資源があります。また、神社のお祭りや地域のイベントも盛んで、実際にお住まいになっている方からは「新しい街かと思ったら、歴史とか文化を大切にしているんですね」という声もいただいています。
産業分野では古くから製造業が集積していて、ソニー発祥の地としても有名ですが、近年は、IT企業やAI等の分野のスタートアップ企業が大崎・五反田エリアでたくさん誕生しています。「五反田バレー」と呼ばれていますが、もともとものづくりの土壌がある地域なんだと思います。
—昨年、屋形船や観光船で巡る「しながわクルーズ」や「京浜運河クルーズ」といった舟運事業をスタートされました。
森澤 はい、アートと先進的な街並みの天王洲や京浜エリア、桜で有名な目黒川などの水辺空間も品川区の大きな財産の一つだと思っています。目黒川は冬の桜ということで、冬季はイルミネーションで飾ったりしているんですよ。さらに、花火イベント等によって水辺の魅力向上、にぎわい創出に取り組んでいます。
インフラに関しては、リニアが品川駅を発着し、名古屋まで最短40分、いずれ大阪まで延びれば品川駅から67分で到着することになります。とはいえ、品川駅は実は品川区ではなくて港区、目黒駅は品川区です(笑)。
—政治家を目指そうと思ったきっかけは?
森澤 大学の卒業論文のテーマが「少子化を通して考えるこれからの日本のあり方」でした。ジェンダーギャップに対する問題意識とともに「子育ては家庭のみならず、国や地域が責任をもって支えていくべきだ」という主張を展開していて、最近読み返して、当時から考えが変わっていないことに自分でも驚きました。
都議会議員に挑戦した大きな理由は、私自身が子育てを通して改めて問題意識を持ったからです。長女出産後、夫の仕事の都合でシンガポールに行くことになり、企業の正社員を辞めて帯同したのですが、帰国後の再就職は苦労しました。当時、子どもは0歳と2歳。フルタイムの仕事に就くことは難しく、なんとか再就職先を確保することはできたものの、保育園探しがまた大変で、結局2人の子どもをそれぞれ違う保育園に預けて仕事を再開しました。子育てをしながら仕事をするのは本当に難しいと実感しました。
その根本原因は、政策決定の場に女性や子育て世代が少ないことにある、彼らの声が届いていないから課題が課題のまま残っていると考え、それであれば私が立候補しようと思ったんです。

「目黒川の桜をゆっくり楽しむなら、断然、品川区」と森澤区長

保育・給食・医療の無償化、オムツの宅配など子育てを積極的に支援
23区では女性区長が7人になり、希望が持てる状況が生まれつつある。
—子育てと仕事の両立に苦労されたご経験が、0歳児の見守りや子育てサポート「見守りおむつ定期便」などの施策に生かされていると思います。
森澤 子育て家庭へのアウトリーチ支援は、都議時代から取り組んできた課題です。品川区はマンションの供給が進み、転入者も多く、子育て世代を中心に人口が増加傾向にあり、41万人に達しました。これは同時に、ご近所とのつながりがつくりにくいといった、都心ならではの課題である孤独な子育てにつながります。
そこで令和5年10月にスタートしたのが、「見守りおむつ定期便」です。この事業の目的は、各家庭におむつを届けることにより、子育てにかかる経済的な負担を軽減するだけでなく、緩やかな見守りを定期的に行うことで、児童虐待や親の孤独・孤立を防ぐことでもあるんですね。
私自身が、今なお子育て中の現役世代です。子育てをしてきた経験や実感から求められる政策を肌感覚で理解することができる首長として、これからも積極的に施策に反映していきたいと思っています。
—女性の首長や都議が増えていますが、女性の政治参画についてどうお考えですか。
森澤 世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2024」によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位で、G7で最下位です。特に深刻なのが、経済と政治分野で、女性の賃金格差、管理職比率、政治参加などの評価が低い。
品川区では、「品川区ジェンダー平等と性の多様性を尊重し合う社会を実現するための条例」を定め、すべての人が性別や性的指向、ジェダーアイデンティティにかかわらず、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指していますが、SDGsの目標の一つ「ジェンダー平等」という文言を条例名に冠した条例は都内初であり、全国でも2例目です。また、条例では、ジェンダーギャップ指数が低い状況を踏まえて、基本理念に「女性のエンパワーメント」を盛り込みました。
昨年行われた国政選挙でも、国会議員の女性比率は少ないながらも増えてきている印象がありますが、女性首長となると47都道府県で2人、市区町村では3・9%とまだまだ圧倒的に少ないです。東京都の場合は小池知事がいらっしゃって、女性がリーダーになることに一定の理解が培われていることなどもあり、23区では女性区長が7人になり、希望が持てる状況が生まれつつあります。
課題を感じている女性首長が徐々に増えることで、少しずつ子育て支援にスポットライトが当たるようになってきましたが、まだまだ子育て世代の声が届いているとはいえず、課題が課題のまま残っているものも少なくないと感じます。
様々なバックグラウドを持つ女性がリーダーになることで、また後に続く女性が出てくる。その好循環で女性の政治参画が進み、多様な視点が政策に反映されることで、より良い社会へとつながっているのではないかと思っています。

アートの街として注目を集める天王洲エリアの夜景
区民の不満や不安といった「不」を取り除き、未来に希望の持てる社会をつくりたい。
—区長に就任して一番やりがいを感じるのはどんな時ですか。
森澤 区長就任以来、国や他自治体に先駆けて、「人が自分らしく暮らしていくうえで不可欠な生活の基礎となる行政サービスを所得制限なくすべての人に提供する」取組を進めてきました。
子育て期では、保育、医療、学校給食といった「子育て3つの無償化」を令和5年度に実施。今年度は学校の授業で必ず使用する学用品についても、所得制限なく無償化しました。また、令和7年度には中学校の制服や修学旅行についても所得制限なく無償化するほか、所得制限のない給付型大学奨学金を創設する予定です。
高齢者については、インフルエンザ予防接種費用や救急安否確認システムを、こちらも所得制限なく無償化したほか、補聴器購入費用助成の所得制限を撤廃するなど、すべての高齢者が安心して暮らしていけるよう、施策を進めてきました。また、終活支援サービスや認知症高齢者のGPS端末機について所得制限なく無償化するほか、入院中の紙おむつ代助成や家具転倒防止器具設置助成の所得制限を撤廃します。
こうした取組が区民の感謝の声につながっているのだと思いますが、実際、子育て中の家庭や子どもたちから、「ありがとう」や「助かります」という声を直接いただくんですよ。子育て世帯に限らず、区民の方からそのような声を寄せられるととても励みになりますし、「区長をやっていて良かった」「頑張ろう」と思えます。
区民の不満や不安といった「不」を取り除き、未来に希望の持てる社会をつくるため、これからもこれらの取組をさらに加速化していきたいと思っています。
—区政を担う上で大切にしていることは?
森澤 区長に就任して以来、一貫して掲げてきたことは、「誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていけるしながわ」です。区民一人ひとりの思いに寄り添い、「区民の幸福(しあわせ)」、すなわちウェルビーイングの視点から施策を展開していく、ということを特に意識しています。
今の日本社会は、世界でも類を見ないほどのスピードで人口減少と少子高齢化が進行しています。生産年齢人口の減少による労働力不足が予測されるほか、持続的な経済成長はもとより、現在の医療、介護、年金などの社会保障システムを維持することすら難しい状況にあります。
世界規模で世の中が急激かつ急速に変化し、先が見づらい、未来の予測が極めて困難な時代へ突入しています。こうした時代に、人々が未来に希望を持てる社会をつくるために、品川区としてどんな社会を築いていくのか。これが今、区長である私に問われていることだと思います。
昨年12月のウェルビーイング学会の調査によると、人々の幸福度を向上させる最も重要な要素は「人生の選択の自由度」と「最低生活費の確保」とのことです。どんな立場や境遇にあっても選択が制限されず、自分の望むように生きられる社会、誰かを助けるのではなく、誰もが安心できる社会を築くための政策を展開してきました。その結果、令和5年度に実施した区民アンケートでは78・2%だった幸福度が、今年度の世論調査では86・1%と7・9ポイント上昇したところです。
ウェルビーイングな社会を、ここ品川から築いていく。そういう強い決意を持って区政を一歩一歩前に進めていきます。

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