選挙管理委員会事務局長 川上秀一氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は選挙管理委員会事務局の川上秀一氏。史上最高の56名が立候補し、ポスターの内容で議論が起きた昨年の知事選、選挙啓発などについてお話を伺った。
円滑な選挙執行が使命

選挙管理委員会事務局長 川上秀一氏
公選法の改正動向に注視
—昨年は知事選、都議補選、衆院選と大きな選挙が続きました。振り返っての感想は。
昨年は、東京都知事の任期満了による選挙は見込まれていましたが、衆議院の解散により、二つの大きな選挙に対応することとなり、公正・公平かつ適正な選挙の執行に向けて、事務局として一丸となって取り組みました。
両選挙ともに都内全域が対象ですので、有権者が投票日に投票を行う投票所や、告示日から投票日前日までに投票を行う期日前投票所、候補者の情報を得るポスター掲示場の設置・管理を行う区市町村選挙管理委員会とも緊密に連携し、円滑な執行に注力しました。
昨年の東京都知事選の特徴ですが、56名というかつてない程の立候補者数や街頭演説に対する妨害行為、ポスター掲示場の活用方法などが議論を呼びました。衆院選も解散から最短期間での選挙日程となったことで、都選管も選挙準備は苦労の連続でした。
一方、従来の選挙と大きく様変わりした点として、各候補者が選挙運動においてSNS等を積極的に活用したことがあげられます。候補者によっては一日に何度も動画等を配信していました。
有権者も従来の報道に加え、SNS等の大量の情報に触れることで、選挙自体への注目度が上がり、都選管にも全国から多数の問い合わせが寄せられ対応に追われました。過去類を見ないほどの選挙への関心の高まりを感じました。
—知事選ではポスターの内容などが問題となり、公選法改正の議論のきっかけとなりました。
東京都知事選では、掲示場にポスターを貼る権利を有償で提供するような行為や、注目度を上げようとする一部の候補者等により、有権者の目線からすると不快に映る内容などもあり、東京都迷惑防止上条例や風営法により、警視庁より警告を受け撤去されたものもあります。
しかし、公職選挙法では選挙の政見放送に関する規定にある「品位保持」がポスターには適用されておらず、必ずしも疑義の対象となったすべてのポスターが撤去されたわけではないことから、この点も公選法改正の議論の対象に含まれていると報道されています。
ポスターの内容に影響を及ぼしたのは、当選を目的としていないと思われる立候補者の乱立もそのひとつかと思われます。立候補者の政策や政見とかけ離れていると見られる内容や同一ポスターの複数掲示なども議論の対象となりました。
SNSによる情報発信も相まって、従来以上に選挙への立候補による注目度アップや情報発信効果が見込まれ、当選を目的としない立候補者が増加したとも言われています。
公職選挙法の改正は、選挙結果に大きく影響を及ぼすため、一般的には議員立法によるものとされており、現在も各政党等で議論がなされています。有権者の民意が適正に反映されるよう、改正動向にも注視しています。
SNS等で積極的に広報
—選挙啓発も大きなテーマです。取組は。
都民の選挙への関心を高め、投票率向上に結び付けるためには、選挙時の広報・啓発が重要です。特にインターネット、とりわけ情報を迅速に伝え多くの人とつながれる強力な手段であるSNS等を活用した有権者へのアプローチは効果的です。今後もこうした手法を活用した有権者への積極的な広報を行っていきます。
都選管では、選挙の際に特設ホームページを開設し、期日前投票所や選挙公報等、投票に役立つ情報のほか、街頭での選挙啓発イベントの案内を掲載しSNSにより積極的に発信することで、投票の機運向上やイベントへの参加を促しています。
SNSを通じて興味を持った有権者が、実際のイベントの模様を写真や体験コメント等の付加価値とともに、自身のSNSを通じて拡散し、それを見た別の人たちが特設ホームページを訪れる、といったサイクルが作られます。
都選管はこうした取組により、選挙に対する注目度を上げて選挙への興味関心が薄いと考えられている若年層を中心とした世代の投票率向上に努めます。
—今年は都議選、参院選が控えています。
現在の都議会議員と参議院議員はともに任期満了日が7月です。それに伴う選挙日程は、都議選が6月22日投開票と決定し、参院選は7月下旬に見込まれています。それほど間を置かず、連続で行われることになります。
このような日程で両選挙を執行するのは、平成25年以来12年ぶりとなりますが、都選管としても、万全を期した事前準備が必要であり、昨年に引き続き、事務局職員が一丸となって取り組む必要があります。
また、候補者数やその他執行対応について、予測を超える事象が生じないとも限りません。民主主義の根幹をなす選挙制度を公正・公平に運用する中で、候補者や有権者に混乱が生じないよう、区市町村選管や関係機関等とも緊密に連携し、円滑な選挙執行に努めます。
—最後に事務局長の趣味は。
高校まで野球をやっていましたから、野球をはじめスポーツ全般の観戦が趣味です。冬はスキーをやっています。