警視庁 刑事部鑑識課 警察犬係
警部補 村山 友康
文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。
警察犬の存在は、警察組織に詳しくない人でも知っているだろう。東京都では、警視庁刑事部鑑識課内に専門組織を設置し、2024年10月現在、シェパード、ラブラドールを中心に33頭が所属。人間の約4000倍と言われる嗅覚を生かし、事件捜査や行方不明者等の探索を行っている。
日本の警察犬制度の幕開け 警察犬と担当のマンツーマン体制
警視庁の警察犬にまつわる歴史は古く、1913年12月にイギリスから2頭の警察犬を購入したのが始まりであり、これが日本の警察犬制度の幕開けと言われている。第二次世界大戦時には戦争激化のため廃止されたが、戦後民間への嘱託制度により復活、1961年に直轄体制となり、今日に至る。
警察犬には、それぞれ担当者がつき、マンツーマンで訓練を行い、食事や排便などの日常の世話から健康管理も行う。今回取材した村山友康警部補とバリーも同様で、バリーが入所してから8年間を共に過ごしてきた、庁内屈指のベテランペアである。
犬ごとの適性と性格を理解し 能力を最大限発揮させることが仕事
警察犬は、血統書などを調べた上で、警察犬係が自ら適性を判断。民間事業者から購入する形で入所となる。
入所後はまず、持来欲(物を咥えてくること)や集中性(力)を養ったり、排便などの「しつけ」が行われ、その後、担当者の止まれ・座れなど基本的な指示に従う「服従訓練」が行われる。そして、本格的な活動を見据え、衣服等に付着した匂いを判別する「臭気選別」や、該当する足跡をたどる「足跡追及」と、活動分野に分かれた訓練が行われる。
約6ヶ月の期間を経て、各分野で「初級」「上級」「特別上級」の3段階で検定が設けられ、上級に合格すれば現場に出ることが許される。
原則として、どの活動分野でも対応するのが警察犬だが、個々に得意分野は存在すると、村山警部補は言う。
「バリーは、足跡追及が得意です。ただ、おっとりした性格なので、やる気にさせることでその能力が高まります。そうした適性と性格を理解し、能力を最大限発揮させてあげることが、我々の役目だと感じます」
捜査環境が向上した今こそ 警察犬ができることがある
個体差はあるものの、入所から2、3年で一人前の警察犬に育つと言う。とはいえ、村山警部補は能力向上に終わりはなく、日々訓練を重ね、その精度を高めていくことが重要だと語る。
「犯罪や捜索現場は、季節や環境、事件発生後からの経過時間など、ひとつとして同じ条件であることはありません。一方で、警察犬も気候や環境に影響されますから、そうしたなかでも安定的に高い能力を発揮できるよう、基本の訓練を継続するとともに、あらゆる状況を想定して工夫しながら訓練を行うことも大切だと考えます」
訓練に終わりなし。自身を諦めが悪い性格、と分析するが、その探究心があったからこそ、20年以上警察犬係を務められたのだと振り返る。
「今の東京は防犯カメラが至る所にあり、捜査環境は格段に向上しました。しかし、それでも警察犬だからこそ能力を発揮できる現場はあると私は考え、こんな訓練ができないかな、と今日も妄想?しています」
来年3月には定年退職を迎える村山警部補。しかしそのあくなき探究心は、後輩の係員や警察犬たちに、着実に受け継がれるのだろう。
警視庁 刑事部鑑識課 警察犬係
警部補 村山 友康
1963年5月山形県生まれ。一般企業に2年間勤務ののち、1984年警視庁入庁。小松川警察署にて勤務中に、警察犬係に関心を持ち、1992年に刑事部鑑識課に異動。希望が通り警察犬係となり、以後、キャリアを重ね現在は警視庁内一の経験を誇るベテランとして、他の警察犬係員を牽引する存在だ。
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