住宅政策本部長 小笠原雄一氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」、今回は住宅政策本部長の小笠原雄一氏。住宅は生活の基盤であり、様々なニーズや課題がある。防災や高齢者への施策などについてお話を伺った。

総合的な住宅政策を推進

住宅政策本部長 小笠原雄一氏

災害時の在宅避難を後押し

—就任から6ヵ月経過しました。改めて抱負をお願いします。

 住宅政策本部は、良質な住宅ストックや住環境の形成、都民が適切に住宅を選択するための市場環境の整備、住宅困窮者への居住の安定確保などの、総合的な住宅政策を行っています。

 今後、人口の減少や高齢者世帯の増加、住宅ストックの老朽化の進行など、東京都の住宅行政を取り巻く環境は変化していくと思われます。令和4年3月に東京都の住宅政策の羅針盤といえる「東京都住宅マスタープラン」をまとめ、少子高齢化への対応や、安全・安心な都市づくり、住宅の脱炭素化、重層的な住宅セーフティネットの構築など、ハードとソフト両面の取組を進めています。

 就任直後から言っていることですが、住宅は生活の基盤であり、福祉、子育て、環境、防災、地域社会の維持形成など、様々な行政分野とつながりがあります。都庁各局をはじめ、国や区市町村、民間と連携して取組を進めようと考えています。

—地震が多発していますが、防災の取組はどうなっていますか。

 東京では約900万人がマンションなどの共同住宅に居住しています。耐震基準を満たしたマンションは地震の揺れに強く倒壊リスクが少ないため、被害状況によっては在宅避難が可能です。

 人口が密集する東京の場合は在宅避難をしやすくすることが重要と考えています。避難所の負担の軽減にもつながります。

 令和5年度から、防災マニュアル作成、非常用電源の確保、防災活動などに取り組んでいる、在宅避難しやすい共同住宅を「東京とどまるマンション」として登録しています。

 登録すると防災備蓄資機材の購入に係る経費の補助が得られます。今年度からは、地域防災力の向上のため、町会と合同で防災訓練を行う場合には補助率を10分の10に引き上げます。非常用電源の設置とそれを守る止水板の設置にも新たに補助を行います。

 耐震化は、各局が連携して取り組んでおり、住宅政策本部では、マンションを中心に行っています。令和7年度末までに耐震性が不十分なマンションを概ね解消することを目標にしています。耐震診断や耐震改修に係る助成事業を行う区市町村に対し、都は補助を行っています。高経年マンションについては「東京都におけるマンションの適正な管理の促進に関する条例」に基づき、管理状況の報告をお願いしています。状況を把握して専門家を派遣しています。

空き家対策で窓口を設置

—高齢者や子育て世帯への施策の充実が求められています。

 高齢者への施策ですが、団塊の世代が後期高齢者となる2025年が目前に迫っており、2040年には「団塊の世代ジュニア」が高齢者となるなど、高齢者世帯は今後も増えることになります。生活の基盤となる住まいを、多様な居住ニーズに応じて選択できるようにすることが必要です。

 住宅マスタープランでは、2030年度末までにサービス付き高齢者向け住宅を3万3千戸供給することを掲げています。都は医療や介護サービスと連携した住宅や多世帯型の住宅の整備について、国の整備費補助に上乗せして補助を行っています。

 今年度からは、高齢者に適した住まいの新たな認定制度の構築に向け、「高齢者いきいき住宅先導事業」を実施しています。高齢者が安心して快適な生活を送れるよう、高齢者の生活に配慮した設備や交流の場を設けるなどの提案を民間事業者等から求めています。

 子育て世帯への施策としては「東京こどもすくすく住宅認定制度」があります。安全対策など子育てしやすい設備などに配慮した集合住宅に都が認定を行うものです。

 令和5年度に創設し、認定を受けた集合住宅の新築や改修に都が補助しています。各住戸に一定の広さを求めるなど、子育てに適した良質なストックを形成してまいります。

 都営住宅でも若年夫婦や子育て世帯向けの枠を設けていますし、昨年度から結婚予定者を対象とした取組も行っています。

—本部としてPRしたいことは何でしょう。

 セーフティネットの面では、都営住宅の活用に加え、高齢者や障害者、子育て世帯といった住宅の確保に配慮が必要な方々に、民間の空き家・空き室を活用して入居を拒まない賃貸住宅を供給する「東京ささエール住宅」を展開しています。

 住宅だけでなく、入居後の支援、生活の支援も求められていることから、NPOや民間企業などの居住支援法人が増えています。これら法人の活動の支援も行っています。

 空き家対策については、本年3月、家財整理の進め方などを記載した「東京すまいの終活ガイドブック」を作成しました。4月には空き家所有者や空き家活用希望者からの相談に無料で応じるワンストップ相談窓口を設置しましたので、お気軽にご相談ください。

—本部長の趣味は。

 夫婦で神社を回って御朱印を集めています。ちょうどいい運動にもなります。伝統文化を観賞するのも好きで、歌舞伎をよく観に行きます。

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