自動車ヘッドライトのコーティングフィルムの製造販売

株式会社洗車の王国

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

洗車の王国は、これまでさまざまな自動車、自転車、車椅子関連のオリジナル商品・サービスを生み出してきた。そして今回、貼るだけで自動車のヘッドライトが綺麗になるコーティングフィルムを完成させた。その機能性はもちろん、あらゆる車種へ対応できる独自技術を確立。車検等を行う整備工場を中心に、その価値を広めていきたいという。

左が『Syncshieldヘッドライトフィルム』を貼り付ける前、右が貼り付けた後のヘッドライトの例(提供:洗車の王国)"

左が『Syncshieldヘッドライトフィルム』を貼り付ける前、右が貼り付けた後のヘッドライトの例(提供:洗車の王国)

 「まずは実際にやってみましょう」

 洗車の王国の相原浩代表取締役社長は、取材開始早々、新たに開発した『Syncshield(シンクシールド)ヘッドライトフィルム』を使って実演してくれた。

 使ったのは、車体から取り外した使い古されたヘッドライトと、筒状の容器に入った、一見奇妙にカットされたフィルム。まず、ヘッドライトを洗浄スプレーで拭き取り、次に施工用スプレーを噴射。そこにフィルムを貼り付け、その上からラバーズキージー(ヘラ)で空気を抜く。仕上げにドライヤーで乾かして完成。作業は10分もかかっていなかった。

 驚いたのは、複雑にカットされていたフィルムが、曲線状のヘッドライトに隙間なく貼り付いたことだ。さらに、作業後数分すると、曇っていたヘッドライトがみるみるクリアになり、フィルムが貼られているとは思えないほど、新品同様の状態になった。

 驚く私を横目に、相原社長は表情を変えず、しかし、自信に満ちた口調で語った。

 「効果は5年ほど続き、貼り替えればまた綺麗になります。一度体験してもらえれば、その価値を感じてもらえるはずです」

『Syncshieldヘッドライトフィルム』のカッティングの一例。独自のカットデータ作成技術により、複数のスリットラインを精密に配置し、3次元の曲線でも隙間なく貼り付けられる2次元フィルムを作り上げる。特許も取得済みだ
(提供:洗車の王国)

『Syncshieldヘッドライトフィルム』のカッティングの一例。独自のカットデータ作成技術により、複数のスリットラインを精密に配置し、3次元の曲線でも隙間なく貼り付けられる2次元フィルムを作り上げる。特許も取得済みだ (提供:洗車の王国)

整備の主流は研磨だが ヘッドライトの劣化を早める

 自動車を中心に、自転車、車椅子の洗車製品販売および洗車サービス等の事業を展開してきた同社。3年前に取材した本紙164号では、「ありそうでなかった」自転車の洗車に特化したサービス『SENSHA Bicycle』を紹介した。

 今回の『Syncshieldヘッドライトフィルム』は、自動車の整備現場での長年の課題が、開発のきっかけとなったと相原社長は言う。

 「ヘッドライトは、車両の軽量化に伴いプラスチック化が進みました。しかし、その性能を維持する技術が確立されていませんでした」

 プラスチックのヘッドライトは、それまでのガラスに比べて表面に傷がつきやすく、経年劣化が避けられないため、早い車両は5、6年で表面が曇ったり黄ばんだりしてしまうという。しかし、ヘッドライトは車検における重要保安部品であり、一定以上の発光量を維持しなければならず、そのために表面を削って対応するのが一般的だった。が、それでは根本的な解決には至っていなかったと、相原社長はいう。

 「一時的には綺麗に見えますが、表面のコーティング層を除去することになり、劣化の速度は早まることになります。ですが、実際はそのような状態で走行している車両がほとんどです。私はこれを、社会課題の一つと捉え、何か貢献できないかと考えていました」

『Syncshieldヘッドライトフィルム』の構造(提供:洗車の王国)

『Syncshieldヘッドライトフィルム』の構造(提供:洗車の王国)

粘着層が傷に浸透し修復 国産輸入車ほぼ全車種に対応

 そのような状況下、同社は自動車関係者の要望から、車体を保護する「プロテクションフィルム」を開発していた。その機能をヘッドライトに応用したのが、『Syncshieldヘッドライトフィルム』である。

 「このフィルムの特徴は、傷を防ぐコーティング層に加えて、粘着層を入れていることです。ライトの劣化は小さな傷の集まりですから、そこに粘着層を浸透させれば、傷が修復されたような状態になります。先ほどお見せしたようにヘッドライトのコーティング後、綺麗な状態になったのは、まさにこの効果によるものです」

 ヘッドライトへの応用の課題は、施工の難しさだった。ライトは3次元の曲線状で、車種やライトの仕様によって微妙な形状の違いがある。そこに2次元フィルムを隙間なくピッタリ貼り付けるには、形状に合うように複雑にカットする職人的技術が必要であった。

 相原社長はそれを独自のカットデータ作成技術により解決。その技術をもとに、約3年をかけて1400車種4000種のデータを取得し、データベース化した。

 「国産輸入車問わず、現在走っている車両であれば、ほぼ全ての車種に対応可能です。車種や仕様がわかれば、それにあったフィルムをお送りできます。また、フィルムを貼るためのオリジナル製品の販売や、作業の技術指導も行っています」

洗車の王国の創業者でもある相原浩代表取締役社長

洗車の王国の創業者でもある相原浩代表取締役社長

8月より車検基準が厳格化 2年後の東京の対応準備を

 実は本記事が掲載される翌8月から、車検におけるヘッドライト検査が厳格化される。全国の一部地域からの導入なので、東京は2年後から対象となる予定だが、相原社長はこの改正をきっかけに、ヘッドライトのメンテナンスの重要性が社会全体に認知されてほしいと願う。

 「これまでのヘッドライトの検査は、より明るい状態を作りやすいハイビームでクリアすればOKでした。しかし、改正後はローの状態でクリアしなければならない。私の感覚では、研磨で対応したヘッドライトでは、ほぼクリアできないと推測しています。東京はまだ2年の猶予がありますが、車検を担う整備工場を中心に、今から『Syncshieldヘッドライトフィルム』の機能を知ってもらい、検査にクリアできるための準備を進めてほしいと思います」

情報をお寄せください

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。