令和6年度予算案
~一人一人が輝く明るい「未来の東京」を実現する予算~
長きにわたるコロナとの闘いを経て、経済・社会が本格的に動き出している一方、急速に進展する少子化、変革の遅れ、低迷する国際競争力など、先送りされてきた課題が日本の将来に影を落としている。また、元日に発生した能登半島地震は、天災は時を選ばないという現実と、災害に対する備えの重要性を思い起こさせた。21世紀は「都市の時代」と言われており、課題が先鋭的に現れるのも、その解決を先導するのも都市である。東京、そして日本に立ちはだかる困難に挑み、突破口を切り拓くことこそ、首都東京の使命と言える。 都民一人一人が将来に希望を持ち、誰もが輝ける成熟社会を実現する。東京が持つ唯一無二の個性を活かし、世界を惹きつけ、人や投資を呼び込む。「人」が活躍する基盤となる、強靱で持続可能な都市をつくりあげる。令和6年度予算案はこうした点を基本に編成された。本稿では、6年度予算案の概要、財政運営の工夫、施策展開の視点及び主要な取組を紹介する。
一般会計は8・5兆円
一般会計の予算規模は、「人」が輝く社会の実現、国際競争力の強化、安全・安心の確保に向けた取組に重点的に予算配分したことなどにより、前年度に比べて4120億円の増となる8兆4530億円となった。
このうち、政策的経費である一般歳出は、子供から高齢者まで全ての人へのシームレスな支援や、イノベーションを生み出す戦略的な枠組みを早期に確立するための取組、大規模地震等あらゆる脅威に対応する強靱な首都東京の実現に向けた取組などにより前年度に比べて4348億円の増の6兆3702億円となった。
都税収入は、企業収益の堅調な推移に伴う法人二税の増や、固定資産税・都市計画税の増などにより、1855億円増の、6兆3865億円と見込んでいる。
財政運営の工夫
都政課題に着実に対応し続けるためには、東京の都市力を磨き抜く大胆な施策展開と持続可能な財政運営との両立が欠かせない。
令和6年度予算では、こうした課題認識の下で積極的な施策展開を図りつつ、制度や仕組みのアップグレードを図りながら、強靱で持続可能な財政基盤の堅持に努めた。 具体的には、新たに都と政策連携団体の事業に着目した「グループ連携事業評価」を「政策評価・事業評価」と一体的に実施するなど、これまで以上に施策の効率性・実効性の向上を図った。事業評価による財源確保額は1266億円と過去最高となり、積極的な施策展開につなげた。
基金については、明るい「未来の東京」の実現に向けた財源として積み立ててきた基金を積極的に活用しつつも一定の残高を確保。都債についても、計画的に活用することで都債残高は減少するなど、引き続き持続可能な財政運営を行っている。
施策展開の視点・取組
▽「人」が輝く
アクティブな長寿社会の実現に向け、シニアの活躍を支援するプラチナ・キャリアセンターの創設や、介護人材確保のための処遇改善に取り組む。また、働く女性が活躍できる職場環境づくりに取り組む企業への奨励金の支給や、女性起業家への資金・事業計画等のサポートなど、女性が自分らしく輝く社会の実現を図る。
チルドレンファーストの社会の実現に向け、望む人誰もが、出会いから結婚、妊娠・出産、子育てができるようシームレスな支援を展開する。特に、子供たちが、親の所得に関わらず、将来にわたって安心して学ぶことができる環境の早期実現に向けて、国に先行して子育て世帯の負担軽減を実施していく。
さらに、こどもDXとして、子育てや保育に関する情報・手続のDXを推進し、便利で快適な子育て支援サービスを実現する。
▽国際競争力の強化
イノベーションの創出や新たな産業構造への転換に向け、Tokyo Innovation Base(TIB)を核としたスタートアップ支援や、中小企業の経営力強化に向けた変革・挑戦を後押しする。
加えて、東京のプレゼンス向上のため、今年4月から5月にかけて「SusHi Tech Tokyo 2024」を開催するほか、東京の多彩な食のプレゼンテーションやナイトタイムの魅力の創出など、インバウンド需要を呼び込む観光資源の磨き上げに取り組む。
多摩地域については、その良好なイメージを広く定着させ誘客につなげるとともに、島しょ地域へ寄港するクルーズ客船向けのアクティビティの開発等を実施するなど、地域の特色を活かした取組を進める。
新たな緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」としては、屋敷林等の新たな買取支援強化や、東京グリーンビズマップの作成、グリーンインフラの実装などに取り組む。
▽安全・安心
いつ起きてもおかしくない大規模地震や激甚化する風水害などから都民を守るため、「TOKYO強靭化プロジェクト」をアップグレードし、マンション等での防災力や豪雨対策の更なる強化など、強靱な首都東京の実現に向けて、ハード・ソフト両面から施策の充実を図る。能登半島地震を踏まえ、取組を更に加速していく。
また、特殊詐欺対策をはじめとする治安対策の強化や、子供・若者を犯罪被害から守る取組を強化する。
脱炭素の切り札となる水素については、「つくる」「はこぶ」「つかう」の観点から施策を充実・強化する。加えて、ペロブスカイト太陽電池の社会実装の加速化や、省エネ家電の買い替えを行う都民を支援する「家庭のゼロエミッション行動推進事業」の拡充など、2030年カーボンハーフに向けた取組を加速していく。
都財政の見える化
都は、予算の内容をわかりやすく伝えるため、「予算案まるわかりブック」を作成し、HPで公表している。
加えて、「TOKYO予算見える化ボード」をはじめ、予算や決算の主要なデータを可視化する「都財政の見える化ボード」を公開している。 令和3年1月のリリース以降、普通会計決算や財務諸表、政策評価・事業評価、補助金のダッシュボードが加わり、都財政が多面的に見える化されてきている。
ユーザーの声を踏まえて継続的に改善を図っているとのことなので、是非アクセスいただきたい。