都市整備局長 谷崎馨一氏
東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」、今回は都市整備局長の谷崎馨一氏。東京の臨海部と区部のまちづくり、「TOKYO強靭化プロジェクト」などについてお話を伺った。
ポストコロナのまちづくりに邁進
世界から選ばれる都市へ
—局長就任の抱負を。
土木職として東京のまちづくりに携わり、特に鉄道整備事業などの交通政策や土地区画整理など面整備事業に長く関わってきました。局の課題は多いですが、議論を重ね、一つひとつを解決したいです。
当局は、ポストコロナのまちづくりに向けて、世界から選ばれ、安全・安心で、水と緑にあふれる都市の形成を目指します。
地域の個性やポテンシャルを生かした多様な拠点の形成や道路・交通ネットワークの充実、激甚化する風水害・大地震への対応や感染症にも強いまちづくりに向けた「TOKYO強靭化プロジェクト」の推進、ゆとりと潤いのある東京の実現などを進めていきます。
—都心部から臨海部のまちづくりが大きく動き出しましたね。
区部はもとより多摩地域の拠点整備などに取り組んでいます。
とりわけ、都心部から臨海部では、この2つのエリアを繋ぐ交通ネットワークを強化するなど、都心部から臨海部が一体となり、魅力を高めるまちづくりを推進します。
都心部と臨海部をつなぐ基幹的な交通基盤の役割を担う都心部・臨海地域地下鉄は、事業化に向けた取組を推進しています。併せて、東京BRTの運行拡充や舟運ネットワークの構築等に取り組みます。
歴史や文化に裏打ちされた品格ある街並みの顔である日本橋で首都高地下化の取組を着実に進めます。
さらに、東京高速道路(KK線)を、自動車専用の道路から歩行者中心の公共的空間「Tokyo Sky Corridor」に再生する取組を進めています。5月4日と5日、車の通行を止めて道路上を歩くイベント「銀座スカイウォーク」が開催されました。
築地地区では、浜離宮、隅田川、食文化などのポテンシャルを生かしながら、民間の力を最大限に活用したまちづくりを推進します。世界中から多様な人々を出迎え、新しい文化を創造・発信する拠点を形成していきます。東京2020大会で世界のアスリートを迎えた晴海の選手村跡地は、住宅棟や水素ステーションなどの整備が着実に進んでいます。
強靱化で防災力をアップ
—「TOKYO強靭化プロジェクト」が始動しました。
令和4年12月に策定した「TOKYO 強靭化プロジェクト」を踏まえ、高規格堤防の整備促進、盛土による災害の防止など激甚化する風水害から都民を守るまちづくりを進めます。
具体的には、延焼遮断帯を形成する都市計画道路の整備、市街地の不燃化や建築物の耐震化、まちづくりの機会を捉えた無電柱化など「倒れない・燃えない・助かる」まちづくり、様々な都市活動を引き出せる屋外空間の創出など感染症にも強いまちづくりを進めます。
「TOKYO強靭化プロジェクト」の策定後、2月にトルコ・シリア地震が発生しました。
3月にはIPCC第6次統合報告書が公表され、5月には石川県能登地方の地震や新島・神津島近海の地震が発生するなど、危機を取り巻く状況は刻々と変化しています。
そのため、「東京都豪雨対策基本方針」の改定等の検討結果を本プロジェクトに反映するなど関係局と連携を図り、気候変動や地震等の脅威に対し、強靭で持続可能な東京の実現に向けた取組を推進します。
また、プロジェクトの意義等を積極的に発信し、都民や事業者の皆さんと危機意識を共有し、強靭化を進めていく視点も重要です。
特に、今年は関東大震災から100年を迎え、防災に対する関心が高まる年です。
こうした機会を捉え、「備えよう、明日(あした)の防災」を合言葉に、イベント等による都民の意識啓発、地域や民間との連携、コンテンツ等を活用した防災やまちづくりの理解促進など、様々な取組を通じ、自助・共助・公助の気運を醸成します。
—自然と共生した都市づくりへの取組は。
コロナ禍を経て、身近な憩いの場としての緑がより一層求められています。
緑や水辺を生かした都市空間の整備を進め、人々が憩える魅力あるまちづくりを展開します。例として、外濠では水質改善を推進し、癒しの場や品格ある景観を創出していきます。
水上交通の取組では、昨年度、朝と晩に通勤用の船を運航する社会実験を行いました。
今年度からは事業者を募集して実装段階に入っています。例えば日の出と臨海部、臨海部と日本橋を結んで、臨海部にお住まいの方が都心方面に、船で通勤できるような取組を進めます。
緑の充実を図るため、ベイエリアで建物の中間階や低層部のテラス等に緑の質や量の評価に新たな視点を取り入れ、人々が憩う緑の空間を創出します。
—職員にメッセージを。
「強く、しなやかに柔軟な発想で仕事を進めてほしい」です。また、都市づくりは10年、20年と時間がかかりますが、「スピード感を持って仕事をしてほしい」です。「新しい街や効果を一刻も早く都民に届けるために、工夫できることはいくらでもあるので、柔軟に考えてほしい」です。
—局長の趣味は。
ランニングです。20代半ばから約30年間続けています。
週末に自宅の近所を1日10㎞程度走ることで頭をリフレッシュしています。